印象
「初めまして…の人の方がやっぱ多いよなぁ。僕は幸村楓っていいます。まぁ…この通りよく男っぽいって言われます。外見はおとなしそうなのに喋るとねー、なんても言われました。趣味は、音楽聞くこと、ネット、あとは料理。あれ、好きなことかな?まぁ、宜しくお願いします」
最初の印象とは打って変わった人だった。この時、僕は
あまり関わりたくない人
という印象を抱いた……
「さて自己紹介も終わったことですし、今学期の学級委員長を決めてしまいましょう。私が指名するので良いですか?」
先生が言ったとたんどよめきが起こった。顔をしかめる者や唖然とした者、しかし反対する人はついに出なかった。
「何もないということで指名します。……えー、2人なので男子1人、女子1人にお願いしたいと思います。……白石君、幸村さん。この両名に今学期学級委員長をお願いしたいと思います」
(……え?)
僕は耳を疑った。
(僕と………誰って言った?委員長は別にやっても良い。良いんだが、さっきあまり関わりたくないという印象を抱いた人とやれと言うのか……)
そんな僕の心の内を知らず、クラスの子は皆賛同するように拍手をしている。顔を見ればホッとした顔ばかりが見えた。
(観念するしかないようだ……)
僕は下を向き、コッソリとため息をついてから立ち上がった。立ち上がると君、幸村楓が黒板の前に立とうとしているところだった。顔の表情は読み取れないが、少し曇っている色が少しだけ見えた。君も不服なのだろうとそこから推測する。
歩いていき、君の隣に立ったところで先生が声を発した。
「はい。この2人にやってもらいます。皆さんちゃんと2人の顔を覚えてくださいねー。…さて、これからクラスの係り、委員会決めをこの2人にしてもらいます。よろしくね」
そう言うなり、先生は教室の後ろに行ってしまった。
僕は決めるものを教えてもらおうかと思っていると、教卓の上に今日決めることが書いてある紙を見つけた。それを手に取り、君に話しかけた。
「どうする?」
「どうする、と聞かれても、答えようがないんだけど……。やるしかないんでしょう?」
「まぁ……ね。じ……じゃあ、僕が読むから黒板頼んで良い?」
「了解した」
君はそうに言うなり、チョークを手に取り文字を書き始める。
(……綺麗な字だな。っ!いけない、仕事しなきゃ!)
5秒位の間僕は君の字に見とれてしまった。あまりにも、君の字は印象とかけ離れたものだったから。