本日の学校生活、終了
……その頃魔緒は。
「楠川の奴、どこほっつき歩いてんだ?」
学食の入り口で、仁奈を待っている魔緒。……本当は、最初から奢る気だったのではないのだろうか?
「まさかとは思うが、あまりの空腹で野垂れ死んでるんじゃないだろうな……」
いや、それはないだろう。
「出すモン出し過ぎて、必要なエネルギーまで出しちまったとか……。在り得るな」
ほんとに、絶対にないと思う。
「それならさっさと見つけねえと、大変なことになる」
既に、君の頭が大変だ。
「こりゃ、探したほうがいいな」
結論自体は決して間違っているとは言えないのだが、そこに至るまでの途中経過が凄すぎる。
仁奈を探そうと、魔緒が学食を後にしようとしたとき、仁奈がやって来た。
「なんだ楠川、無事だったのか。てっきり、どっかで餓死してんのかと思ったぞ」
魔緒は冗談―――本人は本気だが―――を言うが、仁奈は俯いていて、無反応だ。
「ん? どうした、ぼうっとして」
魔緒に指摘されて、初めて反応を示した仁奈。―――反応といっても、顔を上げただけだが。
「……お前、まさか」
魔緒はそれを見て、何か気づいたようだ。だが仁奈は、首を横に振った。
「ううん、違うの。そうじゃない。ただ……、ちょっと体調崩しちゃったみたいで」
仁奈は笑顔を見せた。ただそれは、いつもの無邪気なそれとは違い、無理をして笑っているように見えた。無論、魔緒にも。
「だからね、折角なんだけど、奢ってもらうのまた今度にして」
そんな仁奈を見ても、魔緒は表情を変えない。しかし内心は、仁奈のことをとても案じている。その証拠に―――
「駄目だ」
「え?」
「え、じゃねえ。お前から頼んだんだから、ちゃんと奢られろ。例の新メニュー、三人前頼んでやるからな」
そう言うや否や、魔緒は仁奈を手を取り、学食に無理矢理引っ張り込む。
「ちょっ、ちょっとまおちん!?」
「安心しろ。食いきれなかったら残りは俺が食う」
「そういうことじゃない!」
戸惑う仁奈だが、魔緒に手を引かれて歩く姿は、どこか嬉しそうだ。