第51話シンガポール入港&ノーヘルヴィットの愚痴
ノーヘルヴィットとは誰か
誰も知らない
今は7月19日21時間50分である。
彼らは明日にはシンガポールに入港する。
「艦長、ついにつきますよ。」
「そうか。だが気を抜くなよ。」
「それにしても、ここは本当に日本の勢力圏なんですね。」
彼らのもとには、ここ数日アメリカ軍哨戒機が飛来していなかった。だから、もう大丈夫だろうという空気が広がっていたのである。
「開戦時に占領したからな。当たり前だろう。」
シンガポールはイギリスの太平洋における要衝であった。しかし、日本軍が積極果敢に進撃し、占領していた。
それからは、ずっと日本が占領していた。
「では、明日の段取りは、如何しますか?」
「とりあえず、10浬程度まで接近したら、浮上高校に移る。そして、後はセレター港に向かえば誤射される事も無いだろう。」
「分かりました。ではそういう事で。でも連絡を入れなくてもいいのですか?」
「ずっと言っていると思うが、本艦の事をアメリカに知られてはいけないのだ。だからここまで無線を発さずに来たのだ。それを今破れというのか?」
「そういうわけではなくてですね、単純にいろいろなことに手間取ってしまうのではないかと思っただけです。」
「この点については、問題ないだろう。単純に極秘行動のために、通達されなかったとでも言えば、なんとかなるだろう。」
「という事は、極秘任務の為で押し切るつもりというわけですか。」
「言って仕舞えばそうなるな。まあ最悪連合艦隊司令部に聞いてもらえればすぐに収まるだろう。それに、我が艦は帝国海軍の船だからな無下にされることはないだろう。」
「そういうつもりならいいですが。それにしてもシンガポールですか。どんな港なんでしょうね。」
「確かに楽しみではあるな。まあ、最初は修理に忙しいと思うから、そんなに外出できないと思うが。」
「それでいいですよ。もともと観光にきたわけではないですからね。」
「観光気分でいられては困るがな。」
「そういえば、アメリカはパナマ運河の修復に手間取っているみたいです。」
そう言って、通信員が通信紙を渡した。
「暗号では無かったのかね?」
「はい、平文でした。」
「なんて書いてある?」
「これは面白いですよ。」
「何が面白いんだ?」
「これ、修理責任者の愚痴なんですよ。」
「読んでみろ。」
「はい、大統領のせいで完成が遅れそうだ。
誰が、大統領に入れ知恵したのか知らないが全くもって迷惑だ。
なんで、大統領の指示に従っているだけなのに早くやれと言われなきゃいけないんだ
運河の拡張なんかに手をつけなければ、今年中に終わったものを。
全くもって腹立たしい。
それで、そんなにかかるのかと言われても、そうですとしか言えないだろう。
このような不条理があっていいのだろうか?
それに、あの程度では意味があまり無く、無駄金を使うだけだと思うのだが、この事を分かっている人間が合衆国にいるのだろうか?
確かに、能力は強化されるが少なすぎると思う。
もっと幅を広げれば期間は伸びるが、経済的に見れば、得出来るのではないか?
大統領に提言した、馬鹿野郎へ
byノーヘルヴィット
」
「何だこれは、本当にただの愚痴じゃないか、はっはっは!」
もはや艦長が笑い転げている。指揮が出来るのかと心配になるレベルで。
「やばいですねえこれ。」
副長も笑い転げていた。
通信員は、これで完全にトドメを刺す感じになるな。と思いながら、もう一枚を渡した。
「読んでみろ副長。」
艦長が涙目になりながら言った。
「ええと
大統領に進言して悪かったな
こっちは、アイオワ級戦艦が通るたびにハラハラしてたんだ。
だから、アイオワ級戦艦が楽に通れる幅にしただけのことだ。
それで良いじゃないか。
それに規模が小さいだって?
これ以上は、要らないんじゃないか?
これ以上大きい船がないんだから。
大統領に進言した馬鹿野郎より」
完全にお笑いのネタになってる。しかも下手な物より面白い。
「なるほど、という事はまだ先という事だな。」
「そういう事ですね。」
今は7月20日ついにシンガポールに入港する日である。
「 浮上用意、浮上!」
艦が浮上した。優に1ヶ月ぶりだろう。
だから、乗員たちは生の空気を堪能していた。
「いい空気ですね。」
「ああ、久しぶりだな。」
航空隊のいつもの二人が話していると、伝声管を通した放送が入った。
「諸君、本艦は1時間後にシンガポール入港予定である!総員気張っていけ。」
「遂に入港ですか、楽しみですね。」
「俺も楽しみにしているからな。」
「セレター港に入港する。」
それから、1時間が経ち入港の瞬間を迎えていた
「不審な潜水艦がいます。」
灯台見張り員が言った。
「見せてみろ。あれは、日本の潜水艦だ!」
「本当ですか!」
「我が軍の潜水艦が入港してきただと。」
シンガポール港湾部部長、佐伯則夫中佐が言った。
「はい。」
「連絡は来ていないが、取り敢えず入港を許可すると発光信号で伝えてくれ。」
「了解です。」
「発光信号です。入港を許可するだそうです。」
「すぐに許可をくれましたね。」
「ああ、ちょっと待たされるかと思ったがな。」
こうして、伊400は入港した。
第51話完
ノーヘルヴィットは架空の人物です
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