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第2話:学び始める

「メビス!おはようございます!」


「ごきげんよう、姫様~」


「今日は何か嬉しいことがありましたか?」


「へへ~特にはないですよ~」


ここ数日の質問と学習を経て、ついに――エルネ語を覚え、慣れることができた。


ラニアは朝早くから挨拶しに来て、それだけで嬉しく思っていた。

自分の学習成果を他者と分かち合えるのは、こんなにも楽しいことなのかと、ラニアは感じた。


ちなみに、目の前でラニアの着替えを手伝っているクールな侍女は『メビス』。国王と王妃陛下がラニアに特別に付けた専属侍女で、日常的にラニアの起居を世話している。


メビスは腕が立ち、見識も深い強力な侍女だと聞いている。そのことについて、ラニアは頭の中の過去の記憶からいくらか知っていた。

兄や姉たちとも互角以上の恐ろしい侍女である。しかし、私に対してはとても優しい。


ここ数日、エルネ語を学ぶのもメビスに教えてもらったおかげで、一度聞いただけで理解でき、本当に助かった!こうしてみると……メビスもそんなに怖くはないのかも?

たぶん、私にだけそうなんだろうか?


ラニア本人にとってメビスはとても優しい存在に映っているが、彼女は知らない。ラニア一人にだけ優しくする理由は実は……


メビスはラニア王女のことが好きすぎてほとんど病的なレベルの「ラニアコン」なのである。

ただラニアの前では比較的冷静で穏やかな態度を装っているだけだった。

メビスはひそかにラニアが脱いだ衣類で興奮したり、ラニアの下着や使った食器などを盗んで「聖なるもの」として扱うことさえあった。


もちろん、これはメビス自身以外誰も知らない絶対的な秘密である。


「では姫様、今日のご予定はいかがですか?」


「うーん」


「父上と母上にお声をかけに行き、その後は図書室で少し本を読みます。メビス、その間にお茶とお菓子を用意して図書室に持ってきてくれませんか?」


「承知いたしました、姫様。すぐに準備いたします」


メビスは何でも先回りして用意してくれるので、とても安心できる。専属侍女が側にいてくれるのは本当に便利だ。しかしそうなると、自分で何か用事を見つけなければならない。


だって私はどうしてもじっとしていられないタイプなのだから!

今は十分にのんびり暮らせる条件があるけれど、将来のために有用な知識をもっと読むべきだと思っている。

そう考えている。


「メビス」


「はい、姫様。他に何かご用件は?」


「今日は図書室で一人で本を読むから、メビスは図書室に付き添わなくていいよ。自分のしたいことをしていていいから」


「しかし……」


「これは私の命令だと思ってくれないかな? いい?」


「かしこまりました」


メビスは少しも不満を見せず、一礼して了解を示した。だが、どうやら顔には少し寂しげな表情が浮かんでいるようだった。


(ごめんね、メビス)


(私の将来ののんびり生活計画のため、今は知識と力を蓄える努力をしなければならないの)


「……はい」


その後、身だしなみを整えたラニアは自分の部屋を出て廊下へ向かった。

途中の使用人たちに順に挨拶を交わし、母の寝室の前に到着した……


ラニアはしばらく戸前で立ち尽くし、ノックできなかった。


「……母上」


「この世界での母親……」


緊張して、どう話しかけていいかわからない。前世では両親とあまりコミュニケーションを取っていなかったから……


うーん――逃げないで! 変わることを決めたのではないか、この第一歩から踏み出そう。


短くも長く感じられる思索の末、ラニアはやっと目の前の母上の扉を軽く叩いた。


「どうぞ~」


部屋の中から優しく穏やかな成熟した女性の声が響いた。


「わたし……」


「ラニアです……母上、入ってもよろしいでしょうか?」


突然、扉が開いた。

そしてラニアは温かな抱擁に包まれた。彼女こそラニアの母であり、この国の王妃だった。


優雅で美しい銀の長髪、サファイアのような青い瞳。精巧で華やかなドレスを身にまとい、天使のような気品を持つ美しい女性。


セティシア・リ・イリテリア。

イリテリア王国の王妃陛下である。


「もちろん――」


「私の誇り高き、愛しいラニア~」


「お体の調子はもう戻りましたか? まだどこか具合が悪ければ、必ず言ってくださいね」


本当に美しい人だ。母上はとても綺麗だ。


「はい、もう体のことは大丈夫です。ありがとうございます、母上」


その後、二人は部屋でゆっくりと話し込んだ。

部屋には王妃セティシアがラニアの好きなお菓子と紅茶をたくさん用意していた。


高級なお菓子を見て、ラニアは食欲を刺激された。だってそれらはすべて自分の大好物だったから。

しかしラニアはまだ衝動的に見せびらかすわけにはいかなかった。母上に貴族の礼儀を学んだことを見せつけ、もう以前の自分ではないと証明したかったのだ!


これが変わる第一歩――


「母上がこんなに用意してくださって、本当にありがとうございます。ラニア感謝しております~」


「では、遠慮なく頂きます~」


そしてラニアは標準的な貴族の礼を取り、優雅にスカートを持ち上げて席についた。

お菓子を味わう間も、ラニアは貴族の基準に従って食器を使い、上品にデザートを楽しんだ。


それを見たセティシアは少し驚いた。


「まあ…ラニア、いつの間にこれを覚えたの? 母である私も少し見知らぬ感じがするわ~」


「はい、近ごろメビスに教えていただきました。ラニアは、王族の一員としていつまでもわがままではいけないと思いました。成長しなければならないのです」


「兄や姉、それに母上に心配をかけてしまい、本当に申し訳ありません~」


「わたし…『第七王女』という身分にふさわしい人になるために努力します!」


前の“わたし”はわがままで意地悪な子供で、たくさんのいたずらや悪さをして皆に迷惑をかけたことを、わたしは知っている。

でも今は、何かを変えなければならない。


将来がどうであれ、少なくとも今は「第七王女」という名にふさわしい人間になりたい!


「そうね。随分変わったわね、ラニア」


「母として、子供が成長するのを見られるのはとても嬉しく、安心することよ」


「良い変化だわ、ラニア。でも無理はしないでね、休む時はちゃんと休むのよ」


「はい、母上」


セティシアを見つめながら、ラニアは急に感動していた。

ついにこの一歩を踏み出した、母親と正面から向き合えたのだ。


「母上、あなたの子供でいられて、本当に幸せです!」


「ふふ、どうしたの? あなたは元々私の子供じゃない」


「ずっと私のかわいい小さなラニアよ~」


「う……うん……」


急に泣き出したラニアを見て、セティシアは優しく抱きしめて慰めた。


その後、気持ちを整えたラニアは図書室で本を読むと言って、部屋を辞した。

王宮内の図書室へ向かった。



王宮の図書室に到着すると、

ラニアは左右を見渡しながら驚嘆の面持ちだった。


「ここは本当に広いわ……」


「やはり中世風の雰囲気が濃厚で、前世ではアニメや漫画でしか見たことがなかったけれど、実際に見ると本当に衝撃的だ。こんなに大きな図書室を一人で使えるなんて、考えるだけでワクワクするわ~」


「さて、今日はどの本から読み始めようか――」


今のラニアにとって、この規模の図書室に入るのはまるで帰宅するように自然だった。将来エルネで自由気ままにのんびり生きるために、彼女はこの巨大な図書室から様々な有益な知識を得ようとしていた。


幸い王宮の図書室の蔵書は一日読んでも読み切れないほど豊富だった。


まず、ラニアはエルネ大陸の歴史書から読み始めた……この世界に関する常識や各地の礼儀をさらに理解するためだ。どれも実用的な知識がぎっしり詰まっていた。

その後読んだのは国家史、地理、植物と薬草、魔物など多種多様な本だったが、ラニアは唯一政治に関する書物だけは読まなかった。その理由は……


ラニアは貴族や王室同士の争いが嫌いで、むしろ非常に忌避していたからだ。


「この人生では絶対にハードな仕事はしない! のんびりしたスローライフこそ今の夢」


たまに冒険や労働はするが、同じことを繰り返しハードにやるなんて、絶――対にいやだ!!

ラニアはメビスが事前に用意してくれたお菓子を食べながら、そう実感していた。


そしてしばらくして。


「うーん……んーん~~」


「今何時だろう? けっこう長く読んでるみたい……でも体は全く疲れていない。これはきっと女神様が授けてくれた“身体能力”のおかげね」


ただ完全に疲れを感じないわけではなく、普通の人よりも疲れにくい程度で、眠るときはやはり眠る必要がある。女神様の力があっても体をむやみに壊してはいけない、今度こそ自分をしっかり大切にしよう。


「よし、今日はここまで。戻って休むか」


立ち上がって図書室を出ると、ラニアはアーチ型の窓越しに外がすっかり暗くなっているのを見た。廊下にももう人影はなく、長廊に差し込む月明かりだけが微かに残されていた……


「もう日が暮れたの!? ま、まずい…まだ誰かいるのかしら? みんなもう休んだかも」


人気のない暗い廊下を遠く眺め、もしかして子供の体になったせいか、ラニアは急に少し怖くなってきた。


「一人で部屋まで帰らなきゃいけないの……でも、なんか暗くて怖い……」


足が急に動かなくなり、廊下の奥から何か変なものが飛び出してくるような気がして……とても恐ろしい。

壁にしっかり手をついて支えながら、ラニアは思った。


「大声で叫んだら皆に迷惑かも…でも、本当に動けない。やっぱり、あんなに遅くまで本を読むんじゃなかった」


「ひっ……いや、ダメだ。一歩も……」


廊下の奥を見つめるうちに、ラニアの足は完全に萎えてしまい、目元には涙が滲み出た。

彼女はか細い声で言った。


「メビス……助けて……」


次の瞬間――

衣擦れの音と共に、青髪の侍女の姿がラニアの前に現れた。彼女こそメビス本人だった。


メビスはゆっくりしゃがみ込み、恐怖で震えるラニアを見つめ、優しく小さな頭を撫でながら囁いた。


「怖がらないで、姫様。私…メビスが参りました」


「メビス…? うああ!!メビス――」


メビスの姿を目にした瞬間、ラニアはついに声を上げて泣き出した。まるで子供のように、ある意味では確かに子供ではあった。


「メビス……ここ、怖いの。もうここにいたくない」


メビスはそう言うラニアを軽く抱き上げ、慰めた。


「すぐにお部屋に戻りましょう、姫様」


「うん。ありがとう、メビ……ス……」


緊張のあまり、またはメビスの腕の中で安心したためか、ラニアはすぐにその懐で眠ってしまった。


「大好きよ……メビス」


「……」


部屋に戻る道すがら、メビスはその言葉を心に深く反芻していた。思わず頬を赤らめ、密かに嬉しさを噛みしめていた。


無事に部屋に戻ると、いつものようにメビスはラニアの着替えをし、就寝の支度を整えた。


「お疲れさまでした、姫様」


「おやすみなさい」


最後にラニアに布団をかけ、メビスはそう静かに声をかけた。

彼女の横顔には、知られざる感情の淡い微笑が浮かんでいた。

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