異世界の鍛錬と遭遇
砂を操る能力と形成の能力、だったら俺の戦闘の中心になるのはゴーレムか。
まずは一匹のイノシシを引き寄せて……
「砂騎士!」
砂で象るのは騎士。
波打つ刀身が特徴のフランベルジュと、タワーシールドを携えた重騎士だ。
あとは、これを上手く動かせば………
「らぁっ!」
一閃!……が、上手くイノシシを捉える事が出来ずに、イノシシの毛を僅かに削ぐに留まる。
だけど、イノシシのヘイトはゴーレムに向いたようで、イノシシの突進はゴーレムに向かう。
それを盾で受け止めさせ……さて、どうする………俺の拙い制御じゃ、上手く動く的を捉えられない。
かと言って、砂で地形ごと飲み込むような真似をしたら鼻を取れないし、そもそも技術を高めるという意味では完全に無意味だ。
ゴーレムの操作術を鍛えるのは………いや、今からじゃあ遅い。
どうする……どうする…?
「この! ちょこまかと!」
当たらない、当たらない………狙いが甘いのか…!
よく狙うには……そうだ、こうしてみれば…!
「来い!」
砂騎士を近くに呼び寄せ、その身体をバラバラに分解する。
それを俺の身体に…!
「装着!」
砂騎士ならぬ砂鎧!
自分の身体として動かせば、少しは狙いやすくなるはず…!
イノシシがこちらに向かってくるのを、ゴーレム操作の応用で動かす盾で受け止めるけど………こえ~!
まっすぐこっちに突進してくるイノシシってのは恐ろしいものがあるぞ…
先輩はよくまぁあんな平気そうな顔で………っと、そんなことはどうでも良いな。
さて、俺のスキルには格闘術があったし、それを活かす方向だと……
「ナックルダスター!」
硬度がそれなりにあることは、ここまでの戦闘で確認している、ならその上から力任せにでも叩き割る!
再び向かってきたイノシシを、操作する盾で吹き飛ばす。
いわゆるシールドバッシュってやつだな。
っし、イノシシもスタンしたし、このまま…!
「食らいやがれ!」
ナックルダスターを装備した右腕を、思い切り振り下ろす!
その一撃はイノシシの頭蓋をぶち抜き、その命を奪い取る。
っぐ………感覚が生々しい……
「………もういい、奏弥は休んでろ」
先輩に、そう止められる。
俺はまだ戦える……せめてノルマは……
「無理はするな」
………この感覚…命を奪う感覚にグロッキーなのが、バレてんのか……はは……かなわねぇな…
奏弥side end――
ゴーレムを使って倒すもんだと思ってたが、砂の武器越しとはいえ物理的に殺るとはなぁ………あれじゃあ、短くても今日一日は使い物にならないな。
さて、ギルドの登録料は合計銀貨3枚、銅貨なら30枚か…イノシシ一匹で銅貨2枚、ここまで14匹だから残り1匹。
イノシシの肉も売れればそれなりになるだろうが、最低限宿に泊まれるだけの金は用意しておきたいし、もう10匹は狩っておきたいところだな。
もう手本を見せる必要は無いだろうし、空から狙い撃つか。
俺は翼を羽ばたき、空高く飛び上がる。
妖力は弓……和弓の形で固定、イノシシの位置は………10匹、補足完了。
あとは狙いを澄ませて………撃つ!
放った矢は、これも妖力を固めて形成したもの。
音速を軽く超え、イノシシの脳天を貫く。
それを数回繰り返し、10匹のイノシシを新たに狩り終える。
でもって、そのイノシシを回収、二人の所に戻る。
「これだけ狩れば、一先ずは大丈夫だろう
さて、イノシシの解体を始めるが、二人は大丈夫か?」
「か、解体はちょっと……」
「申し訳無いスけど、グロいのはもう勘弁……」
仕方ない、離れて解体するか……
とりあえず、二人の視界に入らない場所で解体を始める。
こういうのはなるべく鮮度の良い内にやっとかないとならないからな。
太い血管を切って血を抜いて、こんどは臓物を引きずり出す。
腸の辺りなんかは傷つけたら酷い目に遭うだろうから慎重に。
そうだ、皮も剥いでおかないとな、もしかしたら防寒具とかに使えるかもしれないし、使えるなら売れるだろう。
と、こんな感じでサクサク剥いでいったら……
「キャアァァァァァァ!?」
「うぉわぁぁぁあぁ!?」
二人の悲鳴!?
イノシシをその場に放って、二人の所に駆けつける。
「大丈夫か!?」
そこには、砂で出来た繭のような物と巨大な………
「ドラゴン………ツイてるのかツイてないのか……」
妖刀を生成し、構える。
ドラゴンなら、その素材は高く売れるだろう。
つまり、これを狩れば財布事情はかなり楽になる。
さぁて………
「俺の糧になってもらおうか……!」