プロローグ5:魔王一味結成
「ロドプレスの街、消滅したよ、兄様。」
「そうか・・・・・・」
薄暗い部屋の中、椅子に腰掛け物思いにふけていた魔王にひとりの少女が報告する。
「千人近い人が死んだって。話は世界中に広まってるわ。・・・・・・兄様の話も。」
「私のことを、世間はなんと?」
兄の問いかけに少女は下を向きながら、震える唇で答えた。
「・・・見たこともない魔法を使う魔法王。残虐で鬼畜。奴は人の心がない悪魔の王、『魔王』だって。」
「はは、『魔王』か。世界に仇なす私には誂え向きの呼び名じゃないか。」
妹の泣きそうな声に、兄は嘲笑を含めて感想を述べた。
「ほんじゃあ、俺たちもそう呼ばせてもらうぜ、『魔王』様。」
「僕は『魔王』様の家来、拳闘士ファレス。うん。中々どうして、しっくりきてるよ。」
魔王の後ろに立っていた二人の男。おどけた口調に軽い冗談を口にする。
「・・・・・・もう戻れないぞ。どんな結果で終わろうとも、私達には破滅しか待ち受けていない。リリア、ローグ、ファレス。お前たちは修羅の道を選んだのだ。」
その声は苦悩に溢れていた。自分の狂気じみた野望に加担した仲間たち。巻き込んでしまった自責の念と同時に、彼らなしでは計画が運ばないという事実のジレンマ。
「そんなこと分かっているわ。・・・ちゃんと分かって、それで選んだんだもの。」
「そうそう。僕だって自分が何をやろうとしているのか、分からないほど馬鹿じゃない。・・・・・・あんたの敵は、僕がなぎ倒す。この拳に誓って。」
「ドレイク。お前が地獄を進むというのなら、俺はそれに続くのみ。この剣で、お前の野望を阻む敵を全て、切り捨ててみせよう。」
先ほど、アレムス王国に属する大きな街を一つ滅ぼした。そこ暮らす何百という人々と共に。
これは序章に過ぎない。魔王の覇道はこれから始まるのだ。
世界のためとはいえ、血塗られたその道を進めばただでは済まされない。身体も、心も。
しかし、選んだのだ。ドレイクも、リリアも、ローグもファレスも、全てを理解したうえで、この道を進むことを諦めなかったのだ。
全ては、世界の為に。
仲間たちの心が偽りではないことを見た魔王は、小さく一つ笑って見せて、それから宣誓した。
「皆。これより私は『魔王』ドレイクと名乗ろう。私達魔王一味は止まらない。何があっても、何をすることになっても。その先に、真の幸せがあると信じて・・・・・・」
こうして『魔王』ドレイクとその仲間、『魔王一味』が結成された。