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第七陣

巴嘩の前に小さい女の子と思われる少女が飛び降りて来た、真っ白のローブに深く被ったフードで口元しか見えない、しかし巴嘩はそれだけで恐怖を覚えた、そして適合者ということに気づいた、白い女の子は近寄り巴嘩に抱きつき耳を心臓の辺りにあてる、巴嘩はあまりの恐怖で動けなかった。


「ねぇ、あなたはどんな声で鳴いてくれるの?この心臓はどんな恐怖の音を奏でてくれるの?」


「な、何よあなた?」


白い女の子は一歩下がると宙に浮いた、そらを仰いで両手を大きく広げた、そして魂脈の流れが速まった。


「四郎よ、我が刃となりてひじりを持って咎人に裁きを下せ、死の旋律は血の戦慄によって奏でたまえ。属性馮位、ひじりの舞」


白い女の子の周りに白い球体が複数規則的に円を描いて現れた、属性馮位特有の状態だ、しかし巴嘩には一つの疑問が浮かんだ、それは属性だ、属性は本来火・風・水・岩・木の五つだ、だが白い女の子が唱えたのは‘聖’、それは巴嘩の知識の中では存在するはずがない属性だった。


「巴、どういうこと?聖なんて属性聞いた事ないわよ、それにそんなものが存在するの?」


『残念ながら存在しちゃうのよ、属性馮位だけに存在する属性が二つあるの、一つは彼女の聖、もう一つは真逆の闇よ。聖は闇に強い、でもそれ以外には変わらないわ、けど主な五つの属性攻撃を使う事が出来るの。闇は主な五つの属性全ての弱点であり、全てが弱点、聖には一際弱い属性なの』


「お話は終わった?早く始めようよ、どっちらかがお人形さんになるまでね」


巴嘩は覚悟を決めた、相手の魂脈の速さから次郎の魂玉段階弐式並の力があることは容易に想像できた、今逃げてもすぐに追い付かれる事も、巴嘩は魂脈の流れを速めた。


「巴!枯葉魅刃こっぱみじん!」


巴嘩は白い女の子に跳び掛る、目の前まで上昇すると横薙で斬りつける、いつの間にか白い女の子の隣に来ていた球体が平たく壁になって斬撃を止めた、巴嘩は落ちるのと同時に白い女の子の足を掴んで下に投げる、勢いよく落ちていた白い女の子は徐々に減速して着地した、巴嘩はその上から上段から斬りつける、だがさっきと同じように壁に阻まれる、それと同時に球体が横から巴嘩を弾き飛ばした。


「くっ!」


「キャハハハ!もっと鳴いてよ、それとももっといじめないと鳴けないの?」


地面に倒れてた巴嘩が腕を着いて立ち上がった、口から唾に混ざった血を吐いて白い女の子を睨んだ。


「一人で空にいたらつまらないでしょ、地面にいないと苦痛に歪む顔が見れないわよ」


巴嘩は挑発するが白い女の子の口元は何も変わらない、口角を上げたままだ、白い女の子が手を広げると左手に半分、右手に半分の球体が集まって大きい鎌の形を成した。


「それもそうだね、鳴き声が聞こえないし手元で歪む顔が見たいもの、だから私を感じさせてよ、ね?」


「あなたが生きてたらね」


「あ!あと私の名前は四奈ね、あなたは?」


「巴嘩よ、よろしくね四奈ちゃん」


「よろしくね巴嘩ちゃん」


次の瞬間目の前に四奈がいた、左手で斬りつけるが何とか魂玉で防御する、しかし右手が残っていた、鎌の柄を素手で掴んで頭突きをするが左手の鎌が欠けて巴嘩の頭突きを防ぐ、巴嘩は無理矢理腕を掴んで後ろに四奈を投げる、そして追って斬りかかろうとするが檻に捕まり檻の椅子に拘束された、シーソーのようなものの先端に檻がついている。


「パン屋の檻」


「な、何よこれ!?」


檻が落ちるとその先には大きな水溜まりがあった、そして拘束されたまま水に落ちた、住宅街に水溜まりがある訳がない、四奈が作り出したものだ、四奈が檻を引き上げる、檻の出し入れをして四奈は楽しんでいる。


「ゴホッ!ゲホッ!ハァハァ……!」


「もっと苦しんでよ!悲鳴を上げて、死んじゃうまえに奏でてよ」


四奈が檻を下ろすと最後まで落ちたにも関わらず巴嘩は肩までしか水に入っていない、四奈は口角を上げたまま首を傾げた、そして巴嘩は笑った。


「残念だったね四奈ちゃん、私の属性は木よ、これくらい吸わせるくらい簡単な事」


「残念だな、でもこのまま死なれても鳴き声聞けなかったからいいや、次は鳴けるよ」


檻は球体に戻った、地形も元に戻って四奈の右手に球体が集まって右手はハンマーと化した、四奈は亜音速で巴嘩に突進してハンマーをフルスイングする、流石に巴嘩は吹き飛ばされる、着地するとまたハンマーで殴られるが今度は押されるような感じだ、そして巴嘩は‘何か’に入った、それは扉のように体を開いた女の子の鉄の像だ、内側には刺がある。


「鉄の処女」


扉は観音開きになっていて閉まる前に巴嘩が手で閉まらないようにする、鉄の像は閉まろうとするが巴嘩の力が勝った、扉は紙のように折れ曲がり簡単に千切れた、四奈は口を馬鹿みたいに開いていた、これが普通の反応だが巴嘩の馬鹿力では常識だ。


「何これ?アルミ?こんなんで私を殺そうとしたなら笑えるわね」


四奈の口角がまた上がって大きな口を開けて大笑いしはじめた、巴嘩にはなんで笑ってるのか理解出来ないらしい。


「巴嘩ちゃん最高だわ!私今のでチョット感じちゃった、でもやっぱり鳴き声が聞きたい、だから鳴いてね」


急に四奈の魂脈の流れが速まった、四奈の両足に球体がまとわりついて手のひらにもある、空気を蹴るように高速の速さで駆け出した、巴嘩は見失って次の瞬間右側に四奈が現れ右手に触れて消えた、同じ要領で左手に触れた、そして最後に足に触れると巴嘩と10mほど離れた場所に四奈が現れた。


「咎人は動くに値せず、咎人よ聖なる十字架により汝の動きを封じる、神の十字架」


「えっ?やぁ、何これ!?」


巴嘩の腕が90度に開き足は閉じて宙に浮いた、巴嘩がどれだけあがいてもビクともしない、十字架に張り付けにされたような状態だ、恐らく魂玉の力により拘束されたのだろう。


「何よこれ?離しなさいよ、気持悪い!」


「離すないわよ、これからもっと鳴いてもらうんだから、ほら段々顔が絶望に近付いてきた、泣きたかったら泣いて良いよ、その鳴き声も私は大好きだから」


四奈は巴嘩の頬に右手を、腰に左手を置いて耳元で囁くように言った、巴嘩はあまりの恐怖で涙が流れて来た、それを見た四奈は体を震わせて口角を上げた。


「鳴き声聞かしてよ、涙は感じるけど悲鳴には負けるわ、これから死んじゃうんだよ、怖くないの?私はゾクゾクしちゃうわ」


「お願い、こ、殺さないで、私、な、何でもするから、ねぇ、お願………!」


四奈は巴嘩の唇に自分の唇を押し付けた、長く濃厚なキスだ、巴嘩は目を丸くして涙を更に強く流した、四奈は巴嘩から離れると頬を流れる涙を舐めた。


「バイバイ、最後に聞くけど焼き加減はレア・ミディアム・ウェルダムどれが良い?」


巴嘩はあまりのショックで言葉が出なかった、四奈は無言で巴嘩から離れた、その時ついに巴嘩は死を覚悟した、もうこの状況からの打開策は考えつかなかった、四奈は興奮する体を抑えていた。


「じゃあ思いっきり鳴いてね。魔女狩り」


巴嘩の足元から徐々に火が出てきた、そして一気に燃え上がる瞬間だった、巴嘩の上から大量の水がふってきて巴嘩をビショビショにしたついでに消火した、そして高速で移動する何かが四奈を地面に抑えつけた、魂玉の力が薄れて巴嘩が落ちた時に巴嘩をキャッチしたのは次郎だった、そして怒りの形相で四奈を抑えつけてるのは経だ。


「テメェ、俺は女だろうが子供だろうが容赦はしねぇ、殺すと決めたら殺す」


「……経ちゃん」


「キャハハハ!殺せなかったな、これじゃ勝てないよ、私は手を引くよ」


白い球体が無くなった、そして抑えつけてる地面に亀裂がはいってそこに四奈が消えて行った、経には入れない空間らしくガラスがあるかのように四奈が亀裂に消えて行った、経は一目散に巴嘩のもとに向かった。


「巴嘩、大丈夫か?」


「何で経ちゃん達が?」


「別の魂玉の生体反応を感じたと思ったら魂脈の流れが速まったから、心配して来てみたらこの有り様だった」


「経ちゃんありがとう!わ、私死ぬかと思った、絶対、絶対に助からないと思った!」


巴嘩は経の肩で声を上げて泣いた、経は泣き止むのを待って家に帰った、巴嘩をベッドに寝かせるとすぐに深い眠りに入った、経は考えながらロフトの上の布団で横になってると、いつの間にか寝ていた。



経が朝起きると違和感を感じた、いつもと違う、何か温もりがある、布団をはぎとってそこを見るとそこには女の子がいた、真っ白な素肌、色素の薄い方まで届く巻き髪、そして何より未発達な身体、何よりおかしいのは服を着ていない事だ、経は考えられるありとあらゆる可能性を考えた、その結果。


「誰だよお前!?」


女の子は目を擦りながら起き上がった、そして大きな目を見開くと口角を上げて経に抱きついた。


「おはよう!ご主人様!」


「ご主人様?それにお前誰だよ?」







「私?私は久留米四奈くるめしな、四奈って呼んで」

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