プロローグ的なもの
「人生は旅だ」と、何処かの誰かが言っていたような気がする。
「旅」。今でこそ交通手段が発達しているが、昔は「旅」をするのに、自分の足で歩いたものだ。
「歩く」。何処を? そんなものは決まっている。「道」である。
「道」。この場合の「道」とは、地図に書いてあるそれとは違う。それは即ち、「運命」。
「運命」。各人は各々の「道」を、「運命」の上を歩いて生きる。そしてその「道」が平行なら、それらが交わることは無い。だが、そうでないなら、必ずどこかで他の「道」と交差する。そして、それらが複数、同じ地点で、同じ角度で交われば、それらは向きを変える。それぞれが、一つとなって。
例えば、「道」が三つあったとしよう。そしてそれらが、同じ角度で交わったとする。そうなれば、それは三叉路のような「道」となり、そして真上へと進路を変える。
一つの「道」は、異能の「道」。人から外れた、そして人から忌み嫌われる存在が、歩く「道」。
一つの「道」は、孤独の「道」。自らの存在に、価値も意義も見出せず、ただ孤独な「道」。
一つの「道」は、切望の「道」。失ってしまった大切なもの、本当は得るはずだったもの、それらを取り戻したいと強く願う「道」。
それらが交錯するとき、果たして「運命」の向きは、「幸福」を向いているのだろうか。それとも「不幸」か。
それは、時の神にも、幸運の女神にも、創物主にも分からない。