第108話終戦 戦争の終わり
と言うわけで連続投稿です
ついに終戦を迎えます
1945年8月15日
この日戦争は終わった。
だが、伊400の彼らがその事を知るのは、次の日の16日になる。
簡単に言えば、無線が届いたのがその日だから。
ぐらいしか言えない。
15日の正午にその放送は流された。
しかし、血気にはやる若手将校の手によって玉音放送のレコードが、取られそうになるなど未だに戦争を継続しようとする連中はいた。
しかし、もう戦争を遂行できるだけの国力は日本に残っていなかったのである。
そしてその放送を聞き多くの人が涙したと言われる。
しかし、東京の皇居前は普段通りの風景だったともいう。
事実はどちらかと聞かれても、答えることは出来ない。
だが、どっちもあったとするのが賢明な判断であろう。
それにしても日本はこの戦争で多くの物を失った。
まず領土が大幅に縮小されてしまった。
いや明治維新前に戻っただけとも言える。
いかに日本という国が短期間で力をつけてきたかが、わかるだろう。
また威容を誇った連合艦隊も存在しない。
開戦時には世界でもっともバランスのとれた艦隊と言われた連合艦隊も、もはや駆逐艦以下の艦艇が大部分を占めている状態であった。
わずかに残った大型艦艇も、燃料不足のために何もすることができなかった。
日本海軍に唯一残された戦艦は、長門唯1隻だけであった。
開戦時には10隻。
その後2隻が追加され、最大12隻を保有していた海の艨艟である戦艦も、今や1隻になっていたのである。
それを壊滅と言わずしてなんと言うのだろう。
さらに駆逐艦も戦前から就役していた艦で残っていたのは、神風、響、雪風程度であった。
残りは旧式となっていた艦のみであった。
他は全てが秋月型、松型、両駆逐艦型のみであった。
しかしそれでも、小園安名大佐率いる厚木航空隊のように徹底抗戦を訴える部隊も少なくなかった。
しかし、小園大佐の場合は本人がマラリアにかかったために、大事に至ることはなかった。
また、大西滝治郎中将は割腹自殺を遂げていた。
このように終戦直後に自刃した将官は数百人になるという。
宇垣纏中将は彗星艦爆に乗りアメリカ機動部隊に特攻を仕掛け戦死した。
だが大半の部隊は素直に武装解除を行い、いつでも降伏できる体制になっていた。
「ついに降伏したか・・・」
日下中佐が、感慨深げに言った。
それはそうだろうな。
3年8カ月に及んだ戦争がついに終結したのだから。
ただ、日本の無条件降伏という内容ではあったが。
どちらにしろ平和な時代を迎えたのである。
日本にとっては苦難の道のりの始まりであったが、それでも、平和であることに変わりはなかった。
「終わったのですね。」
副長の渡辺大尉が、言った。
その目には安堵からか、涙が浮かんでいるように見えた。
「正式には昨日。だがな。」
艦長が務めて静かに言った。
「どうしますか?」
副長が、これからどうするのかと聞いた。
正式な命令には、武装解除せよとなっている。
それをいつするのか?そう聞いているのである。
「当然今夜の浮上航行の時でよかろう。ただし、晴嵐はそのままでいい。」
「了解しました。しかし、なぜ晴嵐はそのままなのですか?」
「捨てるに惜しいから。それでは理由にならないか?こんな機体はもう出てこないだろうから、保存しておいて損はないと思うぞ。
それに第一弾薬類がなくては何もできない。
しかも、停止してしまえば射出器で発艦させることもできないだろうし、もししたら敵対行為としてこっちがやられてしまうだろう。
だから保守に必要ない弾薬類は、一緒に投棄すればいいさ。
わかったか?」
「そういうことでしたら、反対しませんよ。
むしろ機体を保存するというのには賛成です。
パナマ運河攻撃という武勲を立てた機体を捨てるなんて、もったいなくてできませんよ。」
彼はそう言って、艦長の提案に賛成の意を示した。
「そうか、それなら良かった。もし反対されたら、どうするかと内心ハラハラしてたんだ。
だが、君がすぐ賛成してくれたからな。
安心したよ。」
「なら良かったですよ。
もう、この艦が戦果をあげることもないんですね。」
「その通りだ。だが、平和が訪れたことは確かだ。
それがたとえかりそめのものであったとしてももな。」
「艦長は、また戦争が起きると思ってるのですか?」
「ああ、連合国の間でもソ連との間にヒビが入ってるらしい。しかも社会主義と民主主義は水と油の関係だからな。共通の敵がいなければまた違った戦争が起こっていたかのしれない。」
「そんなこともあるんですね・・やはり平和とは次の戦争の準備期間と言うのは、間違ってないんですね。」
副長がため息を吐きながら言った。
「まあ、日本が直接戦場になることは無いだろう。」
「そうあって欲しいですよ。」
「まあそうだろうな。ああ、水雷長ちょうどよかった。もう聞いてるとは思うが、我が国はアメリカに無条件降伏して。」
「それは聞きました。」
「それにともない、武装解除の命令が出ている。さっき副長とも話したのだが、晴嵐だけは履きするな。分かったな?」
「了解しました。では早速準備に入ります。」
「頼んだぞ。」
艦長が言い終わる前に彼は、弾薬庫に向かっていた。
そしてその日の夜、静かに魚雷や砲弾が海に沈められた。
それは同時に、伊400が戦闘力を喪失した瞬間であったのだ。
だが、格納筒には艦のシンボルとも言える晴嵐が2機鎮座しその威容を放っていた。
第108話完
話自体はかなり前に上がってましたが、あとが書けなかったので今になりました
あと2話です
コミケの列で109話書きました
そんくらいしか時間なかったんで・・
部活が忙しくて・・・
最終話いつ書けるかな?




