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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
戦いの終わり 本土への帰還
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第104話出港②

まだですね

「準備完了しました。」

艦長に声をかけたのは、副長の渡辺大尉であった。

「もうそんな時間か。」

艦長は今考えていた事を悟られないように、静かに言った。

「今は、10時30分です。予定よりも30分早く終わりました。」

彼は簡潔に言った。

「ならば、休息を乗員に取らせろいいな。」

「了解です。」

その流れで副長は艦内放送を始めた。

「総員20分の休息を取れ。11時ぴったりに出向する。」

そう言うと彼はマイクを手から離し、艦長にこれでいいですねと言うような表情で艦長を見た。

「では、我々も休もうか。」

艦長が軽い口調で、副長に休息を促した。

「そうしましょう。」

彼は素直に従うことにし、そばにあった椅子に腰掛けた。

「もうそろそろ出港だな。見送りにでも行くか。」

佐伯中佐は港湾部部長室の椅子から立ち上がりながら言った。

彼は入港してきた伊400を最初に目にし、また乗員の住まいの手配などをしていた。

そのため見送らないわけにはいかないだろうと思っていた。また、日下艦長と直接話すのは今日で最後になるだろうと言うのもあり、午前の仕事を早めに切り上げて行くことにしたのである。

「それにしても、もう20日か。速かったような、遅かったような不思議な気持ちだな。」

彼はそう言いつつ、扉を開け部屋から出て歩き始めた。


「日本はじき降伏するでしょう。」

ホワイトハウスの大統領執務室で開口一番こういったのは、キング海軍元帥である。

彼は合衆国艦隊司令長官として、今回の戦争で海軍を実質的に仕切っていた者である。

「それは分かってる。問題はソ連が対日参戦した事だ。下手をすると奴らが日本を取るかもしれん。」

ソ連極東軍は、1945年8月9日の朝、満州国に雪崩れ込んだのである。

ソ連が一方的に日ソ中立条約を延長せず、日本に対し宣戦布告してきたのだ。

それによって、関東軍は潰走を始めていた。

もう関東軍に昔日の力はなかった。かっては陸軍最強の部隊と呼ばれた関東軍であったが、アメリカ戦においての苦戦によって、主力である師団などを次々に引き抜かれていったのである。

それによってただでさえ装備で劣る関東軍は、数と性能で押してくるソ連極東軍を押し返すどころか、抵抗線を築くことすらままらなかった。

さらに言えば、ノモンハン事件の時はまだ空軍力が優勢だった為に、損害数では日本側の方が少なかった。

しかし今は航空機の性能はともかくとしても、数にと奇襲効果によって航空優勢も確保できなかった。

そう、陸空何方の戦力もソ連極東軍に抵抗できるものではなかったのである。

そう、満州をソ連が占領することは確実になされるだろうというのが、アメリカ首脳部の考えであった。

そして、かっての力をなくした連合艦隊の力では弱小であるソ連上陸軍を阻止できないのではないか、という不安があった。

対戦国の心配をするとは随分と余裕を持ってると思うかもしれない。

しかし、それは戦後の世界の勢力図を書き換えるほどの影響をもつのである。

それは、ソ連の太平洋進出である。

それによって、共産主義が太平洋の国々に広がることを恐れているのだ。

また、満足な海軍力を持たないソ連が日本の技術を使い、大艦隊を建艦するかもしれない。

そうなってしまうとアメリカでも容易に手を出せない。

理由は、日本のそこそこの技術とソ連の物量がアメリカを凌駕してしまうかも知れないのである。

現に日本は、世界で3カ国しかない空母保有国でありその技術がソ連に流れたとしたら、かなりの数の航空母艦が一気に建艦されてしまうだろう。

世の中すでに、戦艦から空母の時代に移っているのである。

ソ連をその流れに乗らせないためにも、ソ連による本土占領だけは阻止しなければいけないのである。

「しかし、すぐさま上陸軍を本土に送ることはできません。奴らの実力では、アリューシャン方面の島を幾つか占領するので精一杯でしょう。」

キング海軍元帥が言った。

「そうなってくれれば良いのだ。我が国が軍備でアカに負けることだけは許されないのだからな。」

そう言って大統領は、戦後戦略を見直す必要があるかを考え始めた。

第1まだパナマ運河の復旧自体が終わっていないのだ。

そんな状況でどうしたらいいのか、結論はすぐには出て来なそうだった。


「艦長は居るか?」

佐伯中佐が長原技術少佐を連れて、伊400が係留されている桟橋にやってきた。

彼は伊400の前に着くなり、兵に聞いた。

「恐らくいると思いますが。」

話しかけられた兵は、緊張を隠さずに言った。

「わかった。」

彼はそう言って艦内に入っていった。

長原技術少佐は佐伯中佐とたまたま桟橋の途中で、出くわしていたのだ。

2人とも、伊400の見送りに来たのだ。

現在時刻は午前10時45分、まだ時間はあった。

「それにしても、あなたと出くわすとは思いませんでしたよ。」

長原技術少佐が言った。

「それは私も一緒だよ。まあ、タイミングがあったんだ艦長も二度手間にならないで良かったんじゃないかな。」

佐伯中佐はそう言って、発令所に通ずるタラップを降りていった。

第104話完

だいたい110話〜120話で終わります

詐欺にはなりません今回は

なぜか

書く話がないから

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