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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
戦いの終わり 本土への帰還
103/112

第102話訓練の終わり

暴走してます

「明日はついに出港か・・」

生野中尉が言った。

ここは、格納筒内部の一角である。

「早かったですね。」

吉川飛行兵曹が言った。

今は、1945年8月9日の朝である。

明日でこのセレター港から出港し、母港の大湊に向かうのである。

彼らはここに20日程度滞在しており、愛着が湧いてきていたのである。

だから明日でこの風景が見納めかと思うと、どこか寂しさを伴った思いが込み上がってくるのだ。

「長いようで短かったな。確かに少し退屈していた時もあったが、楽しかったな。」

「晴嵐が修理中はやる事がありませんでしたからね。ここにいつまでも居ていいような気分になったりしますよ。」

「俺もそうだ。まあ、戦争が終わればまた来れるさ。」

「その通りですが・・・フラグは立てないでください。」

少しむくれたように言った。

「そんなつもりはないぞ。むしろフラグはへし折るためにあるんだ。」

「そうかもしれませんが・・・」

「そういう考えもあるかも知れんが、俺はへし折るのがそういうのだと思ってるからな。」

「やめて下さいよ。今日は宴会ですよ?隊長が落ち込んでてどうするんですか?」

「落ち込んではいないぞ。」

そう言いながら彼は立ち上がり、耐圧扉から外に出た。

「待って下さいよ〜」

吉川飛行兵曹がそう言いながら追いかけて行く。

「そういえば、広島と長崎に敵の新型爆弾が投下されたというのは知ってるか?」

「ええ、詳しいことは分かりませんが相当な威力だったらしいですね。」

「どのくらいの威力かは、知らないか・・」

残念そうに生野中尉は言った。

「しかし、相当な威力を持っていることは確かみたいですよ。」

そこに艦長の日下大佐がやってきた。

「どうした?」

艦長は2人が話し込んでるのを見て聞いた。

「広島と長崎に落とされたという、新型爆弾がどのくらいの威力だったのかという話です。」

「その話か。そう言えば詳しく言ってなかったな。」

「艦長は知ってるんですか?」

「ああ、国内の無電は大体傍受できるからな。」

「では、教えて下さい。」

「覚悟はいいか?」

ごく・・・

2人の生唾を飲み込む音が聞こえた気がした。

「はい。」

「敵の新型爆弾は、1発で広島、長崎を壊滅させたそうだ。」

「1発でですか・・・」

吉川飛行兵曹が呆然としながら言った。

とても信じられることではない。そう言いたげだった。

「そんなことが可能なのですか?」

生野中尉も少し間を置いてから言った。

「ああ、詳しいことは分かっていないが、相当な高温に晒されたようだ。」

「何故ですか?」

「火傷したものがとてつもなく多いそうだ。第一に街一つが丸ごと壊滅してるんだ。それだけでもその威力の凄まじさはわかるだろう?」

艦長が試すように言った。

「もはや、通常の兵器では不可能でしょうね。」

「その通りだ。アメリカは今までにない作動原理の爆弾を作ったらしいんだ。」

「対抗策は、爆撃機を落とされなければないということですね。しかし、普通の焼夷弾でさえもあれだけの被害を出すのですから、今回の爆弾が大量に投下されることになれば、想像も出来ないような惨禍に日本が襲われるかもしれない。そういう事ですね・・」

「そういう事だ。何が起こるかわからない。それが大本営の見解らしい。」

「らしいとは?」

吉川飛行兵曹が、どういうことですかと言った。

「大本営野情報がかなり錯綜してるんだ。何時間か遅れるのは当たり前。時系列が可笑しいものもあるんだ。判断のしようがないではないか。」

「だかららしいと?」

「そうだ。どの情報を信用していいのかすらわからないような状態なんだ。それ以上はわからないんだ。」

「と言うことは、それ以上は推測するしかないということですね。」

「そういう事なんだな。それにしても、都市を1つ壊滅させる爆弾を艦隊に落とされたらどうなるんだろうな。」

艦長が言った。

それはもっともな問いかけだった。

「恐らく爆心地にいた艦は、轟沈でしょうね。」

生野中尉が言った。

「それだけで終わるとは思えないのだが。」

艦長がもっとあるはずだと言外に含んでいった。

「そうなると、装甲のない駆逐艦は衝撃波が届く範囲にいる限りしずんでしまうだろう。更に言えば、重巡や戦艦以外は行動不能になる確率が高いだろう。」

「確かに空母は、飛行甲板がやられれば何も出来ませんからね。」

生野中尉が肯定するように言った。

「下手をすれば、伊勢型以前の艦も危ないかもしれん。」

「金剛型や扶桑型は、装甲が薄かったり配置に問題があるから、ですね?」

生野中尉が確認するように言った。

「そういう事なんだが、多分まともな戦闘力を持ってられるのは今は亡き大和型だけかもしれんな。」

艦長が、そんくらいの威力だろうなと言うように言った。

さらに言ってしまえば、大和型以外は全滅ということだってあり得る。

いや、全滅というよりは戦闘不能艦が相当数出るんのだろう。

「しみったれた話はやめて、訓練するぞ!」

艦長が言った。

こうしてセレター港での最後の訓練が始まった

第102話完

なんでこうなった的なかんじです

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