第71話連合艦隊の終焉15
榛名の戦いも終わります
榛名は、応急班の尽力により徐々に水平を取り戻していた。
だが、浸水に加えて注水も実施したため、吃水が高くなり、乾弦が低くなっていた。
もう榛名がじきに着底することは、疑いようのない事実であった。
それでも、水平を保って着底させようと総員が諦めていなかった。
「急げ、まだ漏れてるぞ!」
艦長の決断により、左舷外側タービン室は放棄されていた。
今は、タービン室の隔壁を外側から補強、防水する作業が行われている。
幸いにも、大きな浸水はタービン室のみで起きていた為、そこで防ぐことができた。
いや、小さい浸水は艦内所々で起こっていたが、艦の傾斜に関わるほどのものではなかった。
というよりも、タービン室の浸水を食い止めることが、先決であったというのもある。
鋲が緩んでいる隔壁に、角材による補強が施されてゆく。
「もう少しだ、頑張れ!」
「もっとそっちを抑えろ!」
いつしか、アメリカ攻撃隊は去っていた。
丁度榛名への最後の1弾が、アメリカ攻撃隊の放った最後の1弾だったのである。
「なんとか、水平には戻せるな。」
吉村艦長が、ぽつりと言った。
「ええ、被害は決して少ないものではありませんでしたが、乗り切りましたよ。」
「そうだな、副長。だが、まだ終わっていないぞ!」
意気消沈してると副長は思っていたが、艦長はまだ戦いは終わってないぞと決して、意気消沈などしていなかった。
「そうですね!よっし、お前ら気合い入れてけ!少しでも水平に近づけるんだ!」
「了解!」
威勢のいい声が返ってくる。
だが気合でどうにかなるものではないということは、艦長がよくわかっていた。
だが、その事を顔に出すなどというバカなことはしなかった。
「攻撃隊が帰還しました!」
一番真っ先に第38任務部隊に帰投する、攻撃隊を発見したのは、旗艦ミズーリのCICのレーダー員だった。
「やっと帰ってきたか。出迎えは丁重にな!」
「分かってますぜボス!」
ハルゼー長官が言った。
「俺は、艦橋に行ってくるぞ!」
「私も行きますよ。」
やれやれといった感じで言ったのは、参謀長のカーニー少将である。
「じゃあ行くぞ!」
「やれやれ、忙しい人だな。だが、それが航空隊から信頼を勝ち取っている、原動力なのだから止めはしないが・・」
1人、小さな声で言ったのはミズーリの艦長である。
「帰ってきたぞ!」
ようやく第38任務部隊の空母群が見えてきた。
やはり、11隻もの空母は見応えがある。
「早く着艦してくださいよお。」
「順番はあるだろう?」
「まあそうですけど〜」
「つべこべ言うんじゃない!これ以上言ったら、一番最後に着艦するからな!」
「勘弁してください〜」
わかってんのかな、こいつは。
そうこうギャグをかましてる間に、空母への着艦が始まっていた。
こうしてみると、やはりあれだけの大群だったのが、何処と無く減っているように見える。
やはり無傷とはいかなかったのだ。相手は停止している艦だったが、侮れない対空砲火をかましてきた。
恐らく、油断したのと運が悪かったものが、落とされたのだろう、いつものように。
「多少数が減ってるみたいだな。」
「ええ、まあ最小限の被害ではあると思いますが。」
「今は、1機でもかけてはいけないんだが、仕方ないか。だが、まだ補給はこないからな。失敗などしないようにしなければならん。」
「その通りだと思いますよ、提督。しかし、どのみち引くのですから、そこまで神経質にならなくても良いのでは、無いですか?」
「もし今、特攻機が突っ込んできたらどうする?」
「どうするとは?」
「今の状況では、レーダーの敵味方判別装置もあてにできんだろう?下手に事故で着艦作業が遅れたら、フランクリンみたいな惨状になるぞ?」
「確かに、迎撃機は1機も来なかったそうですから。」
「杞憂に終われば、良いのだがな。」
「まあ、油断してやられるのよりは良いのではないですか?」
「その通りだよ。」
「ようやく、傾斜が減ってきたか。」
今までも、水平を取り戻していたがようやく、変に意識する必要のない程度の傾斜になってきたのだ。
今もまだ、艦底付近では応急班が、浸水と奮闘していた。
いかに、浸水した区画から排水するかに、全力を注いでいたのだ。
しかし、タービン室から排水する作業は行われていなかった。
なぜなら、その区画を完全に封鎖することによって、浸水を食い止めているため下手に手を出せないからである。
そのために、その他の区画の排水を急ぐことによって、水平を取り戻そうという考えなのである。
「いいぞ。この調子ならじきに、水平に戻るぞ!」
「苦労が報われますね!しかしアメさん傍若無人にやってきやがって!覚えてろよ!」
「ああ、その通りだがどうやって反撃する?俺らの艦はもう出撃できないぞ?」
「まだ他の艦が残っています!」
「この惨状を見ても言えるのか?」
そう言って彼は、窓から外を指差した。
「まさか!」
彼は思わず叫んでいた。今まで戦闘の興奮で気づいていなかったのだ。
連合艦隊が被った損害に。
第71話完
と言うわけで、連合艦隊は・・・してしまいました
細かいところは、次回で!
ストックが4本できてます
ここ2日連続で3話書いたので
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