第19話航空隊収容
詳しくは、あとがきになりますがこれだけになるとは
・・・
「着水!」
生野中尉機が着水する。
それと同時に、デリックが動き出し、晴嵐にロープが掛けられる。
「掲揚準備!」
整備長の鷹野中尉が言った。
生野中尉が腕で、丸を描きOKのサインを出す。
「開始!」
それと同時に晴嵐が宙に浮いた。
「ちゃんとやってくださいよ。」
心配そうに 言ったのは、吉川飛行兵曹である。
「分かってるよ。俺が何年やてると思ってるんだ
。舐めんじゃねえぞ若造が!」
「そうでしたね。」
鷹野中尉は重巡摩耶で整備長をやっており、そこで死ぬほど、デリックによる掲揚をしていた。この道16年のベテランである。
摩耶の時も、他人に任せられない性格のため、自分で毎日のようにやっていた為、その腕には定評があった。
一回摩耶から退艦後進の指導に当たっていた。
しかしレイテ沖海戦の直前摩耶の整備長が急病になってしまった。
その為、本来なら乗るはずがなかったがレイテ沖海戦を、摩耶乗り組みで迎える事になる。
しかし、レイテ沖海戦で摩耶が沈んだために、伊400に配属されたのである。
しかし悪運強いと言えるかもしれない。何故なら、摩耶は潜水艦ダーターが放った魚雷を左舷に4発くらい、被雷後僅か8分で沈んでしまったからである。
そういった経歴を持つ彼が、言うのだから、大丈夫なものは大丈夫だろう。
しかし、若くこの艦が初配属の吉川飛行兵曹は鷹野中尉の経歴を知らなかったために、心配そうに言ったのである。
また、掲揚の際には搭乗員は、機長が翼上に乗り、通信兼航法員は、座席に座ったままである。そのための恐怖もあっただろう。
「あいつビビってますね。」
からかうような冷静な声で言ったのは、2番機の中瀬飛行兵曹である。
彼は、吉川飛行兵曹と同じ階級だが、3期先輩であり、筑摩乗り組みだった為、こういった事には慣れていたのだ。
「お前だって、最初の頃はああだったぞ?」
「鳥野上等飛行兵曹それは関係ありません、だってあれ、旧式といってもいい九五式水上偵察機だったから壊れないか心配だったからで、これは最新鋭機で新品同様の晴嵐ですよ。壊れようないじゃないですか。」
「あいつの心配は壊れるかではなくて、落ちるんじゃないかということだよ。」
「まさかあ。あの鷹野中尉ですよそんな心配いりませんよ。」
「あいつは、中尉の経歴を知らないんだよ。」
その一言で、成る程と言うように言った。
「そうなんですか。そりゃ仕方無いですね。でも生野中尉もなんで言わないんでしょう?」
「いや中尉も言っているが、信じてないというか、まじかで見たことないからな。あとは、本艦が初配属だからと言うのもあるだろう。」
「確かに自分が知らない人のことを言われても、信じられませんもんね。こればっかりは仕方ないですね。」
「よし。俺らの番になったぞ。」
そして、2番機の掲揚が始まった頃、吉川飛行兵曹が言った。
「無事に終わってよかったですよよ。何せ訓練してる時に、誰も乗ってなかったもんだからですけど、デリックの訓練をしてる奴がミスって、落としてしまったんですよ。」
「だから、心配で仕方なかったのか。」
生野中尉が彼の緊張の元がどこからきているのか、初めて知り、納得したように言った。
「怖くはないですが、やっぱ慣れないもんですね。足が震えてますよ。」
「そりゃあお前は自分で、何もできないからな。当然だろう。」
「まあ、足の震えにもなれましたけどね。」
「何度もやって居れば、人間誰でもなれるもんだ。時期に彼も慣れるだろうよ。」
「慣れてもらわないと困りますよ。毎回喚かれて収容が遅れては、迷惑ですからね。」
「確かに早く慣れてもらわないと困るがな。」
言い終わると同時に、甲板にドスンという音と共に接地する。
「艦長、次で最後ですよ。」
「ああ、早かったな。」
「みんな実戦を経験してますから、早くなって当然でしょう。」
ここまでで、7分弱しか経っていなかった。訓練では一番早い時でも、20分近くかかっていたのだから、半分近くの時間で、終わることになるだろう。
「やっと戻れますね。」
疲れ切ったというように言ったのは、江草飛行兵曹である。
「帰ってきたのが、一番最後だったからな。」
「それに、大井上等飛行兵曹機は3番機ですからね。」
「でもいつもよりかなり早いな。やっぱ訓練と実戦は違うという事か。」
「でも前の、パナマの時は18分ぐらいでしたよ。」
「そりゃ、実戦ほどいい訓練になるのはないと言うからな。」
「それでも、凄いですよ。この調子なら、浮上から、潜行まで30分ぐらいで終わるんじゃないですか?」
艦が浮上したのが、5月21日午後4時30分であるから午後5時までに終わらせるということだ。
今は、4時45分である。甲板に掲揚された機は、順次翼を外し、格納筒の格納するのだが、この作業に以外と時間がかかるのだ。何故なら、プロペラや、フロートも外すからである。
「順番が来ましたよ。」
「ようやくか、待ちくたびれたな。」
「大井上等飛行兵曹そりゃあ最後ですから、またない方が、おかしいですよ。」
「やっぱり物は言いようだな。」
そして、甲板にやはりドスンと言う音を立てて、着地する。
「格納終了格納筒扉閉鎖完了!」
「潜行用意、総員艦内に戻れ!」
「総員収容完了!」
「ハッチ閉鎖完了!」
「潜行!」
現在時間午後5時15分艦は、潜行した。海面に伊400が居たことを示すものは残っていない。
第19話完
サブタイトル当初の予定では、航空隊収容&オーストラリアへの進撃だったんですけど、収容のみ時系列にして、わずか45分程度!
なんというスローペースでしょう。書いててこうなるとは思いませんでした
と言うか、場面が減るっていつもと逆のパターンだな・・・なんでこうなった?
小説家になろう勝手にランキング総合で446位戦記部門で、15位達成です
やったー!
でも予約投稿だから、上がってるかも・・
リアルタイム読者にしか分からない話だ・・
感想待ってます




