第九陣
経と巴嘩の修行風景が変わった、巴嘩は次郎との仕合、経は四奈による地獄の目隠し球体避け、次郎の時とは違い球体が直線的ではなくイレギュラーにとんでくる、しかも途中で分裂したり形を変えるため一筋縄ではいかない、巴嘩と次郎は次郎が仕合一つに集中すれば良いため次郎の技のキレが変わった、経も巴嘩も最初は苦戦していたがなんとかついていけるレベルまで達した。
「キャハハハ!経さまもっともっと鳴いてよ!死んじゃうよ!?」
“ジリリリリ!!”
頭に響くような金属音が廃屋に響く、その瞬間全員の動きが止まる、経はその場に倒れこむ、巴嘩は一礼してその場に座った。
「終わっちゃった。神の祝福」
四奈の白い球体が経と巴嘩を包んで離れると怪我などがなくなっている、聖による回復だ、巴嘩のものより精度が高く回復時の外からの攻撃を防げる優れ物だ。
「あぁ、死ぬかと思った、四奈少しは手加減しろよ」
「したよ、経さまの今の状態で本気出したらチリになっちゃうわよ、でも徐々にスピード上げてったけどね」
「いやぁ、二人共凄いよ、成長のペースが異常なくらいだよ、巴嘩ちゃんは明日から次の段階だから。四奈ちゃん、経の場合は徐々にスピード上げてって、フェイントとかも混ぜてね」
「了解です!」
四奈は満面の笑で敬礼するがヨダレがたれている、その四奈の顔に経は恐怖を通り越して死を感じた、確実にいつか殺されるであろうこの修行、経は遺書の書き方を必死に考えていた。
「今日は土曜だしどっか行こうよ、四奈ちゃんもいつまでも巴嘩ちゃんの服じゃ嫌だろ?」
「わ〜い!お洋服買って貰えるの!?」
「ちょっと待て、次郎にも巴嘩にも金は出せないだろ?」
次郎と巴嘩と四奈は経を睨んで笑を浮かべた、経は馬鹿なりに言わんとしてることが分かったらしい。
「俺が払うの?」
「他に誰がいるの?」
「経ちゃんのものなんだから経ちゃんが面倒を見るのは当たり前でしょ?」
「そうだよご主人様!い〜っぱい買ってね、お洋服」
「服を買うのは良いけど四奈が俺の物って件は有り得ないだろ、俺にそんな趣味は無いし、受け入れる気もない」
「大丈夫だよ!私の心も体も経さまのものだから、なんなら今から既成事実を作っても良いんだよ?」
四奈は経にキスを迫るように抱き締めている、その間も経は巴嘩の殺気を背に受けていた。
経達は電車に乗って10分ほどの街にいた、服などを揃えるには丁度良いデパートがあるからだ、女の子の物を買うということで経と次郎は別行動、四奈と巴嘩は必要な物を揃えに回っていた。
「下着は買ったし、後は服だね、どんな服が良いの?経ちゃんのお金だからお店ごと買っても良いわよ」
四奈は巴嘩の手を引っ張りながら目的地まで歩いていった、他人から見たら仲の良い姉妹に見えるだろう、とても本気で殺し合いをした間柄には見えない。
四奈が巴嘩を連れて行ったのは不思議な感じの店だった、巴嘩はそのファッションの事をなんというか知っていた、しかし自分がそれに関わるとは思ってもみなかっただろう。
「……ロリータ?」
「そう!私大好きなんだ!どれでも買って良いんだよね?」
「良いよ。行ってらっしゃい」
四奈は無邪気に走って行った、籠を引きずるように持って次々に服を投げ入れる、そして一つが埋まると他の籠を持ってきて服を投げ入れる、巴嘩は呆れて見ていた、ある程度服を入れると四奈が巴嘩の元に走って来た。
「ねぇ、他のお店も回って良い?」
「良いよ、経ちゃんお金持ちだから気にしなくても大丈夫」
巴嘩は四奈の頭に手を置きながら同じ目線で話した、四奈は巴嘩の手を引いて服の会計をした、店員も同じくロリータで巴嘩は少し居心地が悪かった。
「47万2千円なります」
「「……高い」」
あまりの値段に二人は唖然、そして四奈が不安そうな顔で巴嘩を見る、巴嘩は苦笑いしながら経から借りてる財布を開いた、そこには福沢諭吉が二人しかいなかった、しかし問題はカードだ、一枚だけはいってる黒いカード、それを見た瞬間巴嘩がフリーズした、四奈は不安そうに巴嘩を覗き込んだ。
「巴嘩ちゃん、お金足りる?」
巴嘩はそ〜っとブラックカードを出してその場に置いた、店員は珍しい物を見るような目で巴嘩が出したカードを見た、そして慣れた手付きで会計をする。
「なにあれ?」
「ブラックカードって言ってね、お金が使い放題になる物」
「ホントに!?じゃあもっと買って良いんだ!」
「そうだよ、私も買っちゃお」
その後二人は普通の女の子では有り得ないような買い物をした、そして持ち帰れない事に気付き経と次郎を呼び出していた、呑気に歩いてきた経と次郎は巴嘩と四奈の荷物の量を見てフリーズした、巴嘩は笑顔で経に財布を返した。
「いくら使ったの?」
「……二人で120万くらい?」
「馬鹿じゃねぇの!?服で120万ってどんだけお嬢様だよ!?」
「経さま起こらないで、お願い……」
うるんだ粒来な瞳で経を上目使いで見る、経はそれにやられて無理矢理納得させられた、四奈は巴嘩の方に向き直って笑顔でコンタクトする。
「経ちゃんと次郎も何か買う?コーディネートしてあげるけど」
「俺はいいや、めんどくさいし着れれば良いんだよ」
「じゃあ俺は買おう。経、着いてこい」
「ちょっと待って!」
巴嘩は二人の手を掴んで制止した、二人を呼んだ理由は値段報告ではない、只の労働力として呼んだんだ、今帰られては女の子二人だけで有り得ない量の荷物を持たなければいけなくなる。
「二人ともこれ運んだら行って良いよ」
「どこに運ぶんだよ?」
「……先に帰ってるから、タクシーに詰め込んじゃえ!」
四奈と巴嘩はタクシーに荷物を積ませてタクシーに乗り込んだ、その間経と次郎は買い物をすることになった、次郎は気に入った服を数着買って終了、経は次郎に任せてベンチに座ってる、次郎が帰ってくるとダルそうに立ち上がる。
「経、行こう」
「それだけで良いの?もっと買っても…………!!」
「経、まさか?」
「こんな時にかったるいな、チャッチャと片付けて帰るぞ」
次郎と経は河川敷にいた、人がいない河川敷だが人以外の禍禍しいものが埋めつくしてた、200体近くの異端だ、経は次郎に荷物を全て持たして臨戦体制に入った。
「かったりぃ」
『そういわずにパパッと片付ける、これくらいなら一振りだろ?』
「振らねぇよ」
経は腕を前に突きだして手の平を敵に向けた、魂脈が逆回転しはじめる、しかし今までの経よりも流れが格段に上がっている、経本人が一番それを実感してた。
「烈波!」
横一閃の真空波が異端を胴を境に斬れた、全てを一撃で倒した事に経が一番驚いている、そして明らかに強くなっている事に喜びを感じていた。
「魂玉を開放しないであれだけの属性攻撃をだすなんて、かなり成長してるよ」
「当たり前だろ、そのうち足元すくわれるぞ」
次郎は笑いながらその場をさっていく、追うようなかたちで経が後についていった、しかし二人は気づいていなかった、異端は群れても10体単位ということに、異端が何体いようが二人には関係ない事なので見逃していたのだろう。
河川敷の上から経と次郎を眺める一人の男がいた、茶色の髪の毛はパーマがかかったミディアム、身長は経より大きいくらいだ、そして男は含み笑いをしながら歩き出した。
「あれは使えそうだな、まだまだクソ以下だけど‘クソ’は使いようだな」
『‘馬鹿’じゃろうが!わざとか?それともマジか?』
「クソが、わざとに決まってるだろ」
男はその場から消え去った。