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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
オーストラリア通商破壊作戦
43/112

第42話雷撃へのカウントダウン

あと少しで伊400が再び雷撃を敢行します

「距離60000。」

伊400は、少しずつながらも輸送船ノース号に接近していた。それにしても、なかなか距離が縮まらないのはどうしてであろうか、それはノース号の速力が8ノットであるためである。

それでも、ノース号の前方に占位しているために、振り切られる恐れは無かった。

「艦長、どの位で発射します?」

水雷長の横川大尉が、興味深く聞いた。

「そうだな。敵船がソナーを装備していると、厄介だからな。どうしたもんか。」

「出来る限り無音航行で行けば良いのでは?」

「それはそうだが、撃った時に発見される恐れが無くはないのだ。」

「艦長、いつ撃つんですか?」

横川大尉が催促するように言った。

「また500にするか。それでいいな?」

副長と水雷長に確認するように言った。

「望むところです。そこまで近づけば、絶対に外しませんよ。」

「まあ、敵にさえ発見されなければ、よろしいかと。」

「決まりだな。」

「「はいっ」」

2人の声がハモった。


「水雷長、ちょっと良いですか?」

野島兵長が横川大尉を呼んだ。

「どうした?」

「この二本の魚雷は、撃たないほうが良いですよ。」

「何故だ。今まで大丈夫だったろう?」

「今整備点検していて発見したのですが、配管の繋ぎ目が緩いというか、隙間があるように見えるのです。」

「どの配管だ?」

「特空気の供給配管です。」

「なにっ。それは本当か!見せてみろ。」

「ここです。」

野島兵長が、問題の箇所を指差す。

「ここか・・確かにやばいな。下手したら、本艦が沈む可能性もあるな。」

何が危険なのか。酸素魚雷の欠点としては、酸素を送り出す配管に汚れが付いていただけでも、爆発を起こしてしまうというのがある。それに照らし合わせて考えると、配管から漏れた高濃度酸素が爆発する可能性は高い。いやまずしてしまうだろう。

また、海軍では酸素魚雷を秘匿するために、酸素のことは特空気もしくは第二空気と呼んでいたのだ。

「そうなんですよ。下手に溶接でつなぐこともできませんし。」

「ああ。すでに空気室には特空気が充填されているからな。仕方ない。この二本はお蔵入りだな。」

「仕方ないですが、そうするしかありません。」

「じゃあ、艦長に報告するぞ。」

「そうしてください。」

横川大尉が伝声管を使い、この事を報告する。

「艦長、よろしいですか?」

「横川大尉じゃないか。どうした?」

「実は、問題が発生しました。」

「どういう問題だ?艦の保全に影響するものか?」

「二本の魚雷の配管に隙間が空いていたのです。」

「どこの配管だ?」

「特空気の供給配管です。」

「そうか・・・どうするつもりだ?」

「魚雷お蔵入りにするしかないと判断します。」

「そうだな。下手をすると、艦が沈没する危険もあるからな。良いだろう。しかし、なんで隙間なんかできてしまったんだ?」

「恐らく、生産工場での熟練工不足の影響でしょう。」

「ここまで、徴兵の手が伸びていたのか?」

「分かりませんが、配管工場でしょう。」

末期の日本軍の兵器の稼働率が落ちた原因の最大要因と言われているのが、陸軍が熟練工を赤紙一枚で気楽に徴兵していった事にある。

実に矛盾していることなのだが、陸軍は自分たちの手で熟練工を徴兵しておきながら、増産指示を出していたのだ。唯でさえ学生や女学生が代わりに生産して、生産効率と精度が落ちている所に、増産指示である。

不良品の割合が極端に増えても仕方ないであろう。

この件は海軍も問題視していたが、何もできなかったらしい。

不良品が100個あるより良いものが50個でもあるほうが、戦力になりというのに馬鹿みたいに増産指示を出し、貴重な資源の無駄遣いをしていたのである。

そんな兵器で勝てるわけが無いのにだ。

特に、航空機の場合その影響が大きかった。何故なら、当時の新鋭機に搭載されていた発動機誉の、精度が落ち不良品や短時間しか稼働しないものが増えたからである。

この有様では、四式戦疾風のように大東亜決戦機と言われる優秀な機体の性能を出すことができるはずもなかったのだ。結果として、日本本土防空戦に敗れる間接的な原因となってしまうのである。

「分かった。と言うことは、残魚雷は16本という訳だな。」

「その通りです。」

「それにしても、そんな物が混ざっているとはな。品質管理も出来てないのか・・・」

「多分、配管の担当者が見逃したということもあり得ますね。問題無しと言うことで。」

「全く、問題大有りではないか。」

「全くです。」


「調子い航海だな。」

ノース号の艦長が言った。

「この調子なら、今日中に着けるかもしれないですね。」

「その通りだ副長。乗員も、明日には上陸できるから、気合が入っているようだ。」

「なら、大丈夫ですね。」

ノース号の雰囲気は、マンハッタン号と何時迄も反対だった。

「乗員聞け。」

艦長が放送を入れる。

「明日には上陸できるぞ!」

「っしゃー!」

「だから、これまで以上に気合を入れてけ、分かったか?」

「はいっ。」

乗員に油断という言葉はない。伊400は、発見されずに雷撃を敢行することが出来るのだろうか。

会敵の時は近い。

第42話完

今回は、接近と魚雷の不良品の話でした

次回再び、雷撃を敢行します

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