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頑張れ!小さな罠師くん!  作者: ミスタ
序章:水術士との戦い
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その5:仕事かな

*いしのなかにいた*

意識が戻る。

記憶を探り石畳の中に全身沈んで1時間経ったということを知る。


ぼんやりとしていた意識が完全に戻ったので、

道に顔が置いてある状態から、

道に首が生えている状態に移行する。

ぼくは全身をある程度沈ませたままあたりを見渡した。

……よし、誰もいない。

そうして一通りの安全を確認した後、

ぼくは全身を道の上に持ち上げた。


ふぅ~、安全確認を怠るとたまに街馬車に轢かれるからね。

ちなみに前に轢かれたときは、かなり本気で命の危険を感じるほどだった。

いや~、あの時はフッカフカの着ぐるみ着ていてほんと良かった。


っと、そんなことはどうでもいい。

実際、狐顔の男も諦めただろうからもうどうでもいい。

だから帰ろう。

なんだかんだで帰るのが遅れたクラン”白紙”へ返ろう。

朝っぱらから働いて、昼間は全速力で走り回って、

ついさっき放置されたゴミと変な狐顔の対処をしたりと頑張ったんだ。

だから事務所に戻っておやつでも……おやつ?


はっ、ここでぼくは今、重大なことに気づいてしまった。

もう三時を過ぎているのに、ぼくはまだおやつをまだ食べていない!


そういえば事務所にプリンを確保していたはず、

うぇっへっへっへ~これは期待できますな~♪

甘いプリンに思いを馳せながら、うきうき気分で走り出す。

そして早速その足で事務所に戻った。

ただ何も考えずに鼻歌混じりにドアを開ける。


そして深い悲しみを見る。


……このとき僕は忘れていたんだ。

今は3時ではない。

地面に1時間も沈んでいたから、もう四時をとっくに過ぎた夕方だということを。


四人しかいないので結構見慣れた風景となった無人の事務所。

その中央に置かれたテーブルの上に、


空の”プリン”容器があった。

容器の横には濃い文字で”レント”とぼくの名前が書いてある。

容器の底には少しプリンのかけらがこびりついており、

少し離れた所にはプリンを食べるために使ったであろうスプーンが落ちている。


ぼくの口から自然に大きなため息が零れ落ちる。

「……はぁ」

何だろう、なんだろう、なんダロウか?

期待していたものが目の前で無くなっていると、

とても機嫌が悪くなる、とても悲しくなってくる。

この悲しみは、

誰カニ八つ当タリでもシテ晴らストしヨウかナ。


ぼくは扉の近くに立てかけてあった身の丈を超える巨大な看板を、

両手で力強く一振りする。

すると看板に変化が起こる。

一文字も書いていない白地の看板が、

”つまみ食いをしたものに天罰を”と赤文字で書かれた看板に。


さて、


茶番はここまでにして仕事をしよっか。

ぼくはくるっとひとまわりしてプリンの空容器の下に敷いてある、

依頼書を手に取る。

ちなみにこの空の容器は一日前に食べたものだろう。

ゴミをほったらかしにしてブーちゃんの所に行ったから、

風に飛ばされないように依頼書の重しとして使われたに違いない。


だいたいぼくのデザートはちゃんと隠してあるしね♪


ぼくはドッキリ大成功の文字に変わった看板を肩に担ぎながら、

依頼書を顔の前にもってきて読み始めた。


OK、把握した。

標的はまさにこの町にいる。

いやぁ~、今回はかなり運がよかった。

まさか狐顔の男が違う町々で騒ぎや起こし続けて、

指名手配されるまでになっていたとは。

そしてこの町にいることもほぼ確定している。


ああ、せっかく金のなる卵が目の前にあるんだ。

つかまない奴がどこにいるというんだい?


ぼくは看板を肩に担いだまま、

勢いよく事務所を飛び出した。



まあ、飛び出してきたまではいいけれど、

この町も別に狭いというわけではない。

隠れようと思ったらいくらでも隠れられるし、

普通に歩いているだけでも見つけるのはそう簡単にいかないだろう。


だけどこれまた運のいいことに、

猿顔の男に通じる手がかりは向こうからやってきた。


やったねレント君、ヒントが増えるよ!



「おい、そこの少年?、だよな。

ちょっと、いいかい?」


人通りの多そうな場所を歩いていると、

ローブを着たおっさんに声をかけられた。

どうやら向こうも何かを探しているようだ。

ここはお互い尋ねあって、Win-Winの関係になるのが一番だと思う。

だからここは断らずに立ち止まってみよう。


「ん? どうしたの?」


そう聞くと、おっさんは土術士を探していると言った。

それも即座にトンネルを掘れるほどの術士、

で、なおかつ背が低い奴を探していると。


「う~ん、土術士の人は見てないかな」


そんな土術士は確かに見ていない。

そしてたぶんその正体はぼくだ。

たぶん探している本人があの狐顔の男なのだろう。

そしてぼくが地面に潜って逃げたことから、

土術士が地面に穴を開けて逃げたのだと勘違いしたのだろう。

だから彼に命令された人たちがとんちんかんな者を探しだそうとし、

いないものを頑張って見つけようとしているのだろう。

ぷぷ、ざまあ☆


ぼくはもし見つけたら上のほうに教えとくよといって、

狐顔の男の場所を上手く聞き出すと、

早速その場所に向かって歩き始めた。


うん、いい展開になってきた。

あとは出来うる限り捕縛して終わらせるだけだ。





まあ、事故で死んじゃっても大丈夫……だよね。

なんか変なこと言われたりすると手が滑ってもおかしくないと思うからさ。


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