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第二陣

一瞬にして経の前まで移動してきたゴツイ男もとい四聖獣の異名をもつ‘白虎’、経の目には確り捉えられていた、相手のスピードも先ほどまでいた場所が陥没してる事も、その時察した、一撃でも喰らおうものなら致命傷となるだろう。


「スゲェ脚力。でも……遅い」


「随分な自信だな、その自信が何時まで続く事やら。俺の武者魂玉は‘近藤勇’、お前は源義経と見た」


「正解。逃がせって言っても逃してもらえなそうだし、殺るんでしょ?」


「分かってるじゃねぇか!!」


白虎は大きく跳び上がった、地面はヒビ割れ脚力の強さを物語る、白虎は爪を出し経に切りかかって来た、経は軽々と避け背中をとった。


「遅いって言っただろ」


足が震えてるのを抑えながら相手を挑発する、そして右手で斬り掛ろうとするが地面が隆起してそれを阻む、経は亜音速の速さで20mほど離れた、その時に完全に理解したからだ、万が一にも勝てない事に。


「(最悪だ、ただでさえ強いのに属性が‘石’かよ、勝てる気がしねぇ)」


「気付いたか、そう俺の属性は‘石’、そしてお前は‘風’、勝てると思うか?いや勝てねぇ、……残念だったな」


「やぁぁぁぁ!!波!」


経は右手を上段から振り下ろし左手を下段から振り上げた、その瞬間、切っ先から風の刃が発せられ白虎に襲い掛る、しかし前と同じように地面が隆起してそれを防ぐ。


「無理だよ……!」


白虎が上を見ると頭を下にして跳んでる経がいた、経は刀を地面に平行にして高速回転をした、その瞬間竜巻が起きた。


鎌異太刀かまいたち!」


白虎の動きを封じることは出来るが切り裂く事は出来ない、それが属性の影響だ、経は巴嘩の方を見ると根が砕けて巴嘩が脅えてるのが理解出来た、経は白虎を蹴り体制を崩した。


突風豪波とっぷうごうは!」


「ぬ!うわぁぁ!」


白虎を30mほど飛ばして体勢を崩した、目的は攻撃じゃない、時間稼ぎだ。







巴嘩は頭の先から足の指先に至るまで‘死’を覚悟していた、この状況から自分が生き残る方法は無い、歳那は巴嘩の顎を持ち上げ顔を近付けて舐め回すように見た、巴嘩は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた


「美しい、何と美しいのだろう、その恐怖と絶望に歪んだその顔、生気を無くした虚ろな瞳、全てを私の……」


「波!」


歳那目がけて風の刃が飛んで来た、歳那は避けて目をやると経がいた、経は一瞬で巴嘩の前に行き歳那の前に立ち憚る。


「巴嘩、大丈夫か?」


「……経、ありがとう」


いつの間にか白虎は歳那の所にいた、経はまともに殺り合って勝てる相手じゃないのも理解していたし、巴嘩が立っているだけでやっということにも気づいてた


「自ら死に行くか、一人で逃げていれば生き延びれただろ」


「相手を助けるのには2種類あるんだよ、一つはまとめて相手に出来る力を持ってる場合、もう一つは……、風砂ふうしゃ!」


強い竜巻が起き辺り一面が砂塵に包まれ視界ゼロとなった、歳那は水をまき散らして砂塵をおさめた、そこには経と巴嘩の姿は無かった、二人は魂玉に戻し考えた


「勇治さん、逃げられましたね」


「そうだな、またあのお方に怒られるな」


「でも良いですよ。巴嘩さん、もっと強く、もっと美しくなって下さい、もっと私をゾクゾクさせてください」


白虎こと勇治が大声を張り上げて笑っている、歳那は仕留められなかった事を悔いるのではなく次への期待を抱いてる


「勇治さんも楽しそうですね?」


「分かるか!?油断してたとはいえ、風に圧されていた、あんな強い奴が‘我等’以外にいるとは、楽しみだ!」


「あのお方の読みは正しかったようですね」


二人は意気揚々と帰って行った、戦った後は戦争を物語るほどに地形を変えて、残ったのは異端のミイラだけ。




経と巴嘩は経の家にいた、巴嘩は気絶して経のベッドで寝てる、その横で悔しさを隠しきれない経がいた、ベッドに寄りかかって天井だけを見つめている


『経殿、落ち込むな、今回は相手が悪すぎた、誰も怪我をしてないだけで良しとしよう』


「俺って弱いな、強くなりてぇ、もっともっと」


『経殿は強い、だが相手が怪物だったんだ、それに相手が石で無ければ勝てた』


「でも……」


「経ちゃんは強かったよ」


巴嘩が起きてたらしい、経の肩に手を当てて微笑んでいた、経は相変わらず天井を見つめたままだった


「経ちゃんがいなかったら私死んでたよ、全部経ちゃんのお陰だよ、だから落ち込まないで」


「でも、俺が強ければ巴嘩を危険な目にあわせずに済んだ」


『経殿、強くなるには悔いてるだけではダメだ、次を見ることも強くなるには必要だ、殴られたら蹴れば良い、蹴られたら斬れば良い、斬られたら殺せ』


声だけだけど経は義経の凄みが分かった、そして義経の言ってる意味を理解した。


「(俺は生きてる、生きてる限りアイツらを殺すチャンスはある、次は勝つ)」


経の折れかけた心は義経によって繋ぎ止められた、巴嘩は経の背中を見つめながら自分の無力さを感じていた、しかし巴嘩の心も折れてはいなかった。


「義経、何で適合者と異端が一緒にいたんだ?しかも適合者が異端を操ってるようにも思えた、何か適合者を呼び出すように。戦争でもおっぱじめるつもりか?」


『経殿の推理は間違っていないだろう、異端がどれだけ束になってもある程度の適合者には意味がない。それにあの二人、我らが着いた時不敵に笑っていた、恐らく目当ては経殿であろう。そして目的だ、ココからは憶測に過ぎないが、天下太平を試みている魂玉がいるだろう、夢を叶えられずに死に大きな影響力を持ったもの、もう分かったであろう』


経は信じたくなかった、今の世界を崩しかねない事だった、そして義経が上げた条件が一致して、その人物なら納得出来る奴が一人いた、それは……


「織田信長」


『正解、憶測に過ぎないが信長が戦争を起こそうとしてる』


「でも何で俺なんだよ!?義経の推理だと俺は狙われてるんだろ!?」


『しかも組織単位でだ、それは経殿が王に一番近い存在だからだ』


経その‘王’というものに嫌気がさしていた、経は‘王’という存在自体を良く理解していなかった、それ故に義経が言うことを理解していなかった。


「その‘王’ってやつなんだけどさ、何それ?」


『これで152回目だ。‘王’とは全ての武者魂玉を統治する存在、魂玉の天下太平を行う者だ。今日の者達が行おうとしてるのは世の中を自らの手に収めようとしている、だから魂玉を統治されては困るんだ、反乱分子となりうる存在は排除するつもりなのであろう』


経はいつものように分かったようなふりをした、義経は半ば諦め気味だ、しかし経も馬鹿ではない、何か大きな事が起きようとしてるのは本能で気づいていた。


「経ちゃん、私も頑張るから」


「否が応でも避けられないのか」




この時経が思ってるほど生温いものでは無かった、経が進む道が真紅に染まるとは義経ですら想像できなかった。

近藤勇

新選組局長にして、天然理心流四代目宗主。人の信頼を集める存在で人柄も温厚、しかしそれ故に隊をまとめるのに至らないところがあった。新政府軍に捕まり死刑となる。

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