第22話艦長の思考&小沢治三郎中将の回想
伊400艦長が何を考えているかです
「やはり、オーストラリアに行くべきだな。」
そう言って、艦長の日下中佐話は自室に入った。
彼が言った、オーストラリアに行くとは、オーストラリア通商破壊作戦の事である。
「獲物がなくてもいいが、沈められるのは困る。しかし帰還してしまっては、どんな無茶をさせられるものか。」
そう、オーストラリア通商破壊作戦を実行するのと、内地に帰還することの危険度を天秤にかけると、あまり変わらないのである。と言うより、オーストラリアで獲物がいない場合が一番安全であるが、それを乗員の前で言う気はなかった。何故なら、艦長は臆病者だと陰で言われるであろうことが分かっていた事、そしてせっかく上がった士気がその一言で、下がってしまう可能性が高く、作戦遂行のたまたげになる恐れが高かったからである。
と言うより、もし帰還して仕舞えば、今年中には戦争が終わるであろうこの時期に、再び死地にやられる恐れが高く無駄死にになること確実なのだ。
何故なら、3月に出撃した時とは違い、本土近海の制海権が殆ど握られているからだ。だから、帰還の途中で撃沈されることも、あり得るのだ。そんな危険を犯してまで、帰還する必要はない。だから、オーストラリアに行くのだ。
それに少しでも、皇国にプラスになる事と言えばそれぐらいしかないのも現実だった。
少しでも沖縄に届けられる、物資を減らすのが1番現実的ではないか。
そう艦長は、思ったのだ。
「何故降伏しないんだ?皇国は。抗戦すればするほど、不利になることも分からないのか?まあ、今の陸軍上層部にそれを期待するのは無理か。本土決戦と息巻いているんだからな。」
この戦争が終わらない理由に、陸軍そして大本営が本土決戦を志向し、一億総特攻をスローガンに掲げている。それに対し、総理大臣鈴木貫太郎を始め、井上成美、小沢治三郎、などの海軍上層部の将官、佐官が終戦工作を行っているが、大きな効果を上げているとは、思えなかった。
「マリアナあたりでやめておけば、犠牲も代償も少なかっただろうに。何故やめないんだ!」
恐らくこのことは、艦長職にある者が一番感じていることに違いないだろう。
もう勝ち目はない。しかし、上層部は止めようとしない。その矛盾が、浮き彫りになっていたと思われるのが、この時期である。
それにしてもなぜ、戦争を止めようとしないのか。それは、上層部の面子の問題であったのだ。なんとも情けないが、皇国が負けるはずは無い。何故なら今まで負けたことのない国だから、という空想が広がっていたのではないか。
しかし一つ言える事は、全員がそう思ってはおらず、終戦に向けて動き出していた者が少なからずいるという事である。
「この時期の連合艦隊司令長官就任か、終戦に向けて海軍の纏め役だろうな。今の海軍を統率出来るのは、俺だけだろう。人望の面からも、実績の面からも俺以上の者はいないだろうからな。」
自信過剰とも言える言葉を吐いたのは、5月29日に連合艦隊司令長官就任が決まっている、小沢治三郎中将である。
「しっかし、人事部の連中最後まで俺を大将にしたがってたな。人が中将でいいと言っておるのに。まあそれ程人望があるということだろう。」
彼は、世界で最初に空母の集中運用を考案したことで知られている。しかしその時は、序列の問題から南雲忠一中将が第一航空艦隊司令官に就任している。彼は、真珠湾奇襲作戦を成功させた人物として有名であるが、ミッドウェー海戦において、空母4隻「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」を喪失し、日米戦の行方を決めてしまったことでも知られている。
その後、マリアナ沖海戦に向け、第一航空艦隊司令官に小沢治三郎中将が就任する。
彼は、その海戦において日米の航空機の航続距離の差を利用した、アウトレンジ戦法を実行する。
しかし熟練搭乗員が、旧式機に乗り、若手搭乗員に新鋭機が配属されるなどのミスや、アメリカ空母部隊の戦闘機隊とたまたま、遭遇してしまい全滅に近い損害を受けてしまう。のちにマリアナのターキーシュートと呼ばれることになる、圧倒的な敗北であった。
この海戦において、日本軍は新鋭大型装甲空母「大鳳」を始めとし、「翔鶴」「飛鷹」の3隻一線級空母を喪失してしまう。
特に大鳳の喪失は衝撃的であった。大鳳が攻撃隊を発艦させた直後、潜水艦の魚雷を1本食らってしまった。しかしそこではなんの問題も内容の思われた。しかし燃料パイプが割れ燃料が漏れ気化し始めたのだ。そこで艦内では、必死の換気作業が行われた。しかし、エレベーターが被弾の衝撃で動かなくなったために、支えとして、様々なものを置いたため、意図せず密封状態になってしまい、換気が追いつかなくなってしまった。そこに一機の艦載機が着艦してきた。その衝撃で、気化した燃料が爆発を起こし、大鳳は沈んでしまったのだ。なんとも衝撃的な最後であった。
またレイテ沖海戦においては、ハルゼー率いる機動部隊をエンガノ岬沖に誘導することに成功する。しかしこの海戦で、「瑞鶴」が沈み、さらに3隻の改装空母も沈没、ここの日本機動部隊は終焉の時を迎えたのである。
しかし作戦目的は達成していた。すなわち敵機動部隊の誘導である。しかしレイテ突入は叶わなかった。栗田長官が、謎に反転を命じたからである。そうあと2時間ほどでレイテの岬が見えるというところまできたところでである。
その海戦によって、日本海軍は壊滅した。
第22話完
なんか、話が長引いてきた・・
感想待ってます




