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第二十二陣

隆徳の魂脈のスピードが更に速まる、殺気と魂脈の流れの反応だけで、息が止まりそうだ。

空気はビリビリと揺れ、二人の体は冷汗が止まらない、全ての気を越えて邪気を放ってるが如く、気自体が意思を持ち、二人に襲いかかってくるような感覚に襲われた。

隆徳の体は鎧が剥がれては再生、剥がれては再生を繰り返している、口からは牙が生えて、二本足から四本足へ、そして唸る様に鳴いた時だった。


「隆盛!状態霊亀!」


隆徳の体は異常なくらい大きくなり、体は完全に亀と化した、甲羅の端はノコギリの刃の様にギザギザで、大きな牙が二本、爪も鋭く地面をエグっている。

二人は見上げながら、呆気にとられ間抜けな顔でそれを眺めている、人間の面影など毛ほど無い、それはさながら…………。


「「ガ〇ラだ」」


二人がボケてるのなどおかまい無しに、隆徳は前足を振り上げて二人に振り下ろした、二人は間一髪で左右に避けるが、手足・頭・尻尾を甲羅に収めて高速回転して二人を吹き飛ばす、何とか魂玉で防いだが派手に転がる。

先に立ち上がったのは経だった、経は立ち上がると大きくジャンプして、隆徳の上まで上がった、甲羅に棍を振り下ろすが全く効かない、隆徳は甲羅に乗ってる経もろとも引っくり返った、経は甲羅の下敷きになり、隆徳は逆さま、龍奴は経を助ける前に隙だらけの隆徳の首元に銃口を突き付けた、しかし隆徳は再びひっくり返り龍奴を払い飛ばす、下にいたハズの経は鋼鉄とダイヤモンドに守られて何とか生きている。

経はとりあえず龍奴の隣に行き、隠れて作戦会議、二人が思ってた以上に強い、しかも攻撃が無茶苦茶だ。


「なんだありゃ」


「Funny過ぎるだろ!何だよあのクソ亀!?」


「キモ過ぎる、もうただの下手物退治じゃねぇかよ、あんなの倒せたらウルトラ〇ンなんかいらないじゃん!」


「とりあえず、アイツを殺す事を考えるぞ」


草の陰に隠れて反応を押し殺しながらの座談会の結果、馬鹿みたいに強い事しか分からなかった。

隆徳は公園の真ん中で待機している、隆徳の我慢にも底がある、地を這って唸るような声が響いた。


「貴様ら、いつまで隠れてるつもりだ?それとも怖くて出てこれないのか?」


二人は抑えて隠れている、そして唸るように笑い始めた、地震の様に地面が揺れる。


「なら良いことを教えてやろう、十子と政音の事だ」


経の顔がひきつる、龍奴は経を押さえながら隆徳に勝つ策を練っていた。


「あの姉妹は馬鹿だな、まあ子供だからしょうがないんだろうが、儂が連れて行く時『経ちゃん、経ちゃん』って二人共泣き叫んでた、でも儂が一言『お父さんとお母さんを生き返らしてやる』って言ったら素直に着いて来やがった。でもまだガキだ、弱くて弱くて、信征様の命令だからしょうがなく鍛えてやったんだが、泣くは泣く、泣き止まない時はぶん殴ったっけな……」

「辞めろ!」


経は立ち上がって隆徳な言葉を遮った、龍奴はまだ隠れ続けて練っている、隆徳は喋るのを辞めようとはしない。


「気絶したら回復してまた鍛えて……」

「辞めろって言ってるだろ!」


「政音の方は殴り過ぎて片目が潰れてな……」

「辞めろよ」


「姉妹の愛って凄いな、何故か十子の方まで潰しだしてよ……」

「頼むから辞めてくれ」


「何回か死にかけたけど何とか今は使い物になるがな」

「うわぁぁぁがぁぁぁぎゃぁぁぁやぁぁぁ!!」


経は頭を押さえて蹲りながら叫び出した、気が狂いそうな声で、頭を地面に打ち付けながら、龍奴の制止をふりきって無言で立ち上がった、目には涙を浮かべて、声は叫び過ぎて渇れている、目は虚ろで何も見てないようだ。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


経は気が狂ったようにひたすらその二文字を唱え続けた、そして経の魂玉が弾け飛んだ、龍奴は危険を感じて遠くに離れる。

隆徳も龍奴も感じていた、経の異常な魂脈の流れの速さに、そして魂玉に呑み込まれるような、魂玉を纏うようなこの感覚、龍奴は最悪の結果を想像した、‘取り付かれる’もしかしたら経の精神が崩壊するのではないか。

経の足元から這うようにダイヤモンドが上がってきた、経は微動だにせずダイヤモンドに呑み込まれてく、経は全身がダイヤモンドに包まれた。

龍奴は取り付かれたと判断した、隆徳も同じだ、隆徳の低く唸るような笑い声が龍奴の耳には入らない、しかし地響きのような音共に経を包んでたダイヤモンドが砕け散った。















「弁慶!魂玉段階終式!金剛武僧こんごうのぶそう!」


龍奴と隆徳は一斉に経を見る、ダイヤモンドが粒子状になり経の周りを舞っている、キラキラと光るダイヤモンドの中から頭から首元にかけて白い布を巻き、武僧の格好をした経が現れてた、肩には身の丈以上の斧が担がれている。

二人はその光景が信じられなかった、装備型が適合者の姿を変えるなど聞いた事がない、しかも弐式より上があることも知らなかった。


「殺す」


それだけ言うと経は地面を蹴った、そのスピードは義経の魂玉の時と変わらない、通常岩の魂玉というのはスピードは速くて亜音速までしかあがらない、しかし今の経は音速、もしかしたら亜光速まで達してるかもしれない。

隆徳は視覚的には捉えられたが反応速度が遅く反撃はできなかった、甲羅に乗っている経の斧は真っ赤に染まり、そのまま甲羅に打ち付けた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


斧は甲羅にめり込み隆徳は苦しんでいる、経は甲羅の1ブロックをそのまま剥がして降りようとした、しかし地面に着く前に尻尾で弾かれる、経は軽々と受け身をとって再び斧を担ぐ。

龍奴は経の隣に来て、もがいてる隆徳を見た。


「経、多分甲羅を剥がした所は軟弱だ、そこで俺が全力でぶちこむ、援護してくれ」


「分かった」


龍奴は跳び上がり背中に乗る、しかし隆徳は回転して龍奴を振り落とそうとする、経は斧を甲羅の端に刺して踏ん張って止めようとするが、そんな簡単に止まるようなものじゃない。


「龍奴!少し踏ん張っててくれ!」


「吐かない程度にな」


経は斧を抜いて、今度はザクザクと次々と甲羅に斧を刺す、そしてある程度切れ目が出来たところで地面に斧を突き刺す。


「金剛槍林・こんごうそうりん・かせ!!」


地面からダイヤモンドが突きだし経が付けた亀裂に突き刺さる、痛み等で止まった隆徳の背中では龍奴が構えていた。

銃口を先程経が剥がした所に向ける、そして魂脈の流れを逆回転させる。


爆砲ばくほう!」


撃った瞬間に反動で龍奴の体が上空に吹っ飛ぶ、龍奴は先程攻撃した所を見るがそれほどのダメージはない、甲羅一枚だけではまだ生身には届かないらしい、龍奴は着地すると横に経が来た。


「どうだった?」


「全然だ、ふざけてやがる、一つ作戦が無くは無いんだが…………」


「何だよ?早く言えよ」


「アイツの口の中に直接ぶちこむ、いくらなんでも中身から撃てば焼き亀になるだろ」


「じゃあ俺が口をこじ開ける、それまで悟られないように適当に挑発しててくれ」


「OK!」


経は隆徳の正面へ、龍奴は後方へ、龍奴はある程度の距離を取りながら撃ち続ける、足元中心に撃って相手の動きを徐々ににぶらせる、しかし尻尾が横から飛んでくる。


「グフッ!」


龍奴の横っ腹を直撃するが、龍奴はそのまま掴んでゼロ距離で射撃する、それなりに効果があるらしく大きな唸り声を上げている。

経は若干口が開いたのを確認してそこに向かって跳ぶ、牙に捕まるが口が閉じてしまい無理矢理こじ開けようとした時だった、前足が上から降ってきて地面に落とされる、肩には爪の傷がありそこから血がとめどなく流れ出す。

龍奴は尻尾につかまっていたがそれがあだとなり地面に何度も打ち付けられる、力がなくなり放してしまい宙に放り出された、地面に落ちると尻尾が降ってくる、まともに腹にくらい激しく吐血する。

経は再び跳び上がる、今度は牙目がけてではなく頭めがけて、頭の上に乗ると大きく振り被った。


「これは政音の分だ!」


右目を斧で潰した、同じように左目も潰す、一旦下に降りて口が開いたのを見計らい口の中に飛込んだ、斧をつっかえ棒にして口を閉じれないようにした。


「龍奴!来い!」


龍奴は骨折だらけの体を無理矢理起こして隆徳の口の中に飛込んだ、龍奴は銃口を喉の奥に向ける、魂脈の流れを高速で逆回転させた。


「うわぁぁぁ!爆砲連弾!!」


物凄い爆発の連弾が隆徳の口ので起こる、経は斧を手で支えて片足で龍奴が飛ばない様に押さえる、そして目の前が明るくなって地面に叩き落とされる、首と胴体は爆発で千切れ、隆徳の頭だけが吹っ飛んだ。

二人は頭という筒の中で喉とい窓から胴体だけの隆徳を見上げた、別れた体と頭は同じタイミングで砂と化す、二人は砂山の中から頭だけをだして更に大きい砂山をみる。


「勝ったよな?」


「嘘っぽいけど、クソクソ大勝利だな」


「なにそれ?」


「別に。ってか帰れるか?」


「やられたのは鎖骨だけだからなんとか」


「じゃあ送って行ってくれない?俺もう歩けねぇ、内蔵も一つくらい逝ってそうだし」


「血が付くけど我慢しろよ。後、安全運転出来るほどピンピンしてないから」


そういって経は砂山からでる、龍奴を砂山から引きずり出して肩に担ぎ、その場から消える。

残ったのは大きな砂山と荒れ果てた公園だけ。

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