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【3-1/ハヤテ、セツナ】鬼面仏心〈前編〉〜凸凹なルームメイト〜

『ハヤテー天狗ー』


天狗は代々、能力値の高さに伴って、見た目がオトナに変化する。


でも、何年修行しても僕の姿は変わらない。

山を降りてきても、子どものままだ。


これがどういうことなのか、言わなくても、わかるよね……



入寮式で、同室になる人の紹介があった時

僕は「終わった…」と思った。

一番はじめに呼ばれたペアが――僕と、そのすぐ後ろに立っていた、背が高く目つきの鋭い、不良みたいなお兄さんだったから…


「ああ、おまえか。」

すごく怒ったような目で見下ろされて

体の芯からビリビリビリっと電流が走る。

思わず、サッと目を逸らしてしまった。


(こ…こわいよぉ……)

その場から逃げ出す隙もなく、僕らは、一番に部屋へ向かうことになった。




部屋の扉を開けると、2つのベッドと机、そして、正面には大きな窓。


「わぁ!すごい!」

こんなに明るい部屋は、見たことがない。暗くジメジメした山奥の洞窟暮らしだった僕には、眩しいくらいの光景だった。

ルームメイトが怖いなんてこと、一瞬吹っ飛んでしまうくらい、僕のテンションは最高潮になっていた。


「ねえ、ねえ、窓開けてみてもいい!?」

「あぁ、べつに。」

勢いよく窓を開け放つと、温かい風が部屋に流れ込んだ。


「ここ、2階だから。落ちるなよ。」

うん!と、振り返った、その時ーーー

背後で『ブゥン…っ!!!』

と、低く唸る羽音がした。


「!!?」

思わず飛び退いた僕の視界目いっぱいに、僕の頭と同じくらいの巨大なスズメバチが現れた。




ーーーーーーーーーー

『セツナーヨルムンガンドー』



「ねえ、ねえ、窓開けてみてもいい!?」

「あぁ、べつに。」


つい今しがたまで俺の後ろでビクビクしてたハヤテとかいう子どもが、ぴょんぴょんとはしゃぎながら窓を開け放つ。


ちっこい体が窓枠から落ちそうで、俺は思わず声をかけた。

「ここ、2階だから。落ちるなよ。」

ハヤテが「うん!」と元気よく振り向いた、その瞬間、窓からどでかいハチが部屋に入ってきた。


俺の手のひらよりもはるかに大きいサイズのスズメバチ。

なんでこんなでかいんだ…


「うわぁぁぁぁっ!はっハチがぁぁあぁぁあ!!」

ハヤテが、大騒ぎしながら部屋中をびゅんびゅんと逃げ回る。


「おい、暴れんな。逃げるから追ってくる。」

半ば呆れたように、俺は、暴れるハヤテを素早く掛け布団でくるんで、自分の後ろに隠した。


さてどうするかーーー

はぁ。

俺はひとつ、大きくため息を吐くと、執拗に攻撃を仕掛けてくるスズメバチを睨みつける。


「しつこい。失せろ。」

しかし、せっかくの優しい(?)アドバイスに構うことなく、スズメバチは勢いを増して襲ってきた。


首元に針が触れる…その瞬間。


「…バカだなぁ、おまえ。」

針をふいっと軽く交わし、俺の手がスズメバチの針の根本を掴む。



「…“毒”で俺に勝てるかよ。」

スズメバチが一瞬怯んだと同時に、大きな針が、ぼとりと床に落ちた。

そしてその直後…ビビビッ!と嫌な羽音を立てたあと、空いている窓から、外へと逃げて行った。


俺は、スズメバチが残していった針を摘み上げると外に放り投げ、そのまま窓を閉めて鍵をかけた。

「出てきな。もう平気。」


布団にくるんだままにしていたハヤテに声をかけると、ハヤテは布団の中からそぉっと顔をのぞかせた。


「あうぅ…どうなった…の…?」

涙と鼻水で、ぐしゃぐしゃのハヤテ。

(…おもしれえ顔。)

ふ、と気が緩んだ。

その瞬間ーーー

「あ…」

やべぇ。

汗が一筋、頬を伝う。

「…加減、、間違えたわ……」

目の前の景色がぐるりと回転し、俺はその勢いのまま、バターン!と、床に倒れこんでしまった。



“諸刃の剣”とは、よく言ったもので

この世界の生き物の中には、自分が作った毒で自ら命を落とすものも少なくはないらしい。

敵に向ければ無敵だが、一歩間違えれば自分をも壊す。


俺はーーー

そんな生き物たちによく似てる。




ーーーーーーーーーー

『ハヤテー天狗ー』



バターン!


どでかいハチから僕を守ってくれた、セツナが、目の前でいきなり倒れた。

なに!?どうしたの!?

待って、どどどうしよう…!?


「あっ!」

そうだ保健の先生…!!

泣きながら、入寮式の時にもらった学園の地図を引っ張り出して広げ、保健室の場所を確認する。


うまくできるかな…大きく息を吸い、風船を膨らませるように強く長く息を吐くと、足元から白い煙が立ち上り、もう1人の“僕”が目の前に現れた。


“分身”は僕が唯一使える天狗の術だ。

「あの、保健室まで行って、先生呼んできてほしいっ!」


もう1人の“僕”は、こくこくと頷くと、地図をチラッと見てから部屋の外へ走って行った。




先生はすぐにきてくれて、とてもスムーズに処置をしてくれた。

僕はそれを、少し離れたところから見てることしかできなかった。


「あの…」

震える声で、先生に話しかける。


「…ハチに、刺されちゃったんですか…??」


先生は笑って言った。

「うーん。ハチが原因ではないみたいだけど…」


…え?

頭上でハテナマークが飛び交う。


「色々と、影響は受けやすいのかもね。耐性がつけば、なんとかなりそうだけど、時間はかかると思うわ。」


どういうことなんだろ…

けど…布団でくるくる巻きにされてる間何か起きたことは、まちがいない。


「…僕のせいだ……」


うなだれる僕を見て、先生は優しく言う。

「ここにくる子はね、みんな“訳あり”なの。

あなたもそうよね?」


そして、テキパキと手当てを終わらせると、また何かあったらすぐ呼んでね。と言い残して部屋を出ていった。



しばらくして、ふぅ、と、セツナが小さく息を吐き、うっすらと目を開けた。


「!!セツナぁ!!」

よかった!目を覚ました!

泣きながら勢いよくセツナにとびつくと、、

「わっ、と…」

上体を起こしかけていたセツナは、突進された勢いで後ろに倒れ込み、そのまま隣の机に頭をぶつけてしまった。


「って…おい。」

「ぎゃぁぁぁぁぁごめんなさい!!!」

僕は謝りながら向かいの壁際まで慌てて飛び退いた。

なんでいつも、迷惑ばっかりかけちゃうんだろ……


セツナはだるそうに僕を見た。

「…すぐ泣くな。」


「ごっ…ごめんなさ…」

「あとすぐ謝るな。だりい。」


ごめん、、と言いかけて、またセツナの鋭い視線に、慌てて口を両手で押さえる。


どうしよう、なんて言ったらいい?

そうだ、ありがとうだけでもちゃんと…


セツナが、ゆっくりと立ち上がった。

反射的に、ビクッと体が跳ねる。

そんな僕をちらりと見て、セツナはふう。とためいきをつく。


そして、めんどくさそうに頭をかきながら

「平気だよ。慣れてる。」

そうひとこと呟いて、そのまましずかに部屋を出ていった。



残された僕は、涙の後も乾かないまま1人その場に立ち尽くす。

喉の奥が、ぎゅっとつまったみたいで、声がうまく出ない。

それでも、どうしても――。


「…ありがとう……」


消えてしまいそうな声。セツナには、届かない。

それが、ひどく悔しかった。

ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


ーーーーーーーーー


《登場人物おさらい》


⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)

いつまでも子どもな見た目の、一人前になりきれない天狗。

ビビりでよく泣く。

逃げ足だけは超はやい。

天狗の術の中で唯一「分身の術」が使える。


⭐︎毒島セツナ(ヨルムンガンド)

自らの毒で自分もダメージを被るヨルムンガンド。

口数少なく、目つきが悪い。



ーーーーーーーーーー


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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