第7話攻撃前夜
出撃前の話を書きます。
前回のミスをしないよう気をつけます。
今日は4月29日作戦予定日の前日である。
「明日は出撃だ航空隊員は、早めに寝なさい。整備員は、晴嵐の整備をしっかりやること。」
艦長の声が伝声管を通じて、艦内に響いている。
「現在時刻は、午後7時である。明日の朝5時に航空隊は出撃する。」
「やっとですか!」
搭乗員室で叫び声が上がる。
「嬉しいのは分かるが、ここまで発見されずに来たんだ、此処で発見されては意味がないだろう。落ち着きたまえ。」
艦長が興奮している乗組員をたしなめる様に言った。
「漸くここまで来たんですね。」
疲れ切ったように言ったのは、機関科の山中 義男兵長である。
「ああ、漸く俺たちの努力が報われるんだ。」
機関長の中川 始中尉が答えた。
ここまでの道程で艦が順調に進撃してこれたのには、彼らの不眠不休の努力が影にあったのだ。
「それに敵さんが油断してくれてたからな。」
「それでも、ここまで順調に来れるとかえって怖くなりますよ。」
「それだけ僥倖がこっちにあると言うことだろう?。」
「ですから、航空隊の連中の分の武運が残っているといいんですが・・・」
「おいおい山中、何言ってんだ?僥倖と武運は違うだろう。しかもここまで、戦いらしい戦いを全くして無いんだからな。」
「それはそうですね・・・」
山中兵長がどこか腑に落ちないといった感じで答えた。
「それのにな敵が油断してるということは、それ程、監視の網が緩くなっているという事だろ?」
「それはそうですが・・・僕が言いたいのは、航空隊の収容についてなんですよ。」
今まで誰も触れてこなかった問題を口にした。
「そりゃあ、最悪搭乗員だけって事に成るだろうな。」
「搭乗員は見捨てないんですね?」
彼が懇願するように言った。
その頃、格納筒の中でも、同じようなやりとりがなされていた。
「鷹野整備長晴嵐はちゃんと帰ってくるんですよね?」
まさか帰って来ないことはないと思っている大輪 吉整備上等兵が整備長鷹野 鷹仕中尉に言った。
「ああ、アメさんがここまで油断してるんだ、ヘマでもしない限り、大丈夫だろう。」
「もし、収容時に敵に見つかっていたら、どうするんですか!?」
「その時は、機体を捨てるしかないだろうな。」
「そんなっ晴嵐を捨てるなんてっ・」
彼は晴嵐に惚れ込んでおり、我が子のような感情を抱いていたのだ。
「しかし、その為に艦が沈んでもいいと言うのか?」
鷹野中尉が脅かすように言った。
「いえ・・・そう言うわけでは・・・」
「まあ敵に見つからないことを考えれば、良いだろう。今はな。」
「分かりました。」
「なら良いんだ。」
「無事に変えてきてくれよな。」
日下艦長は自室に戻った後寝付けずにいた。
それも部下を思ってのことだろう。
「しかし、明日は早い。早く寝なければ。」
潜水艦乗りは、咄嗟の時の頭の回転の良さが生死を分ける。その為には、睡眠をしっかりととる事が必要であった。しかも明日は大日本帝国海軍最後の攻勢攻撃に出るのだ。緊張しないはずが、ないだろう。
因みに特攻隊や芙蓉部隊などが行っている、沖縄上陸軍への攻撃は、あくまで邀撃戦闘である為、これが最後の、敵地攻撃になるだろう。
その事を考え眠れなくなっていたのだ。
「明日は大日本帝国海軍に掉尾を飾る攻撃だ。失敗は許されない。」
「よし艦長が居ないからって、油断するなよ?」
副長の渡辺大尉が言った。
「分ってますよ。」
航海長の真鍋中尉が応じた。
「ソナー手異常は無いな?」
「有りません」
「明日は出撃だ気合い入れていくぞ!」
飛行長生野中尉が、搭乗員に発破をかける為に言った。
「分ってますよ」
相方の吉川飛行兵曹が言った。
「出撃前の無礼講だ、乾杯するぞ!」
「よっしゃこう来なくっちゃ!」
2番機の機長鳥野上等飛行兵長のこえが響く。
「よっし乾杯だ!!」
「乾杯!」
「明日はしっかり成功させましょう!」
3番機機長大井飛行兵長の声が響く。
「よしゃ!」
「バンザイバンザイバンザイ」
期せずしてバンザイ三唱が鳴り響いた。
その頃この宴会に参加していない2人の航空隊員、中瀬飛行兵曹と、江草飛行兵曹は、自室で将棋を指していた。
因みに2人とも酒が飲めないので、こういう宴会の時は、将棋を指すのが常になっていた。
「今日こそは、勝ち越してやる!」
江草飛行兵曹が指しながら叫んだ。
この2人の棋力は、中瀬飛行兵曹の方が高くだいたい3回勝負の時は、彼が勝ち越していた。
因みに今日の戦績は1勝1敗で今の第3局で、勝ちが決まる1局であった。
「よし王手だ!」
再び、江草飛行兵曹が叫んだ。
しかし彼は忘れていた。
「甘いわー」
中瀬飛行兵曹が言いながら王を右にどかした。
「なっ・・」
江草飛行兵曹が呆然としながら、叫んだ。
なんと自陣の王が中瀬飛行兵曹の王の右斜め後ろに角があり、その角が直接自陣の王を王手していたのだ。
「後ろに動かすしかないか・・」
「これで終わりだ!」
そう言って王の目の前に香車を置いた。
それを図解するとこうなる。
江草飛行兵曹の王付近1手前はこうなっていた。
銀王銀
歩 香
そして中瀬飛行兵曹の角道がこうなっている。
角
銀王銀
歩 香
王を江草飛行兵曹が下げるとこなうなる。
角
銀 銀
歩王香
そして中瀬飛行兵曹が香を置くとこうなる。
( 中瀬飛行兵曹の香 )角
↓
銀香銀
歩王香
こうなる為、江草飛行兵曹の王が詰められてしまうのだ。
「畜生この手があったか!」
「これで今日も俺の勝ち越しだな!」
もし江草飛行兵曹が王を下げずに銀を前進させていたら、まだ詰んで居なかったろう。
「今日はもう寝よう」
「明日は出撃だからな。」
こうして2人は眠りについた。
伊400はそれぞれの思いを乗せて進撃している。今日も順調な1日だった
第7話完
予定通り書き終わりました。
将棋の図解の位置ずれてるかもしれません。特に角が、でも一応わかると思います。
感想待ってます。