第十四陣
経と巴嘩と次郎は始めに歳那と勇治と戦った空き地にいた、そこには歳那と勇治ともう一人小さな少年がいた、少年は人指し指をくわえて辺りを見回していた、その光景に経は力が抜けて速めてた魂脈を元に戻してしまった、呆れたように経は少年を見てると目の前に歳那と勇治がいた、経は不覚にも尻餅をついてしまった。
「経、緊張感を持とうよ、死ぬよ」
「だってあのガキ見たら誰でも呆れるだろ、ココは戦場だぞ、そこにガキってさぁ」
「僕はガキじゃ……………」
「ガキだな」
少年こと総羅が経の前に行った瞬間、経が消えて総羅に肩を組んでいた、その場にいたもので反応出来たのは油断故に誰一人としていなかった。
「ムカつく、僕、こいつ殺す」
「おいちょっと待て!経は俺の獲物だぞ、いくら総羅でもそれは出来ねぇ!」
「僕が殺す!!」
総羅の魂脈が一瞬で速まる、経はその魂脈に緊張感を取り戻した、もしかしたら経が今までに戦った中で一番強い敵かもしれない、そしてそこにいる全員の魂脈の流れが速まる。
「総司、三炎天鵡」
総羅は真っ赤な刀を右手で引きずりながら持っていた、刀身には炎の模様が彫られていてそれが本物の炎のように揺らめいている。
沖田総司、新選組の若き天才剣士、新選組で一番隊の隊長を勤めて組を引っ張った、若くして肺結核に侵されて病死。
「義経!疾風双刃!」
「巴!枯葉魅刃!」
「小次郎!神清氷刃!」
「勇!状態白虎!」
経達は手に武器を握り勇治は虎に近付いた、しかし歳那の魂脈の流れが前回のものとは違う、装備型の魂脈の流れではなくこれは……………。
「歳三さん、我の水刃となりて敵を美しく散らせ、目の前に立ちはばかる醜き肢体を華麗なる水氷が蒼く染めるだろう。属性馮位、水の輪廻」
歳那の足元は水浸しになる、前回巴嘩が目にしたのは装備型だった、しかし目の前の歳那は誰が見ても属性馮位型、詠唱をした事からそれは否めないだろう。
「巴嘩さん、不思議そうな顔をしてますね、これでどうですか?トリックが見えましたか?」
歳那の右手に水で出来た刀が現れた、その瞬間巴嘩は左手を頭に置いてため息をついた、そして殺気を発して歳那を睨んだ。
「騙したわね」
「相手に手の内を見せる時は相手を殺す時です、あの時は偵察だったタメに最初から開放してたんですよ、まだ弱かった貴方達は気付きませんでしたけどね」
笑いながら歳那は巴嘩を見た、巴嘩は経に愚痴を聞いて貰おうと思ったが経も次郎も消えていた、そして全ての矛先が歳那に向かった。
「イライラするわね、貴方、ココで死ぬわよ」
「それも一興ですね、美しくなった巴嘩さんに殺されるなら…………、やっぱり嫌ですね、これだけ美しい人は人形にしなければ」
「一々話が長いわね、そんなに喋りたいなら閻魔様に聞いて貰いなさいよ!!」
巴嘩は歳那に右から斬りかかった、歳那は左手に水を物凄い圧力で貯めて防いだ、巴嘩はそのまま左から蹴るが歳那は水となって消えた、歳那は巴嘩の後ろに現れて水が渦巻いてる足で蹴る、巴嘩は草を出してクッションにした。
「また力が増しましたね」
「うるさいわねぇ、貴方なんて串刺しになっちゃえば良いのよ」
巴嘩が服の埃を落としながら言うと歳那の足元から木の根が槍のように突き出して来た、歳那は上空に逃げたがそこには巴嘩がいた。
「セクハラのお礼よ!」
「なっ!?グハッ!」
巴嘩は歳那を思いっきり殴った、歳那は勢い良く落ちるが下に池を作って勢いを殺す、池の中から歳那の手が出てきた、その瞬間上空から氷の矢が降ってきた、とても避けられるような量ではない、巴嘩は魂玉で弾いたがいくつか体に当たった、受け身のとれないまま地面に叩きつけられた、埃とともに血が飛び散る。
「アハッ!」
「少し傷付けてしまいましたがそれくらいはしょうがないですね、少し力だしますよ!」
巴嘩はフラフラになりながら立ち上がると歳那は既に目の前にいた、歳那は素早く殴る、腕に水が渦巻いているために威力が強い、巴嘩は手も足も出せない、しかし巴嘩は体を後ろに反らせて相手の攻撃を目で捉えた瞬間腕を持って下に叩き付ける。
「ガハッ!」
「痛いわね、レディーを殴るなんて」
巴嘩は体を葉で覆い癒す、ある程度癒したところで歳那を見るがそこにはいなかった、後ろを見ると後ろに歳那がいた、歳那の体の周りには水が渦巻いていた。
「少し手を抜き過ぎましたね、相手に失礼ですよね」
「それなら私もね」
歳那は驚いたような表情を浮かべて巴嘩を見る、巴嘩は魂玉を一旦戻して魂脈を速める、その瞬間巴嘩の足元が草花で囲まれた、そしてそれが風で舞い上がると巴嘩の手の周りに桜の花びらが舞始める、徐々に細長く渦を巻き始めて魂脈の流れが速まる。
「巴!魂玉段階弐式、枯雀桜刃!」
巴嘩の右手には桜色の刃が花のように円を描いている、柄は桜の木の枝の模様で見るも美しい魂玉だ、歳那はそれを見て口を開けて拍手をした、巴嘩は構えた。
「貴方はココで終りね」
「なんとも美しい魂玉ですね、桜の花が咲いたようだ、………………次は散る番ですね」
歳那が手を前に差し出すと巴嘩の足元に水が渦巻き始めた、そして水が柱のように渦巻いて巴嘩を取り囲む、しかし水の柱から巴嘩の魂玉が突き出し、横薙に払うと水が消えた、巴嘩が一歩踏み出した瞬間に足元から無数の根の槍が出てきた、歳那は巴嘩に注意をしながら跳び上がる、しかし巴嘩は動かずに根の槍が伸びてきて歳那を襲う、根の槍が歳那に触れようとすると水に触れて凍って砕ける、だが根の槍が納まるところを知らずに歳那を追い続ける、一本の根が歳那の足に絡まると生きてるかのように歳那を地面に叩きつける、他の根の槍は歳那目がけて突き刺しにする。
「まだ生きてるんでしょ」
「分かりましたか?」
根がどんどん腐食していき崩れ落ちた、そこからは埃まみれの歳那が出てくる、歳那の周りに水が渦巻き埃は流れた。
「強くなりましたね、しかしまだまだ私には到底及びません」
歳那が魂玉の流れを速めると冷気が辺りにたちこめる。
「凍えし五月雨」
巴嘩は氷の矢に包囲されていた、横も前も後ろも上空も全てに矢があり逃げ場がない、しかし巴嘩はその中でも顔色一つ変えずにそれらを見渡す。
「降り注げ」
歳那の合図と共に氷の矢が降り注ぐ、それら全てが巴嘩に刺さった、一本も逃す事なく‘出芽した巴嘩’に、本物の巴嘩がパチンと指を鳴らすと巴嘩達は桜の花びらと化して消えた、氷の矢は地面に落ち、桜の花びらは舞い上がる、辺り一面に桜が舞乱れ地面染める。
「あぁ、美しい、巴嘩さんは私を全てにおいて満足させてくれます、最高に楽しいですよ」
「別に貴方を満足させるタメにやってる訳じゃないわよ、貴方を殺すタメにやってるの、死に目くらいは美しい方が良いでしょ?」
「私が死ぬですって?有り得ませんね、これくらいで死んでいたら信征様に申し訳ない」
「なら今のうちに謝っときなさいよ、跡形もなく殺してあげるから」
そういうと巴嘩は魂玉を地面に突き刺した、そして地面に完全に押し込んだ瞬間だった、辺り一面の地面から巴嘩の魂玉が出てきた、歳那はギリギリのところで横に避けて無傷に終わった、そして高々に笑う。
「これで私を殺すですって!?笑わせないで下さい、もしかして笑い死にって事ですか!?だとしたら私は危ないですね!」
「笑い死にも良いかもね、でもこれで終りな訳無いでしょ。舞散れ、花達よ!」
巴嘩が地面に手を触れて叫ぶと魂玉の刃が舞散り空へと舞い上がる、そして巴嘩が立ち上がり、両手を前に出して手を広げる。
「桜の花びら達よ、その桜色の美しい身を、朱に染めよ!桜吹雪・阿修羅の舞!」
桜の刃は歳那目がけて一斉に飛んでくる、歳那は避けきれないと判断したのか渦で体を守る、いくつか弾き落としたが水を切り裂き歳那の体も切り裂く、そして渦が無くなり歳那が姿を現すと地面に落ちた桜の刃が歳那を襲う、歳那は肩膝をついてその場に倒れた、歳那の周りは血の付いた刃が散っていて真っ赤だ、巴嘩は近くにあった柄を掴むとそれ以外は消えた、巴嘩の持った柄には刃が生えて来た。
「これで死んだでしょ、綺麗に死ねて良かったわね」
巴嘩は歳那に背を向けて帰ろうとした時だった、背中に衝撃が走りそこから血が吹き出す、何かと思って後ろを見ると歳那がフラフラになりながら立ち上がった。
「貴方は………、私の逆鱗に、ふ、触れました、死んで、貰います、…………跡形もなく」
「……えっ?………な、何で、立てるの?」
その瞬間歳那の魂脈の流れがさっきの倍以上になり周りが冷気で包まれた、そして歳那がゆっくり巴嘩に向かって歩いて来た、巴嘩が構えた瞬間に地面から氷の刺が一本出てきて巴嘩の右肩を貫いた、氷が消えて傷口から血が溢れてきた、巴嘩は魂脈を木の根で手に巻き付けと左手で傷口を押さえた。
再び刺が突きだし今度は左足太股を貫く、肩膝をついて息を荒くしてる巴嘩の右の脇腹を刺が貫く、そして巴嘩は力無くその場に倒れた、地面は血で朱に染まり巴嘩の呼吸は弱々しくなっていった。
歳那が巴嘩に10m程の所にまで歩いて来た時だった、黒い大きな球体が現れるてそれが弾け飛ぶと中からは信征出てきた、信征は巴嘩を見た後に歳那を見る。
「撤収だ、アイツらが帰って来た」
「信征様!せめて巴嘩さんを殺してからでも!」
「私に逆らうのか?」
信征が殺気のこもった声で静かに言った、歳那は肩をすくめて後退する、信征は巴嘩を見下した。
「それにこのままでもコイツは死ぬ、もしくはもう死んでるかもな」
信征がそういうと歳那は亀裂に消えて行った、信征は移動して目の前から消える、巴嘩は体から流れる血の量に死を感じた。
「…………助かった……………の、かな?…………………」