第9話パナマ急襲
朝書いたの上げます。
今日は1945年4月25日である。
「 あれ?何か映ったかな?」
パナマ基地の電測員が言った。
「ああ今も映ってるぞ。」
である電測員の上官が言った。この影こそ、晴嵐攻撃隊である。
「パナマ発見!」
吉川飛行兵曹が、機長の生野中尉に攻撃目標発見の報告を、機内にある伝声管を通して行った。
「もう見つけたのかっ」
生野中尉がびっくりしたように言った。
何故なら、生野中尉が操縦を担当しており、吉川飛行兵曹が、前方の目標を先に発見するとは思っていなかったのだ。
しかし高空での飛行ならともかく、今は高度20メートル程度の低空飛行中であり生野中尉は操縦に専念していたから、と言うのがあるのだが。
最初は50メートルという案があったのだが、生野中尉の強い意見具申により、20メートルでの進撃となったのである。即ち、ちょっとでも敵の電探に見つからないためであった。
しかし高度20メートルとは通常の大気圧方式の高度計では、殆ど最小高度であり、さらに、10メートル以下の1メートル単位の目盛りは付いていないのだ。その為攻撃態勢時以外は、50メートル程度が、操縦員の体力や気力の消耗が、比較的少なくまた、多少の操縦ミスが有ったとしても、致命的なミスにはならないからと言うのが有る。
しかし晴嵐には、今年採用されたばかりの電波式高度計が併用して搭載されていた。電波式とは機体下方に電波を発信し、その反射波が帰って来る時間から機体の高度を検出する装置である。
しかし正確さはイマイチであり、高度1000メートル以上では、大気圧方式を併用し2つの平均値から、機体の高度を検出するので有る。
それでも、100メートル以下では、1メートル単位で目盛りが付いており、低空飛行を比較的安全に出来る様になっている。
その為、艦長も許可を出したのだ。
「友軍の飛行機だろう。」
パナマ基地の電測員イッル注意の上官が言った。
「まあそうですね。高度が低いのが気になりますが。」
「低空飛行の訓練でもしているんだろう。」
「まさかジャップな訳ないですもんね。」
「ああ奴らは、本土防衛に精一杯だよ。それにどうやって、ここまで来たと言うのだね?」
「まっそてれもそうですね。」
「後10000!」
吉川飛行兵曹の声がする。
「このまま接近する。」
「おいあの飛行機こっちに向かってないか?」
運河にいた砲弾輸送船ボルテシモの操舵員が言った。
「ああ確かに向かって来ているな。」
艦長が言った。
「見張り員、何か見えるか?」
艦長が、隣にいる見張り員に命じた。
「ええとフロートが有るので、水上機の様です。」
「他に何が見えるか?。」
「ちょとまって下さい。」
そう言って、彼は双眼鏡を覗いた。
「何だあれは!」
「どうした?」
「胴体に何かぶら下がってます。」
「ちょと見せてみろ!」
そう言って、見張り員から双眼鏡を奪い取るようにして、取り上げ自分で確認した。
「あれは・・・・」
呆然としたまま、固まってしまった艦長に副長が言った。
「艦長どうしました?」
艦長が無言のまま、双眼鏡を副長に渡した。
「あれは魚雷じゃないか!!」
「何ですって!」
見張り員が叫び声を上げた。
「なぜ、あの機体は魚雷を吊り下げているんだ?」
艦長は絶望に飲み込まれまいとしながら言った。
「まさかジャップか!・・」
副長が絶望に屈した声音で言った。
そしてこの頃には、船橋を絶望が包んでいた。
「魚雷を投下しました。」
「目標まで、後4000」
これは、生野中尉の声である。
目標へは、目標が動かない事もあって距離2500で投雷する事になっていた。
後1500である。
そして、
「距離2500!てっー」
の叫びとともに、吉川飛行兵曹が、
「距離2500よーそろー、てっー」
投雷した。
「奴ら何したいんでしょう。あそこからでは、本船には当たりませんが?」
見張り員が、安心した様に言った。
「何を言ってるんだ!奴等は関門を破壊する気なんだ!」
艦長が、叫び声を上げた。
しかし、もう遅かった。
敵が投下した魚雷は、そんな艦長の叫びを打ち消すように炸裂した。
更に、遅れて2発計3発の魚雷が炸裂した。
そして、水圧に耐えきれなくなった、関門は崩壊した。
しかし弾薬輸送船ボルテシモは押し寄せた魚雷の炸裂波に対しては、船体を岸壁に擦り付けただけで、大きな損害は無かった。
しかし、引き波によって、船体が傾いた際、固定が不十分だった弾薬が転がりだした。そして次に船体が運河の岸壁に激突した衝撃に寄り、隔壁に激突、誘爆したのだ。
これによって、ボルテシモの船体は消し飛び、更に内側の第二関門を崩壊させ、ミラフローレス関門の二つの関門を破壊しきったのだ。
そして、その誘爆の瞬間、彼らの肉体は、消し飛び骨も残らなかった。
更にその破片が、監視所に襲いかかりそこにいた隊員達の、首や腕更には胴体を弾き飛ばし、凄惨な光景が広がった。
後には、死体の手足や臓物などが、散乱していた。
そしてこの頃、漸く警報が鳴らされたが、最早手遅れだった。
「バンザーイバンザーイ」
晴嵐2番機の機内で叫んでいるのは、本機の搭乗員である鳥野上等飛行兵曹と中瀬飛行兵曹の2人であった。
「後は、帰るだけですね。」
中瀬飛行兵曹が言った。
攻撃隊は1機も失う事なく、帰途に着いた。
高度20メートルの低空飛行で。
第9話完
最近2000字越えが当たり前になってきた。
只今10話執筆中です。
感想待ってます。




