固有スキル取得
私はレイン。勇者の父と神狼の母をもつ。母譲りの白銀の髪は肩で切りそろえられ、父譲りの紺碧の瞳が輝いている。顔は母似。何故こんな自己紹介じみたことをしているのかと言うと。同僚に刺されて死んで転生したこの世界で、私は今父から頬擦りされている。髭が痛いとかでは別になくて、ただ高速すりすりされて摩擦がすごい。
「レインは可愛いなぁ、お母さんに似て美人さんだし、父さんは将来が楽しみだよ」
わかったからちょっと離してほしい。
「あなた、レインが困っているわ、離してあげて」
ナイス母!
「そうか?すまん」
割とすんなり離してくれた。ふぅ。
今日は待ちに待ったスキル取得の日だ。教会に行って取得をする。今は教会に行く馬車の中だ。るんるんで鼻歌を歌う。そんな私を見て母が微笑ましそうに、
「楽しそうねぇ、どんなスキルを授かるのかしら。ほしいスキルはある?」と聞いてきた。
「魔法を使いたいので魔法のスキルが欲しいです!父さんや母さんはどんなスキルを持っているんですか?」
「父さんはなー、なんと!3つスキルを持っているんだ!」
3つ?珍しい…ってネイア様が言ってたっけな。
「勇者っていう全てのレベルを補正をしてくれる固有スキルたり、他にも戦意高揚とか色々してくれる固有スキルだろ?全力全開っていうSPを一定値消費してHPやMPを回復し、さらに全体のレベルブーストをしてくれる固有スキル。そして戦闘領域だ!これは味方のステータスを強化しつつ、一定量HPを回復する固有スキルでな、魔王戦では重宝したぞ」
「その3つのスキルで父さんは魔王を倒したんですね」
あれ?でも魔法のスキルってない?
「魔法は後からでも覚えられるんだ。今からレインが取得するのは"固有"スキルだからな」
どうやら勘違いしていたようだ。私が今から取得するのはスキルの中でも固有スキルといって1人にしか発現しないもので、スキルは後付けで覚えていくものらしい。
母の固有スキルは2つで、治癒者、絶対防御らしい。どんな怪我ー部位欠損とかーでも治せる固有スキルと、どんな攻撃でも防ぐ固有スキル、らしい。ちなみに固有スキルは乱発できないらしい。MP消費が半端ないんだと。
そうこうしているうちに馬車が止まった。教会に着いたらしい。「ここからはレイン1人で行くんだ。大丈夫、終わったたころに迎えにくるからな」
「同い年の子達ばかりだから、お友達ができるかもしれないわね」
楽しんでねー。そう言って母達は馬車に乗り込み去っていった。
私は手を振り、馬車はそのうち角を曲がって見えなくなった。
さて。教会に入りますか。
子どもで溢れかえってるなー。これ全員同い年かーでも平民だけみたいでお貴族様みたいな服装の子はいなかった。まぁそりゃ平民と一緒にはしないか。
子供たちは来た者順で椅子に座っていっている。それにしても。
なーんか見られてるんだよなぁ…。
チラチラとこちらを見る子の多いこと多いこと。なんだよ、私の顔になんかついてんのか?
こういう時は無視が一番である。私は壇上に上がった神官さんの方に意識を集中した。
「ーーーでは今から固有スキルの取得を行います。」
はっ!!やばい聞いてなかった。
思った以上に神官さんの話が面白くなくて、固有スキルについて考えてたらいつのまにか話が終わってた。前に座っている子から順に前にある水晶のようなものに触れて固有スキルを取得するらしい。1人、また1人と水晶に触れていく。欲しかったものを手に入れた子もいれば、そうじゃなかった子もいるみたい。次々と終わって、私の番が来た。
さーて、どんな固有スキルが手に入るかな?




