第43話雷撃
再び放ちますが・・
「9000」
一旦潜望鏡による哨戒を艦長から変わった渡辺大尉が言った。
今は、6月9日の夜7時である。まだ日は沈んでいないが、視認性はかなり低くなっている。
だが、すでに水中聴音機によって捕捉しているため、見失う恐れは無かった。
「総員静粛待機。音を立てるな。」
極力小さな声で命令を下す。
「今度も成功しますかね?」
「成功する。いやさせるのだ。発射管室、行けるな?」
「行けますよ。早く撃ちたいぐらいですよ。」
「そうか、あと少しだからなもう少し待ってろ。」
「分かりました。待ってます。」
伊400は、もう数時間でノース号を雷撃する地点に到達する。今度も、沈められるのだろうか。
今度の相手は、マンハッタン号のように油断という言葉はない。如何に探知されずにいくかが、成功の鍵を握っているのだ。
「警戒態勢を崩すな。いいな。」
ノース号の船長が言った。
「分かってますよ。大丈夫だとは思いますが、ちゃんとやりますよ。」
見張り長が答えた。
「ソナー以上ないか?」
「ありません。」
「副長、敵はいると思うか?」
「分かりませんが、マンハッタン号をやったのが潜水艦だとすると、いるのでは無いでしょうか?」
「副長もそう思うか。まあ、今日を乗り切れば大丈夫だ。そう神経質になることもあるまい。」
「そうですね。」
「距離7000。」
まだ敵に気づかれずに、接近している。
「飛行長。」
手で背中を叩きながら、吉川飛行兵曹が言った。
「なんだ?今は静粛待機だぞ。」
生野中尉が、言った。
「今回はなんで静粛待機なんですかね?前回はなかったのに。」
「敵船がソナーを装備しているかもしれないからだそうだ。まあ、用心するに越したことは無いからな。」
「確かに、逆襲されたら困りますものね。」
「そういう事なんだよな。」
「5000。」
この、一戦の決着がつく時が近づいてきた。
それにしても、今回も伊400が勝つのだろうか?
まだ分からない。
「そろそろだな。副長、問題無いか?」
「特に発生してません。」
「なら、問題無いな。」
「なんか胸騒ぎがするのだが、副長はしないか?」
「特にありませんが?」
「そうか・・・分かった。」
「4000」
「そろそろ変われ、俺の出番だ。」
「分かりました艦長。」
渡辺大尉が、忍び足でどく。
「あの二本は勿体無かったな。」
水雷長の横川大尉が言った。
「本当ですね。まさかあんな欠陥があるとは、思いませんでしたね。」
「そうなんだよ、野島兵長。だから、格納庫にある魚雷も、しっかり確認しないといけないな。」
今回の件は、魚雷を撃った発射管に魚雷を装填するための整備をしていた時に発覚したのだ。だから、不良品が混ざっている可能性も大きいのだ。
「ですね。自爆なんかしたくないですからね。」
「その通りだな。」
「3000。だいぶ近づいたな。戦闘配置につけ!」
「了解!」
もちろん、小声での会話である。
それにしても、なぜ見つからないのか?それは、ノース号が搭載しているソナーが少し古い軍艦からのお下がりであること、聴音手の腕がまだまだと言うのがある。
また伊400自体がほとんど音を出していないから、という理由もある。
「2000」
「いよいよですね。」
副長が、声を押し殺しながら言った。
「ああ、そうだな。」
「明日には、着けるからな。楽しみにしとけよ!」
ノース号の船長が館内放送で、乗員の士気を上げるために言った。
「おお!楽しみだぜ!」
乗員の歓声が聞こえてくる。
「だから、気い抜くなよ。」
「分かってます。」
「1000、戦闘準備急げ。」
「了解。いつでも撃てます。」
横川大尉から冷静な返答が返ってくる。
あと500接近すれば、雷撃位置につけるのである。確かに、1000からでも命中を望めるが、必中を狙うならば、危険を顧みずに500まで接近する必要があるのだ。
「ん?」
「聴音手、どうした?」
「なんか音がしたような・・・」
「貸してみろ。」
船長が、ヘッドホンを耳に当てる。
「なんとも言えんな・・・」
「どうでしょう?」
「600。発射準備。」
「発射準備よーそろー。」
「もういつでも撃って大丈夫な態勢にしとけ。」
「分かってます。」
「550。電動機停止。」
艦が惰性の動きを止めたのは、目標まで480の地点だった。
「発射管扉開け。ただし、音を立てないように慎重にやれ。」
「発射管扉開きます。」
ガコン
「やはり、音がしてしまうか。」
「この音は !」
「どうした!」
聴音手の声が緊迫感を含んでいるのを感じたため、即座に聞き返した。
「敵艦、発見!右舷45度の方向600!」
「なに!」
「撃ー!」
「撃ー」
パシュ、パシュ
魚雷の発射音が、響く。
「魚雷発射音、感2!」
「面舵一杯!」
艦が回頭を始める。
「魚雷400!」
見張り員の絶叫が響く。
「耐衝撃態・・」
最後まで言い切ることは出来なかった。
凄まじい轟音とともに魚雷が命中したためである。
「被害知らせ!」
「魚雷一発被弾。されど沈没の危険なし!」
「爆雷撃てー!」
「爆雷着水音!」
聴音手が叫ぶ。
「急速潜行!」
艦長の命令のもと、艦が潜行を始める。
「失敗したか!」
水雷長の横川大尉が叫んだ。
同時に、若干離れた所で爆雷が炸裂した。
この衝撃で、艦が激しく揺さぶられ電灯がチカチカと点滅する。
「非常灯つけろ!」
命令の直後、赤色の非常灯が点灯する。
「もっとぶっ放せ敵は近いぞ!」
ノース号の船長の絶叫が響き渡る。
第43話完
マンハッタン号の時のようにはなりませんでした
伊400の命運やいかに?!
いつ終わるかわかんなくなって来ました
ではまた
感想待ってます




