第18話航空隊の帰還
航空隊の帰還ですサブタイトルまんま
「後少しですよ。」
生野中尉機の電信員兼航法員の吉川飛行兵曹が言った。
「後どのくらいだ?」
「後80浬位ですよ。」
「よし、もう着くな。」
今は5月21日午後4時、出撃してから、2時間が経ち、そろそろ、収容地点に到達する予定である。
伊400は、午後4時半に浮上収容を開始する予定である。
その為、小一時間上空待機する事になるが、遅れる機が有っても、最低限の浮上時間で収容、潜行する為である。
「あと30分で浮上だ。配置に着け。」
艦長日下中佐が言った。
「全員無事帰ってくるといいですね。」
副長の渡辺大尉が言った。
「恐らく、無事に帰ってくるだろう。特に電波も捉えてないしな。」
「確かに、便り無いのは無事の証拠と言いますもんね。」
「ああ航海長の言うとうりだ。」
航海長は、真鍋中尉である。
「そういえば、水雷科の連中はしゃいでましたね。」
「 特に無いみたいだな。」
水雷長の横川大尉が言った。
「何がですか?」
水雷科の1人野島兵長が言った。
彼は、この道15年のベテランである。
「無電だよ。兵長。」
「そうですか。では決行ですかね。」
「そうなるだろうな。」
「やろー共聞いたか!ついに魚雷を撃てるぞ!」
決行とは、もちろんオーストラリア通商破壊作戦の事である。
「やりましたね!」
「酸素魚雷の威力を見せつけてやりましょう!」
「ああ、目標は幾らでもいるからな。」
横川大尉が落ち着かせるように?言った。
しかしかえって、彼らに火をつけてしまった。
「よしゃっ!魚雷を撃ち尽くしたら、15センチ砲を喰らわせてやる!」
などと言い始めた。
「大尉が困ってるじゃないか・・」
と野島兵長がため息交じりに言ったが、焼け石に水だった。
「っしゃ!」
もはや言葉にならない。乗員も出てくる始末である。
いかに不満がたまっていたか分かるだろう。
しかし、本土付近でこれをやったら、間違いなく沈められてしまうだろう。そう思えるほどの声だった。
「やった。ついに撃てる」
遂に、泣き出すものも出てきた。
そんな時だった。伝声管越しに艦長の声がした。
「水雷科の諸君、嬉しいのは分かるが、敵に見つかったらどうする気だ?」
そう艦長に言われ、全員一瞬で、我に帰った。
壮絶な対駆逐艦戦闘を思い出したのだ。
伊400で体験したわけではない。即ち、水雷科員のほとんんどが、他の艦の乗員であったのだ。
そう、伊400が短期間で戦力化にこぎつけた裏には、優秀な人材を持ってきたというのがある。
対駆逐艦戦闘では、ソナーのピーンピーンという探査音が幾度となく聞こえ、さらに爆雷投射音が聞こえ、そして爆雷の炸裂音が聞こえるのである。
乗員は、額に脂汗を浮かべ、いつ爆雷が直撃するか、緊張を強いられるのである。
その事が分かっているために、一斉に静まったのである。
「野島兵長魚雷の調子はどうだ?」
横川大尉が聞いた。
「そりゃあ、毎日整備を欠かしてませんから、バッチリですよ。いつ撃っても大丈夫ですよ。」
「ああ頼りにしてるぞ。」
魚雷、特に酸素魚雷の整備は大変なのである。
酸素魚雷の場合、2〜3日で発射管から引き出し、分解調整し、グリースを表面に塗って中に戻すのだが、もし配管類に、ちょっとでも汚れや油が付着していると、発射した直後に引火爆発を起こしてしまうのである。
そうなるともう艦は助からない。何せ、数発で空母ワスプを沈めたのだ。
至近爆発を起こせば、4000トンを誇る伊400だろうと木っ端微塵になるだろう。
そうならない為にも、しっかりとした整備が必要なのである。
「配管類にはゴミひとつ残ってませんよ。」
「じゃあ油はどうなんだ?」
横川大尉が意地悪な質問をした。
「そっちも大丈夫ですよ。安心してください。」
「頼りにしてるぞ。」
「結局、何もありませんでしたね。」
そう言ったのは、中瀬飛行兵曹である。
「だが帰還時が一番危険だ、ちゃんと送り狼がいないか確かめとけ。」
「大丈夫ですよ、鳥野上等飛行兵曹。」
「 なら良いが、気を付けとけ。」
「そうですね、僕も死にたくないですし、しっかりやりますよ。」
鳥野上等飛行兵曹の話を聞いてから、軽口を叩かなくなった?中瀬飛行兵曹である。
二人のペアの機が生野中尉機を見つけた。
「あれ一番機ですよ。」
「確かに、丁度良いタイミングだな。」
時計の針は、4時15分を指していた。
「あれは、鳥野上等飛行兵曹機じゃないか。」
生野中尉が言った。
殆ど同時に両方の機体を見つけた訳である。
「大井上等飛行兵曹機が居ませんね。」
「遅れてるだけだろう。中瀬飛行兵曹そんなに心配する必要もないだろう。」
「あっ発見しました。」
吉川飛行兵曹が言った。
今は5月21日午後4時27分伊400が浮上するまで、あと3分である。
「ギリギリ着きましたね。」
江草飛行兵曹が言った。
「低空さえ飛んでなければ、遅れなかったぞ。」
悪態をついたのは、大井上等飛行兵曹である。
「でも戻ってこれたんだから、良かったじゃないですか。」
「物は言いようだな。」
「それはそうですが、良いじゃないですか。」
そして、5月21日午後4時30分伊400が浮上した。
第18話完
今日の朝全く書けんかった
感想待ってます




