プロローグ2:異世界『エルドラド』
エルドラドには不幸が満ちていた。
日照り洪水による凶作。心と身体を蝕む伝染病に不治の病。土地と資源を求めての侵略戦争。各地で頻発する凶悪な魔物の襲撃。それらは何度も繰り返され、互いに高め合って人々を苦しめた。
社会は荒廃した。生活苦は人の心も貧しくする。人々は生きるために他者から奪い、騙し、殺した。女子供も関係ない。やる方も、やられる方も。なぜなら、そうしなければ生きられないから。
最悪の怪物は、そんな最悪の社会から生まれてしまった。
『魔王』ドレイク。
世界中の街や国で略奪と虐殺を繰り広げた。その悪名は瞬く間にエルドラド中に伝え広まった。
世界は、飢えで死ぬのか、病で死ぬのか。戦争で滅びるのか、はたまた魔王が滅ぼすのか。人々はそんなことを噂するようになった。
しかし、希望は失われていなかった。
『勇者』セイン・ハートロイド。
とある国の寂れた村で育った彼は強かった。
家ほどの大きさの魔物に立ち向かい、そして殺すことができた。
どれほど苦しくても決して弱音を吐かなかった。前を見続けた。
100人の盗賊を一人で返り討ちにできた。
泣いている人がいれば、手を差し伸べずにはいられなかった。
荒んだ心の人々は彼を偽善者と蔑んだ。それでも彼は戦うことをやめなかった。
やがて人々の心が変わり始めた。長い年月で凍てついた人々の心は、セインの勇敢な行動に焦がされ溶かされた。
『勇者』セインは『魔王』討伐に名乗りを上げた。人々が変わり始めた中、待ち望んだ平穏を得るためには、蛮行を繰り返す『魔王』が最大の障壁であった。
世界一の騎士、教会の聖女、叡智を持つ魔法使い。セインの元に最高の仲間たちが集った。
そうして勇者一行は『魔王』討伐の旅にでたのであった。