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第四陣

経宅で食卓を囲む適合者が三人、一人はこの家に住んでいるから当然経だ、もう一人は半分居候状態になっている巴嘩だ、半分居候状態とは一週間の内学校のある五日間は経の家で寝泊まりしている、親が家にいることが皆無に等しい経にとっては有り難いのだが幼馴染みとはいえ巴嘩は女の子だ、女の子と二人暮らし状態故に経は若干の違和感を感じている、巴嘩本人は全くもって気にしていないようだが。

そして最後の一人は次郎だ、次郎がココにいる理由は経と巴嘩が修行の後に帰ると家の前に小次郎が座っていた、そして腹が減ったという自己中心的かつ個人的な理由で家に上がって来た、経達は賑やかになるという理由で招き入れた。


「にしても経の家デカイよな、親はいないの?」


「親は世界中を旅行してて家には一年に一週間くらいしかいないんですよね、あっ、同情とかしないでくださいよ、親というのが俺の中ではそういう存在なので寂しいとか思った事も無いし今更親の愛が欲しいとも思いませんから」


「いや、同情なんてしなよ」


経の涙無しでは聞けないような経歴を口にしょうが焼きを含みながらあっさりとスルーする次郎に微妙に経は同情をあおった、しかし人間の‘慣れ’というのは恐ろしいものだ、親がいなくなるのは寂しいが親がいないのは愛を知らないから寂しいという感情が湧かないらしい、一応経に親はいるけど。


「で、何で家がこんなにデカイの?親は世界旅行に家はデカイ、金の出処は?」


経の家は坪で加算すると200坪ほど、庭が無いので敷地いっぱいに2階建て屋上付きコンクリート打ちっぱなしの家が建っている、半地下の車庫には高級外車が4台ほどあるがそのどれもが使われていない、俗に言うと豪邸だ、ちなみに長嶋さん仕様の屈強なセキュリティ付きは言うまでもないだろう。


「聞いた事ないんですよね、親がいないから聞く機会もないですし帰って来ても一泊もしないでまた旅行行っちゃうんですよね、お金には困って無いんですけど不満を強いてあげるなら家を小さくしてほしいですね」


巴嘩と次郎は半分呆れていた、贅沢なお坊っちゃん、しかしお坊っちゃんってほど生温い生活を送っていないのは確かである、むしろそこらへんの格闘家より危険な世界にいるので二人もそれでいじろうとはしない。



食事も終わって経と巴嘩はテレビをみて次郎はタバコを吸いながら雑誌を読んでいる、恐らく次郎もココに居候するつもりなんだろう、しかしそんな穏やかな生活にはそぐわない適合者特有の‘生体反応’を三人は感じた、生体反応とは生物なら全てが持っているものだ、人間なら人間、犬なら犬の生体反応があり適合者の生体反応のは人間のそれとは異なるものだ。


「小次郎、この反応は」


『そのようですね、この妖気にもにた生体反応はアイツしかいませんね』


次郎の顔が見たことがないくらいに険しくなり経と巴嘩が寒気を覚えるくらいの殺気を放ち玄関をでた、経と巴嘩は後を追って外に出た、二人の目には亜音速で移動する次郎が写り後を同じ速度で後を追う、常人の目にはどれだけ頑張ってもとらえられないだろう。



ほんの数秒で広い空き地に着いた、誰もいない恐らく工事中であろうと思える場所、そこには一人のボサボサ頭で人の目とは思えないような生気の無い目をした男と次郎が立っている。


「お前ら、手を出すなよ」


経達は自分達に向けられた殺気ではないと分かっていても恐怖を感じずにはいられない、しかしその殺気を全て受けている本人は顔色一つ変えずに立っている。


武志たけし、待ってたぞこの時を、あの時からどれだけ待ち望んだか、お前を殺すタメだけに俺は強くなった、まぁ死ねばの話だがな」


不適な笑を浮かべているが感情が無い、経と巴嘩は適合者だから感じる事が出来る、この適合者特有の生体反応なのだが人間の生体反応には思えない、本来ならば複合して感じられるハズの‘人間’の生体反応がない、むしろ異端に似た小次郎が言った通りこれは‘妖気’そのものだ。


「義経、何だよこの反応は?」


『分からない、こんな反応を感じたのは初めてだ、俺らの思い違いなら良いのだが』


次郎の‘魂脈’の流れが速まった、魂脈とは気の流れなどと言われ魂とはこの事を指す、魂脈の回転を速める事により魂玉との同調率を上昇させて魂玉を実体化させたり馮位させたりする、属性攻撃の場合はこの魂脈を逆回転させることによりその場に岩や木を構築出来ると言われている、次郎の魂脈が速まったということは魂玉を発動するということ。


「小次郎!神清氷刃しんしんひょうじん!」


次郎の背中には鞘に入った反りが大きい刀が現れた、190近くある小次郎の身長とほとんど変わらない長刀だ、ボサボサの男もとい武志は両手を広げて魂脈の流れを速めた。


「武蔵、両陽若火りょうようじゃっか


武志の右手には刀身のやたらに広い恐らく20センチくらいあろうかという普通の刀、左手には同じくらいの比率の脇差しが握られていた。

宮本武蔵、史上最強の剣豪と呼ばれ戦いを愛した侍、二天一流、俗にいう二刀流の開祖としても有名である、巌流島の決戦で心理戦により勝利した。

経達には一つの疑問があった、刀を鞘から抜けるのかということだ、しかし二人の疑問はすぐに無くなった、次郎が刀に手をかけると鞘が砕け散った。


氷塊雨ひょうかいう!」


武志の上から大量の100Kg近い氷の塊が降ってきた、しかし武志の周りから炎を巻きあげ氷を溶かした、溶けた氷の水で炎を消す、蒸気に包まれその蒸気が晴れて武志の目に写ったのは次郎の刀だった、武志は防ぐの精一杯なのもあるが次郎の一振りの距離は武志が踏み込まなければ届かない距離でもある、この距離の差は大きかった、次郎の五月雨のような斬撃を防ぐだけしか出来ない、武志は後退りをしながら防御をしていたタメに小石につまずき体制を崩した、その瞬間武志の左手腕が地面に落ちた、武志の肩口から先がなくなっていた。


「ハ、ハハ、ハハハハハハ!!甘い、甘すぎる、此くらいで俺が殺せるとでも思ったか?片腕落としたからなんだ」


苦悶の色も浮かべずに無表情で笑う、そしてなにもない肩口を見て鼻で笑う、そしてなにもない肩から腕が生えてきた、ほんの3秒たらずで斬られる前の状態に戻った、まるで袖から腕を出すように腕が生えてきた。


「おい!義経、今見たよな?腕が生えてきたよな?ってかアイツ人間だよな?絶対におかしいよな?」


『経殿、落ち着けとは言わない、黙れ』


経は無言でのパニック状態に陥る、しかし経が騒ぐのも無理はない、適合者の回復能力が常人に比べて高いのは確かだが‘生える’という表現が使えるほどのものではない、傷口が塞がるのが早いだけではあって落とされた腕を生やすの不可能な事だ、生物学的の概念を大きく無視することは出来ない、だから武志の腕が生えてきたのは理解に苦しむようだ。


『恐らく武志とやらは武蔵に支配されてると見た』


「し・は・い?」


経はパンク寸前の思考回路をフル回転させパンクした、今の経ではついていけないレベルだったらしい、普通の状態でも恐らくパンクしただろう。


「おかしくない義経?普通、魂玉が適合者に‘取り付く’って表現をするわよね?でも義経は今‘支配’って表現を使った、おかしくない?」


『巴嘩殿が正しい、しかし武志は‘支配’されている。通常適合者に魂玉は取り付く、しかし適合者の力があまりにも弱い場合、もしくは魂玉の力が強すぎる場合、適合者の精神が崩壊して魂玉に支配される事があるらしい』


魂玉による適合者の支配、経には理解出来ていないらしいが巴嘩にはその重大さも適合者の末路も想像出来ていた、しかしまだ納得いかない事があった。


「でも腕が生えてくるのは何で?体は人間のものなんだから良くて適合者と同じ能力でしょ?」


『それは既にあの体が生物という概念を無くしているからだろう、武志の体は属性攻撃の物理攻撃に近いものだと思う、巴嘩殿が木を出せるのと同様なものになっているんだよ‘あれ’は、故にあれは死なない、一種の不老不死に近い存在だ』


経はついていく事すらやめた、経の今の頭で考えたら廃人になるだろう、巴嘩は武志について最終段階に達した、そしてその答えにたどり着いた時、人は絶望というものをかんじる。


「それって、アイツに私達は勝てないって事?」


『いや方法はある。分子単位まで粉々にするか魂玉自体を破壊する、前者の術は見当たらないが後者なら不可能ではない』


「やっと俺にも理解出来た、アイツのあの魂玉をぶっ壊せば良いんだろ、そんなら俺の出番だな……、でも今彼処に行ったら殺されそう」


経が身震いをして次郎と武志の方を見ると圧倒的に次郎が圧してる、間合いをつめさせない攻撃で相手に攻撃するチャンスを与えない、次郎は一瞬の隙をついて上段から振り下ろした、しかし武志は身を反って斬撃を回避して状態を戻す反動で前宙、次郎の刀を地面に突き刺しその上に立つと同時に遠心力で上段から斬り掛る、当たる寸前で水弾で武志の体がボールのように吹き飛ぶ。


「義経、今技名を言わないで属性攻撃したよな、あんなこと出来るのか?」


『属性馮位型なら不可能ではないが、装備型で技名破棄を見たのは初めてだ、次郎殿は相当修行を積んだようだな。しかし見た限りだと武志の方も技名破棄をしてるようだな』


属性攻撃とは魂脈を逆回転させるだけでは如何せん放てるものではない、イメージと言霊が必要となる、その言霊を破棄してるのだからかなりの集中力をようする、それを戦闘の最中、しかもあれだけの状況でやる次郎の能力は桁違いだ。

次郎は吹き飛んだ武志を追って行った、武志は刀を地面に叩き付けてその反動で体を浮かして体制を立て直す、武志が地に足を着くのと同時に次郎の間髪つかせぬ連撃がはいる、武志はまたもや防戦一方となる、しかし武志の足が徐々に凍っていき動かなくなった、止まったと同時に武志の首を斬り落としバックステップで間合いをとる、武志の首が生えてくるのを全員が確認し絶望が増す。


「俺がお前ごときに本気を出さなきゃいけなくなるなんて、俺も落ちぶれたな」


「大丈夫だ、お前は落ちぶれてない、むしろ強くなっている、しかし俺の方が強くなっている、ただそれだけの話だ」


「なんか俺が既に本気を出したような口ぶりだね、そうだと思ってたなら残念だよ、これから本気だよ」


そういうと次郎は刀を背中に当てて鞘に戻した、そして次郎の魂脈の流れが前にも増して速まり刀が凍りついた、辺り一面は冷気に覆われてきた、次郎の足元はすでに凍っている。


「死ぬ前に目に焼き付けとけ。小次郎!魂玉段階弐式!」

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