◆は時間が巻き戻っていることを示しているのでご了承ください
◆
「……暗いわね」
女子生徒が一人、夜の校内を歩いていた。何故生徒と分かるかと言うと、この学校の制服を着用しているからだ。
女子生徒は、長い黒髪を左側に纏めている。目付きが悪く、今は別の場所にいる仁奈と瓜二つ。そう、先日仁奈と一悶着あった少女だ。何故、この時間に学校にいるのだろうか?
「まったく、何で宿題を忘れたりしちゃったのかしら?」
あんたもか。
人には、人生の転機というものがある。それは人との出会いであったり、不幸な事故だったり、色々だ。
「きゃっ!」
彼女の場合はまず、今夜であろう。
「何よもう……。転んじゃったじゃない」
少女は振り返る。そして、
「……何よ、これ?」
足元に転がっているものを見て、少女は驚愕する。人である。人が、少女の足元に転がっている。
「人……、なの?」
少女は、転がっている人を見て硬直した。先程の言葉は、何とか振り絞ったものだ。
言葉を口にするだけでも難しいというのに、その上、
「ひぃっ!」
頭上から雫が滴り落ちてきて、
「きゃっ!」
更に、
「ひぃぃっ!」
上から、もう一つの人体が降ってくれば、
「ぃ……、いや……」
精神的な負荷が祟って、
「いやぁぁぁぁぁ!」
発狂してしまっても、おかしくないだろう。