女の涙はミサイル級
◇
その頃、飛び出していった仁奈はというと。
「……」
トイレの個室で、声を押し殺して泣いていた。そろそろ授業が始まる時間で、この女子トイレにも他に誰もいないのだから、好きなだけ泣いてもいいと思うのだが。
◇
こうして時間が過ぎ、そろそろ涙も涸れてきた頃。仁奈もいい加減泣き疲れたらしく、目を擦りながら個室から出てきた。
「……みっともない、私」
鏡に映った自分を見て、呟く仁奈。
折角、気遣って貰ったというのに。知られたくない、ただそれだけで、あんなことを……。どうして、あんなことを言ってしまったのだろうか。
そう思えば思うほど、自己嫌悪に陥る仁奈であった。
仁奈は顔を洗い、ついでに涙も洗い流して、トイレを出た。
「……はぁ」
そしてため息。
「……まおちんに、酷いこと……しちゃったな」
「気にしてないから安心しろ」
「……良かったぁ~」
ほっと胸を撫で下ろす仁奈。そしてハッとする。
「まおちん!」
「気づくの遅いぞ」
トイレの出口の傍に、魔緒がいた。この時間にいるということは、授業をサボっているのだろうか。
「な、ななな何でまおちんが!」
「俺がいちゃ悪いか?」
「悪くないけど……」
とはいえ、女子トイレの前で待ち伏せというのはどうなのだろうか。
「ま、折角だしサボるか」
何が折角なのかは置いといて、
「でも、私……」
「となるとやっぱり、図書室だな」
魔緒は一人頷き、
「んじゃ、さっさと行くぞ」
「えっ? ちょ、ちょっと!」
仁奈の手を取って、走り出した。




