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第二十陣

信侍が一通り話終える頃には、経はいびきをかきながら寝ていた、晴季も眠い目を擦っていたので目が真っ赤だ。

無理もない、10分程前に日付が変わったばかりだ。


「もうこんな時間か、まぁこんなものだ、これだけでは相手の力量は分からない、だけど意味が無い訳じゃないと思う、……………そういう事だ君達、頑張れ!」


真面目な顔で経達六人に親指を立てた、全員の頭を疑問符が埋め尽す、今までの話の流れてからいくと信侍と謙恋も一緒に戦うものだと、誰もが疑わなかった。

しかし信侍は戦う気がゼロだ、それに呆気をとられている。


「僕達はまた旅行に行くから、明日には旅立つ、だからこの事は君達に任せる」


「ちょっと待てよ、あんたらはココにいる全員がクソ信征共に殺されても良いのかよ!?コンビニに買い物行くんじゃねぇんだぞ!」


龍奴が椅子から乗り出して怒鳴った、声の大きさに経はビックリして起き上がり辺りを見回す、龍奴は信侍の前まで行って胸ぐらを掴んで立たせる。


「クソ旅行と息子の命のどっちが大事だ!?」


「これくらいで死ぬような息子に育てた憶えはない。第一死ぬのを前提で行くなら僕達がいなくても良いだろ?自殺志願者を助ける程、僕はお人好しじゃない」


信侍は龍奴の手を払い除け、龍奴に背を向ける、龍奴は歯を剥き出しにし、信侍に怒りをぶつけた。


「クソ野郎が!!!」


肩を掴んで信侍を180度回してストレートを入れた、しかし龍奴の拳は空を切り、龍奴は顎を持たれ体が宙に浮いた。


「暴力は良くないな」


信侍はそのまま龍奴を投げ飛ばした、すかさず経が龍奴をキャッチして信侍を睨む、信侍は今まで以上に真剣な顔付きになり、経に近付いて目線をあわせる。


「お父さん、何でこんな事するんですか?龍奴は何も間違った事は言ってない」


「言わなきゃ分かんないのかな?君達がいると邪魔なんだよ、僕は目の前で殺されかけてる人を見逃せる程、酷い男じゃない、だから君達をかばいながら戦ってたら成せることも成せないんだよ、僕達二人の方が100倍マシだ」


「つまり俺達は…………」


「足手まといなんだよ、雑魚が意気がってられるようなおままごとじゃない、これは本気の殺し合いだ。5人殺しただぁ?みんな雑魚じゃねぇか、マシなのは半哉だけ、しかも相討ち、そんなもんで潰せたら今頃他の適合者が潰してる。身のほどをわきまえろ!」


信侍は怒鳴って部屋を出て行った、後を追うようにして謙恋が経達に会釈をして出る。

経は二人が出ると、龍奴を離して壁を思いっきり蹴った。




信侍と謙恋は自室にいる、並ぶように二人のベッドがあり、左が信侍、右が謙恋だ。

信侍はベッドに腰掛け頭を抱えた、謙恋はそっと信侍の隣に行って信侍の肩に手を置く。


「謙恋ちゃん、憎まれるのって、楽じゃないんだな」


「そうですね。でもあれくらいで辞めるような子達には見えないのですが?」


謙恋は信侍の顔を覗き込む、信侍は笑って謙恋を見た、信侍はベッドに仰向けになって、頭の後ろで手を組んだ。


「まだあの子達は弱い、でも強くなる」


「もっとヤル気を出させるタメにあんな芝居を打ったのですか?」


「そう、彼らはまだまだ強くなる、もしかしたら僕達以上の器かもしれない。でも今はまだサナギだ、大きな翼を付けるかどうかは彼ら次第、サナギのまま殺したら信征の思う壺だ。ココから先は誰の手も借りずに進むしかない、自分でしか開けられない扉なんだよ、扉を開ける鍵は‘心’にある」




経は自分の親に苛立ちを感じていた、情報を仕入れるだけ仕入れて自分達は戦うなと言われた事が、そして信侍達は戦わない事に。


「龍奴、お父さんが変な事言ってゴメン」


「お前は悪くない、それより今は俺達だけでどうやって信征達に対抗するかだ、信侍さんが言う事も一理ある、今の俺らじゃ戦っても無駄死にだ」


ここにいる全員がそれを分かっていた、次郎と巴嘩は勇治と歳那に半殺しにされ、経は総羅と良くて相討ち、そんな奴らが沢山いる中に自分達だけで勝てるのか、しかも相手には四聖獣の内の3人がいる、かなり絶望的状態だ。

この日は遅かったので全員そのまま就寝した、次の日、一番に起きた巴嘩よりも早く、信侍と謙恋はいなかった。




いつもと同じ朝に、いつもと同じ席の配置、でも誰一人として喋ろうとはしなかった。

龍奴と経は食事が終わると二人同時に家を出た、二人で話し合った訳でもなく、ただの偶然である。

次郎は女性陣が風呂に入ったので、一人でテレビを見ながらタバコを吸っている。

この戦いに本当に晴季を巻き込んで良いのか、ホントに自分は勝てるのか、そんな事を次郎は考えていた。


「あぁ、何か嫌になるよな」










経と龍奴は何をするではなく、散歩をしていた、何も話さずに、目的地も何も無い。

しかしそんな二人の沈黙を切り裂くように反応が現れた、龍奴は頭を掻きながら嫌々に経を見る、経はため息をついた。


「クソタイミングの悪い奴だな」


「弱ければ良いんだけどな」


「そりゃないだろ、なんかクソ見つけて欲しそうだぞ」


「あえてシカトする」


「それクソ最高、でもさ、急に現れたってことはクソ信征のお仲間だろ」


「頭良いね」


「バ〜カ、今までとりあえず戦ってたのかよ」


経は黙って、頬を掻きながら明後日の方を向いた、龍奴は口をポカンと開けて、経の横顔を見つめる。


「普通の適合者だったらどうするんだよ?」


「この街は俺と巴嘩くらいだから、来るのは全員敵、みたいな?」


「馬鹿の見本だな。まぁ、とりあえずいきなり現れるなんて芸が出来るのは、クソ信征の仲間以外にありえない、まぁ俺らが察知出来ないスピードなら別だけどな」


二人は笑いながら歩いてる、反応の事をほったらかしで話に華が咲く。


「じゃあ行きますか」


「あぁ、クソが、速攻終らせるぞ!」


二人は人に見えない所まで行って、高速で移動した、普通の人間では捉えられないくらいのスピードで。







次郎の周りには女性しかいない、ハーレムに喜ぶほど次郎は飢えてなく、これだけの人数に慣れてる訳でもない。

少し戸惑いつつ、四奈が毎週見てるアニメを見ていた。

左には晴季、右には四奈、下でテーブルに頬杖をついてるのが巴嘩、晴季も楽しんでいるので逃げるに逃げれない。


「巴嘩ちゃん、経遅いね」


「そうね、龍奴もそうだけど、二人で何してるのかな?」


「経は意気がったガキみたいな顔だからな、大人のお姉さんには人気だぞ」


次郎は巴嘩の内を探るように言う、巴嘩は何でもないように見えて、掴んでる机の端がぐちゃぐちゃになってる、木製の机といって強度は並じゃない、握って潰せるような物ではない。


「経ちゃんはおばさんには興味ないよ、……………多分」


「好きな男のタメに戦う健気な少女、おばさんに負ける」


バキンという音と共に机がえぐれる、晴季はオロオロして次郎と巴嘩を交互に見る、次郎は笑顔を崩さない、巴嘩は肩が震えている。


「経ちゃんのタメに戦ってる訳じゃない、私には私の目的がある、それがおじさんのお陰で確かめられた」


「目的って?」


「私と経ちゃんは幼馴染み、でも年上と年下の幼馴染みの姉妹がいたの、その二人には親がいなくて、私達は四人で楽しく過ごしてたの、皆で経ちゃんの家に泊まって。でもある日その二人は変なおじさんに着いて行ったまま帰って来なくなった」


「それが信征達の何の関係が?」


「二人の身体能力は異常だった、今思うと二人は適合者だったのかもしれない。それに、連れて行った男は亀裂に入って行ったの、まだ子供の私達にはそれが異常だとは思えなかった、でも今なら分かる、信征の差し金だって事が」


「巴嘩ちゃんが言ってるのって弥益姉妹の事?」


今までテレビを見ていた四奈が口を挟んだ、巴嘩は苦笑いを浮かべながら四奈を見た。


「そうよ」


「あの二人の写真はやっぱりそうだったんだ」


「写真?」


四奈は穏やかな顔で巴嘩を見る、巴嘩は慌てた中に希望を見い出していた。


「あの二人いつも写真を持ってた、でも見せてくれた事は一回もないの、多分巴嘩ちゃんと経様の写真よ」


巴嘩は笑いながら涙した、幼馴染みはまだ自分達の事を忘れて無かった、でもそれは殺さなければいけない相手が幼馴染みという、悲しみの涙も混じっていた。

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