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意味有り気な出だし
◇◇◇
時は二十一世初頭。科学技術が急速に発達し、過去の信仰―――宗教は別だが―――は忘れられつつある。もう誰も、非科学的な現象など信じたりしないだろう。―――ごく一部の者を除いては。
五月初旬。学生は春休みの余韻が抜けきり、より一層身が引き締まる頃。ここ「板橋学園」の新一年生達も、例外ではない。
「……ふぅ」
少年が一人、学園の門をくぐった。いうまでもなく、ここの新一年生である。真っ白な短髪に真っ赤な瞳が一際目を引く少年。すらっと背が高いが、そのためか少しやつれているように見える。
「ったく……。一ヶ月経っても、これだけは慣れないな」
少年が言っているのは、ここまで来る道のりだ。彼は自宅からここまで、徒歩で一時間ほど掛けて来たのだ。しかし何故、自転車なり、電車なりを使わないのだろうか?
「ほんと、慣れるのだけは勘弁だ」
そう呟く少年の目には、ほんの少しばかりの哀愁が含まれているように見えた(気がした)。
少年は、校舎の中へと入っていった。