表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鴉と砂と少女(仮)  作者: コロッケ
こんにちは異世界
2/35

異世界の王宮

「おぉ、成功だ!」


「勇者様だ…勇者様が降臨された!」


いつの間に意識を失っていたのか。

俺が目を覚ますと、そこはどこかの地下室だった。

周囲の人達の話すことが普通にわかるため、日本のどこかだろうとは推測したものの、足元には謎の紋様。

それを見た奏弥が、やや過剰に反応する。


「魔法陣……それに勇者……召喚!

異世界召喚か!

いやでも勇者っぽいのは…先輩?

じゃあ俺は巻き込まれポジだな!」


「どこよここ……」


奏弥の声で目を覚ました美空が、気だるそうに辺りを見渡す。


「奏弥が言うには異世界らしいな

なるほど召喚…妖術でも行使は可能だが、世界を渡るほどの大規模なものか……」


「へ? へ?」


そういった能力も持ち合わせず、知識もまた持っていない美空だけが、事態を未だ飲み込めていないようだ。


辺りのざわめきが収まり、部屋の奥の階段から一人の少女が現れる。


「ようこそおいでくださいました、異界の勇者様方

私はこの国の王女、テスカ・リュミエールです

父が皆様をお呼びです、御足労願えますでしょうか」


見た感じ、15~6歳だろうか。

俺達よりも若干年下に見える彼女が、三人を呼んでいる。


ふむ……いや、何をするにも今は手がかりが無いな…


「あぁ、わかった」


俺の思考をよそに、奏弥が了承する。

まぁ良いかと考えつつも、王女に従い地下室を出る。


長い階段を登ると、その先はやはり王宮であった。

赤い絨毯が敷き詰められ、高価そうな調度品が幾つも置かれている。


「落ち着かないな………」


「うわぁ…すご……」


「異世界の王宮ってのは、こんなものじゃないすか?」


落ち着かない様子を見せる俺と美空に、妙に落ち着いている奏弥。

なおもしばらく歩くと、大きな扉の前に到着した。


「失礼いたします

勇者様方をお連れしました、お父様」


王女がノックし、扉を開ける。

扉の先には、玉座に座る王らしき壮年の男と、傍らに佇む大臣らしき男。


「うむ、我らの召喚に応じ、よくぞ来てくれた、異界の勇者よ

そなた等を呼び出した理由は他でもない、彼の憎き魔王を討伐してもらいたいのじゃ」


そう言う王に、俺が疑問を投げかける。


「そんな事はどうでも良い、俺達は元の世界に帰ることが出来るのか?」


「あ、そうです! 私達にも家族が……帰れないと困るんですけど……」


「なに、問題は無い、魔王が召還の術式を隠し持っておる

魔王を討伐さえすれば、帰ることも容易じゃろう」


「……………」


王の回答に押し黙り、思考する。


「魔王の討伐…まk「待て」ぁ…へ?」


了承しようとした奏弥を、ギリギリの所で押しとどめた。


「真実を語れ、王

召還の術式など、存在しないんだろう?」


「ほう……なぜそのような事を考える?」


「俺は魔法を知らないが、術式と言うものは本来表裏一体で生み出される

それが、それぞれ別に、離れた場所で生み出されるなどありえない

この場合、ありえるパターンは、召還の術式を隠し持っているか、そもそもそれを生み出すことが出来なかったか


ここまでは、多少聡い者なら気がつくだろう、浮かれていなければ…だけどな

で、ここまで考えると、術式がここにあるとは考えづらい

元の世界に帰す交換条件として、その術式を提示すればいいだけだからな

だが、仮にそうしたとして、術式が無ければ、魔王を倒した……それこそ魔王以上の力を持つ勇者が逆上する、国は…少なくとも王族は滅ぼされるだろう

魔王が術式を持っていたことにすれば、魔王が術式を破壊した等、何とでも言い訳ができる」


「…………」


怒涛の口撃により、それに対する王の反応は………


「……勘の良すぎる奴は嫌いじゃな」


そうつぶやき、指を鳴らす。


「うぇい!?」


「ちょ、何!?」


奏弥と美空が焦った声を上げる。

それもその筈、王の合図によって、三人は騎士たちに囲まれていた。


「御しやすければそのまま飼い殺しにしていたのだが……まぁいい、無理矢理にでも支配下に置いてやるとするかの」


騎士が、三人に襲いかかる……が、数人が鎧をバラバラに切断された上で倒れ伏す。


「誰を支配下に置くって?」


そう言ったのは俺。

俺の手には、ひと振りの漆黒の刀が握られている。


「何……召喚されたばかりでその力……既に強化がされていると……?」


「強化…? そう言えば、少しばかり体が軽いな 誤差程度だが」


「強化……魔法とか使えんのか?

んー………よし、砂大砲(サンドカノン)!」


「うおっ!?」


少し考えた奏弥が魔法っぽい名称を叫ぶと、前方に巨大な砂の塊が放たれた。

その軌道には俺も居たが、辛うじて飛び上がって回避。

騎士たちが砂に直撃し、吹き飛ばされる。


「……へぇ」


味をしめたとばかりに舌なめずりをする奏弥。


「こういうのはイメージが大事っぽいし…イメージイメージ……砂狼(サンドウルフ)!」


奏弥の周囲に砂で出来た狼が多数出現し、部屋中を駆け巡る。

それは騎士たちに食らいつき、瞬く間に戦闘不能に追い立てる。


「ぐ、ぐぅ………」


うめき声を挙げる王。


「……ここに居る理由は無くなったな

帰る手掛かりにもならない以上、こっちに利点は無い

二人共、外に出るぞ

奏弥は、こういった世界に詳しそうだ

あとで色々教えてくれ」


「了解っす!」


王と騎士たちに背を向け、扉に向かう。


「あぁ、そうだ 余計な事はしてくれるなよ?

………流石に国を一つ落とすのは面倒だ」


この兵士の練度なら不可能ではないがな。

そう言い残して、部屋を去る。


部屋には、気絶した騎士たちと腰を抜かした王と大臣、呆然とそれを見ていた王女だけが取り残された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ