エピローグ
「王様、私と愛の契を!」
右で王に誘惑をかける四奈。
「王様!僕と勝負しろ!」
左で王の腕を引っ張る総羅。
「王様、僕達また旅に出るから」
「王様、お留守番よろしくね」
王に留守番を任せる信侍と謙恋。
「王様、タバコが無いよ」
「王様、酒も切れた」
「王様、新聞どこにやった?」
王をパシリに使おうとする次郎と勇治と龍奴。
「王様、私に巴嘩さんを下さい」
王に結婚の許しを乞う歳那。
「王様、洗濯手伝って」
王に洗濯干しを要求する巴嘩。
「王様、私のプリン食べました?」
王に疑惑をかける晴季。
そして…………。
「テメェら!王様ってのは何だ!?テメェらのお守りの事を言うのか!?」
ついに限界に達した王こと経、王になって仲間が増えたが要求も増えた、皆は経の事をパシリとしか思っていない。
「経ちゃん良いじゃない、皆といれるのも今日で最後なのよ」
そう、経達はそれぞれの道へ、次郎と晴季は同棲、龍奴と四奈は異端退治の旅、勇治と歳那と総羅は強い者を探して旅。
そして経と巴嘩は休学してた学校へ、戦いが終りそれぞれの道を進む事にした。
「でも勇治達がいるのはおかしいだろ」
「俺に住む所ねぇもん」
「私は巴嘩さんがいれば何処へでも行きます」
「しょ〜う〜ぶ〜」
この3人もそれぞれの理由があって居候している、経は口では拒否しているが、寂しさを隠してる面もあった。
「経はどうするんだ?クソみたいに王様でもやるのか?」
「王の力は捨てる事にした、この力がもし信征みたいに渡ったらまた不毛な戦いが増える、それなら俺で力自体を抹消する」
「そんな事させないわよ」
経の首元には小刀、そしてそれを使っているのは秀美、誰もが気付かなかった、しかし経は顔色一つ変えずに座っている。
「信征の敵討ちか?」
「そうよ、貴方を殺して私も死ぬ、それが信征様への最期の服従の証」
「じゃあ殺せよ」
「潔いわね」
龍奴が一歩前に出たが経の首元に小刀を強く押し付けられ止まった、経の口角が上がっているが誰もその意図は分からない。
秀美は小刀を振り抜いた、経の首は床に転がり全員の顔が青ざめる。
「アハ、ア、アハハハハハハハハハ!!」
龍奴が怒りに満ちた表情で秀美の胸ぐらを掴んだ、秀美は狂ったように笑っている。
「龍奴、そこまでにしとけよ、巴嘩、もう良いだろ」
「そうね」
どこからともなく声が聞こえ、巴嘩が指をパチンと鳴らすと経の首と体が桜の花びらと化した、そして奥から経が笑いながら出てきた。
「残念だったね、ホンモノはコッチ、それは巴嘩が作ったダミー」
「騙したのね!?」
「当然、素直に殺されるバカが何処にいる」
経は秀美の手から小刀を取り上げ手で遊ぶ、そして秀美の襟元を掴み顔を近付けた。
「残念だね、俺の前に現れなかった見逃してあげたのに、頭が悪かったね、バイバイ」
経は秀美から魂玉だけを取り出した、秀美はその場に意識を失って倒れ、魂玉と魂玉に関する全ての記憶を失った、信征に対する気持ちと共に。
次の日、勇治達は経達が起きる前に出ていっていた、置き手紙だけを残して。
《世話になった》
この一言だけを残して、そして次郎と晴季は荷物をまとめて出る準備は出来ている、晴季は抑えきれずに泣き出した。
「さ、さようなら!絶対、絶対に忘れませんから」
「バイバイ経、落ち着いたら連絡するよ」
「分かった、いつでも遊びに来いよ」
「はいよ、晴季ちゃん行こう」
晴季は一礼して出ていった、次郎は指にタバコを挟み手を上げるだけの挨拶で。
そしてそれを追うように龍奴と四奈が出る準備をした、荷物はなく手ぶら。
「荷物は?」
「クソ邪魔になるだけだ」
「経さま、巴嘩ちゃんに変なことしちゃだめよ」
「大丈夫、経ちゃんにそんな度胸ないから」
経以外は大爆笑、そして四奈は大きく手を振りながら、龍奴は何もせずに出ていった。
玄関に残された二人、いつもうるさかった家が秒針の音が聞こえるくらい静まりかえっている。
「みんないなくなっちゃったね」
「いつか会えるよ」
「じゃあ経ちゃん、勉強だよ、試験で受かんないと留年決定なんだから」
「分かったから手を引っ張るな」
元に戻ったようで変わった世界、異端は尽きないが適合者同士の争いは無くなった、幾つもの屍を踏み越えて。
経達の望んだ世界が造り上げられた。
END
最終回です!かなり長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂いてありがとうございます。
次回作は只今執筆中です、この作品よりも更に良い作品を作ります、どうかそちらも読んで頂けたら光栄です。
コメント等を頂けると次回作の良い材料になります、お願いします。