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第二十一陣

休日なのに大きな公演には人がいない、唯一いるのはデカイ男ただ一人、ボディービルダーのような体つき、髪の毛は無く顔は穏やかだ、雰囲気は悪くないが近寄りたくないタイプ、近寄ってはいけないようなタイプ、それが隆徳。

龍奴は動物園で下手物を見たような反応をしえてる、しかし経はうつ向いて、伸ばした腕の拳は強く握られ、小さく震えている。

それは殺気に変わり、普通の人間なら正気を失うくらいだ、強く握り過ぎたせいか手には血がにじんでいる。

血は滴り落ちて、経の足元を着実に紅く染めている、龍奴は恐る恐る経に声をかけた。


「おい、どうした?おかしいぞ」


「うるさい!!」


経は腕を横に振りながら龍奴の言葉を遮った、その時に血は筋になって飛び散る。

龍奴でも恐れをなす程の殺気を放っている、そこにいるのは鬼神と化した経だった。


「アイツは、………アイツは!俺、…俺と巴嘩の大事な人を奪った!」


経が勢いよく指を指すと再び血が舞い散る、既に手は真っ赤に染まり、手の平には爪の跡が痛い程残ってる。


「十子ちゃんと正音をなんで奪った!?テメェは俺が殺す!」


「儂は奪っちゃいない、あの子達が自ら望んだ、それだけだ、貴様につべこべ言われる筋合いはない」


「わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


経は頭を両手で押さえてその場に崩れ落ちた、そして上半身を大きく振りながら叫び続ける。

後ろに大きく反った状態で停止した、腕を力なくブランと落とし立ち上がる。

急に魂脈の流れが速まる、経は右腕を頭の少し上まで上げ、下を向いたまま体の外で手を開く、その下は光って光が渦を巻く、地面からはダイヤモンドが隆起して、光が乱反射する。


「弁慶、魂玉段階弐式、金剛棍砕こんごうこんさい


経の右手から地面にかけて大きな棍が現れた、太い部分には刺がついている、ダイヤモンドが光を取り込み乱反射して、発光してるように見える、経は肩に魂玉を担いで、左手を地面について構えた。


「正々堂々なんて関係ない、お前さえ死ねば俺は満足だ」


「なら貴様の願いは叶えられそうにない、儂が死ぬなど有り得ん」


隆徳は魂脈の流れを急速に速める、龍奴も慌てて速めた、隆徳の流れを感じて龍奴はいつも以上に速くする。

先に開放したのは龍奴の方だった、地面は燃えて龍奴のジーンズの裾が焦げ出した、腕を両側に大きく広げるて手を開く、手の周りには火の粉が舞う、火の粉が手の平に集まり爆発が起こった。


「龍馬!魂玉段階弐式!砲散火千ほうさんひち!」


爆発の煙の中から現れたのは真っ赤な二つのショットガン、普通よりは小型で二丁拳銃のタメのような物。

隆徳が開放する前に経は飛び出していた、右手だけで握ってたのを両手で持つ、そして背中に添わして、体全体で振り下ろした。


「隆盛、状態玄武」


隆徳は経が振り下ろす直前に開放した。

西郷隆盛、幕末で倒幕を掲げた志士の一人、薩摩藩(現在の鹿児島県)の出身、藩の実権を握ってた者と対立して2度遠島処分を受けた、しかし大久保利通の力により藩政に復帰、禁門の変や長州征伐で活躍した。

隆徳の周りは土煙で包まれて隆徳は見えない、しかし経の魂玉は完全に振り下ろされてない、経は地面を蹴って離れ、再び担いで構えた。

煙が晴れると無傷の隆徳がそこには立っていた、隆徳の体がおかしい、顔だけは出ていて、他は亀の甲羅のような木で全てが覆われている、指先も足先も全てが覆われていて、まるで鎧を纏っているかのようだ。


「それっきしで儂を倒せるとでも思ったか?この甲羅は全て魂玉だ、それだけ言えば分かるだろ」


魂玉というものは完全物質、しかし本来の属性は放棄出来ないし、経の弁慶の魂玉なら破壊出来る。


「最高にCOOLな魂玉だな、でも今言った事がHellへの道しるべだ!」


ハイテンションになった龍奴はショットガンを乱射した、散弾するため避けるのは難しい、しかも相手は‘木’、こちらは‘火’、魂玉相手でもその上下関係は変わらない。

龍奴の攻撃は火の弾によるもの、隆徳は木の甲羅、当たれば燃えてしまう、甲羅は体全体を覆っているので体全体が火元となり焼けるのは必然だ。

奴は隆徳の周りの地形が変わる程撃ち続けた、土煙の中から顔を覆いながら隆徳がゆっくり歩いて来る、撃たれて燃えた所は剥がれ落ち、後ろから新しい甲羅が出てくる、思わず龍奴は撃つのを辞めた。


「クソが、Funnyだろ、そんなのありかよ?」


龍奴が撃つのを辞めた瞬間、経は飛び出した、魂玉は真っ赤に光出して、経は両手で棍を持ち、左上から叩き付けようとした時だった、木で防がれ一瞬動きが止まる、隆徳は指の骨を鳴らして拳を作った、経の腹めがけて拳が飛んできたが、隆徳の体ごと吹っ飛んだ、経の目の前には方膝をついてショットガンを両方突き出した龍奴がいた、龍奴は迷わず経の顔を殴る、経は尻餅もついてその場に倒れた。


「何するんだよ!?」


「Cool downしろ!頭に血が昇り過ぎだ!相手は明らかにゼロ距離タイプだ、考えも無しに突っ込んでたら勝てるものも勝てない」


「じゃあどうすれば良いんだよ!?」


龍奴は経に耳打ちをした、経も龍奴に殴られて多少頭の血が抜けたらしい。

経は口角を上げて歯を剥き出しにした、不適な笑を浮かべて龍奴と拳を合わせる。

経は左手を地面に着き、龍奴は照準を合わせた、先に経が飛び出して振り被る、隆徳は左手を前に突き出して、右手を腰のあたりまで引く、経が振り下ろす前に横には龍奴がいた、隆徳はバックステップで避けようとしたが、ダイヤモンドの壁に阻まれて止まる、それと同時に経の振り下ろされた棍が視界いっぱいに広がった、隆徳は両腕でそれを防ぐが、腹に龍奴の銃口が突き付けられている。


「THE END」


龍奴は躊躇なくショットガンを連射した、全てが一点に集中する、ショットガンというのは散弾するために距離を取れば取るほど威力は減る、しかし逆を言えばゼロ距離で撃てば威力は絶大、それを連射したら常人なら跡形も残らないだろう。

隆徳は吐血しながら耐えている、隆徳はダイヤモンドの壁によりダメージは100%自分の体に反映される、ダイヤモンドにヒビが入った瞬間に龍奴は魂脈を逆回転させた。


灼熱炎舞しゃくねつえんぶ!」


炎は隆徳を包んで巻き上がり柱と化した、物凄い音をたてながら炎はだんだん白くなる、白い炎というのは赤い炎よりも青い炎よりも温度が高い、鉄すらも溶かす温度だ。

経はその横で左足を上げて、左手を下、右手を上にして手を付ける、棍をクルクルと回してバッティングフォームを成した。


「4番バッター経、そのバッティングは岩をも砕く、今俺のバッドが快音を響かせる!」


経は隆徳をフルスイグして、吹っ飛ばす、隆徳は火の玉となって飛び、木を何本も折って地面をえぐりながら停まった。


「ホームラン!」


「Very good!名球会入りだな」


ハイタッチをして隆徳の方を見た、隆徳は全く動かない、経と龍奴は死んだと判断して、近寄って隆徳を覗き込んだ。

そこに転がってるのはただの炭、真っ黒になって煙を上げている、辛うじて分かるのはそれが人の形をしている、ただそれだけだ。


「うわぁ、真っ黒だな」


「……………ヤバい」


「はっ?何がだよ、明らかにコレはあのマッチョだろ」


「臭いがおかしい、これは人が焼けた臭いじゃない」


龍奴は炭を踏みつけると、簡単に砕けた、中は肉ではなく木。

いつから変わった、いつから俺達は騙されてた、そんな思考が二人の頭を駆け巡る、しかし答えが出る前に二人の背中に強烈な衝撃が走り、二人はボールのように吹っ飛ぶ。

今まで経と龍奴がいた所には隆徳が立っている、二人は後ろにいる隆徳に全く気付いていなかった、そして後ろから蹴られて、受け身を取れないまま飛ばされていた。


「…………クソが、いつから騙してた?」


龍奴は口から流れる血を手で拭いながら立ち上がった、経も立ち上がり血の混ざったツバを吐き出す。


「属性攻撃をしてからだ」


「やっぱりな、どうりで木の焼け方がレアなわけだ、普通ならアッシュになっても足りないくらいなんだがな」


「しかし儂も危なかった、少々ダメージを喰らいすぎたようだな、遊びは終わりにしよう、殺し合いだ」


「テメェはいちいちムカつく奴だな、二対一の時点でテメェの負けは決まってんだよ!」


飛び出そうとした経の肩を龍奴が掴んで制止した、龍奴は睨み付ける経を無視して耳打ちをする。


「それホントか?」


「本当だ、俺の理論が間違ってなきゃな」


「龍奴を信じるよ」


経は棍を地面に突き立てた、龍奴は手を前に突き出して、経の魂玉に手の平を向ける、手の平から炎が出て魂玉に当たる、龍奴の火がなくなっても経の魂玉は燃えている。

隆徳はそれをみて目を丸くしている、経と龍奴は感心しながら経の魂玉を眺めた。


「成功だ!」


「流石だな……」


「貴様ら、何をした!?そいつは岩のハズだ、岩が燃えるわけないだろ!?」


龍奴はチッチッチッと人指し指を左右に振った、不適な笑を浮かべて上目使いで隆徳を睨む。


「残念ながら経の魂玉はダイヤモンドなんだよ、ダイヤモンドってのは炭素から出来てるんでね。あと火が燃える条件は二つ、炭素と酸素、酸素は空気中に嫌になるほどある、炭素も十分過ぎるくらいだ。これで経の攻撃は格段に上がる、迂濶に受けよう物なら亀の丸焼きになるぞ」


経は棍を右手で地面に水平に突き上げて隆徳に向ける、龍奴は経と背中合わせになり、左手のショットガンを隆徳に向ける。


「擦り潰されたいか………」


「アッシュ(灰)に成りたいか………」


「「どっちか選びな!」」


経は左手でガッツポーズをして、決まったと一言、耳打ちした時に打ち合わせしたらしい。

隆徳は歯茎を露にして怒りを剥き出しにした、地面から隆徳の倍近くありそうな杭が出てきて、隆徳は肩に担ぎそれを投げた、龍奴が横に行き全てを撃ち壊す、屑となり、火の粉となった埃の中から経が出てきた、経は横薙に振るが、隆徳は体制を低くして避けて経を殴った、当たる前に龍奴が拳を撃ち、腕は大きな弧を描き隆徳の背中に当たる。

経は勢い余って後ろまで回った時に、遠心力を殺さずに下から叩き上げる、上空に上がるとその上には龍奴がいた、龍奴はショットガンで隆徳を撃つと勢いよく地面に落ちる、地面に着く前に経が隆徳を突く。

今回は逃げる暇は無く、全てをまともに喰らった、体は人形のように力無く地面に叩き付けられながら、バウンドしながら止まった。


「まだ死ななそうだな」


「アイツクソみたいに頑丈だからな、これくらいで死んだらEasyなんだけどな」


案の定隆徳は立ち上がってきた、先程よりも体はボロボロだが、鎧はすぐに新しいのに変わる、しかし何も無い顔は擦りきれて血が流れている、一回吐血した途端に物凄い殺気を放ち始めた、経と龍奴が今まで感じた殺気が気休めに感じるくらいの殺気、冷汗で体がビショビショになる、息が詰まる程の殺気、心臓を鷲掴みされているかの如く、死の方が楽に感じていた。


「貴様ら!生きて帰れると思うな!血の一滴すらも残さねぇ、儂を傷付けた罪、死を持って償ってもらう!」




















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