結果と目立たないぞ作戦
1週間後ー。
合否が送られてきた。
ドキドキする。受かってるかな?
両親が見守る中、中身を開くと…。そこには合格の2文字。
「おめでとう、レイン!」
「すごいぞ!流石俺たちの娘!」
「ありがとうございます!」
素直に嬉しい。
「じゃあ荷物をまとめないとね」
「え?家から通うんじゃないんですか?」
「えぇ、あそこは寮に入らないといけないの」
なんと。それは知らなかった。
「じゃあ毎日は会えなくなるんですね」
「そうねぇ、長期休暇くらいかしら」
少し寂しい。
さっきから父が黙っている。どうかしたんだろうか。
「父さん?」
「……やっぱり行くのやめないか?」
「どうしてですか?」
「だって!!!毎日会えないなんて寂しすぎる!!」
どこまでも親バカな父だった。心配して損した。
「そろそろ子離れしなさいな。もう行くことは決まったんだから」
「いやでも…」
ぐじぐじする父。
仕方ない。
「父さん、母さんが言うように、長期休暇には帰ってきますから。お土産話待っててください?」
上目遣いでそう言うと、
「……!そ、そうだな…。うん、待ってるぞ!」
ころっと元気になった。
ふっ、ちょろいな…。
「じゃあ、行ってきます!」
「長期休暇には帰ってくるんだぞ!!」
「楽しんでねぇー」
しつこく言ってくる父。荷造りしている時もずっと言ってた。
両親は私が乗った馬車が見えなくなるまで手を振ってくれていた。
「新入生!荷物に名前は書いてるかー?名前書かないと荷物が寮に届かないぞ!」
上級生と思わしき男の子が呼びかけている。金髪に緑の瞳の優男イケメン君だ。
「そこの君ー、荷物はここに預けて、講堂へ行くんだよ」
私に向かってイケメン君が言う。
「お願いします」
「あぁ、入学おめでとう」
「ありがとうございます」
荷物を預けて、講堂へ行く。
珍しく、ジロジロ見てこなかったな。
講堂にはいっぱい人がいた。まだ制服はできていないのでみんな私服だ。私は最後の方で、後ろの方の席に座った。隣は男の子で、もうすでに腕を組んで寝ている。早い、早すぎる。
しばらくすると、おじいちゃんが壇上に上がってきた。校長先生らしい。司会の人が言ってた。
「みなさん、入学おめでとうございます。今年もたくさんの新入生がやってきました。……ーーーー」
どこの世界でも校長先生の話が長いのは同じか…。
最初は良かったが、途中から眠くなってきて、寝ないようにするのが大変だった。
入学式が終わって、制服の採寸が終わってー。今からクラス分けだ。
「この水晶玉に触れるんだ!レベルと固有スキルとスキルと魔力量がわかるようになってるからな!」
なんか聞いたことがある声だと思ったら、ヴァイス先生だ。
まずいな…。
レベルは誤魔化せても、固有スキルはステータス画面から隠そうとしてもできなかった。つまり4つの固有スキルが先生達にバレてしまうということ。目立つのは避けられない。諦めかけていた時、
ざわわっ、
前にいた先生達がざわつきだした。見るとさっき横で居眠りをしていた子が水晶に手を当てている。
どうしたんだろ。
ここからでは遠くて先生達の声は聞こえない。でも驚いた顔をしている先生が多いので、彼にそれだけの何かあったのだろう。こちらとしては先に目立ってくれてラッキーである。
それからもステータスの確認は続き、私の番が来た。
水晶玉に手を触れる。先生達の方にステータスが浮かび上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーレイン Lv.20
MP:36228
固有スキル 能力創造、成長促進、難攻不落、奇跡の料理
スキル 剣術Lv.5、体術Lv.5、危機感知Lv.6etc.
火魔法Lv.3水魔法Lv.6、風魔法Lv.2etc.
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先生達に見えているのはこのステータス。どうよ、普通だろ!
「なんと…。素晴らしい。その歳でもうレベル20とは…。」
一番近くにいた先生がそう呟く。
…まだ低い方が良かったのかな。
「それになんだ、あの固有スキルは…。4つもあるぞ。どう言った能力なのか…、気になるな」
あ、気にしないで下さい…。
やっぱり4つは驚くようで、ざわざわしている。後ろの生徒達にはステータスが見えないのが救いだ。
先生達の視線が痛い…。
目立たないはずだったのに。
そんなこんなで、ステータスチェックで目立たないぞ作戦は失敗に終わった。
「今から寮に案内するよー。男子は僕に、女子はあの緑髪の上級生についていってね」
「はーい」
私はもちろん女子なので、緑髪の上級生の方へ行く。
「?あなたはあっちよ?」
不思議そうな顔でそう言われてしまった。私がズボンを履いているからだろう。
「私は女です」
「あ、あらそうだったの、ごめんなさい、男の子かと思ってたわ」
「いえ、紛らわしいのは私ですから」
その上級生以外にも、私を男の子だと思っていた人は多かったようで、驚いた顔をしている人が多かった。
学校の寮は別の建物だった。男子棟が学園側で女子棟が外側。私はどうやら男子として数えられていたらしく、部屋が準備されていなかった。だがおかげで普通なら2人部屋のところを、1人部屋にしてもらえた。正直知らない人と寝る時まで一緒なのは少し嫌だったので嬉しい。
荷物も男子寮の方へいっていたので、届くのを待つ。荷解きがある程度終わったら次は、食堂へ行った。
「食事はここで注文するのよ」
食事をするのにお金は必要なく、欲しいものをメニューから選んで注文するだけらしい。厨房で自分で作ることもできるんだそうだ。私はサンドイッチを頼んだ。
んまぁ〜。
もぐもぐしつつ、周りを見渡す。女子より男子が多い気がする。男子六割、女子四割ってとこだろうか。
お昼時だから、食堂は人でいっぱい。多分まだ来るだろう。さっさと食べて退散しよう。午後からは自由時間だし、校舎を探検したい。
私は残りのサンドイッチを頬張った。




