【2ー2/ハル、ルカ】カケラごと受け止めて②〜制御不能な好奇心〜
『ルカー吸血鬼ー』
時刻は朝5時。
窓から差し込む朝日を浴びて、一気に元気を取り戻した僕は、まだ寝ているハルにとびついて「おっはよー!!」と挨拶をする。
ハルは不機嫌そうに目を開け、時計を見てつぶやく。
「……5時って…吸血鬼って朝ダメなんじゃねぇのかよ……。」
「え!僕は朝の方が好きだけど!?
朝日あびたら元気100倍だよ!」
「どこぞのパンのヒーローかお前は…」
ハルは、僕とは違って朝がすこぶる弱いらしい。
俺は毎朝早くて8時おきだと宣言されたが、それでは授業に遅刻するので、せめて7時ごろには起こしてあげることにしようと勝手に心に決めた。
落雷、停電の大失態から一夜明けても、ハルが昨日とかわらず“普通”に接してくれていることに、ほっと胸を撫で下ろす。
部屋にいても暇なので、まだ誰もいない食堂で、朝ごはんの準備をすることにした。
この学校では、昼は給食、夜はバイキング形式で食事が用意されるとのこと。なんだか、すごく贅沢だ!
朝と軽食は、各自調達。外に出ればコンビニもあるし、キッチンには常に食材が豊富に揃えられ、綺麗に使えばいつでも誰でも自由に使って良いらしい。
小さい時から料理をすることが好きだった僕は、入寮式でその話を聞いた時、飛び上がるほど嬉しかった。
せっせと朝食を準備していたら、食堂の扉が開く音がして、髪の長い女の子が入ってきた。
「おはよー!えーと、なんだっけ名前!?朝ごはん、作ってるんだけど食べる!?(^^)」
同じ早起き仲間だ!と嬉しくて声をかけたが、その子はこっちをチラッと見て
「結構です。」と一言言ったきり、カウンターのコーヒーメーカーでコーヒーを注いで、離れた席に腰掛けた。
仕方なく1人でトーストとサラダ、コーンスープを食べ始めると、今度はハルがやってきた。
「さっきので目ぇ覚めた」と言いながら、僕の朝食に目を向ける。
「なに、それ作ったの?うまそーだな」
「たべる!?」
そういうが早いかあっという間にもう一人前を用意して、ハルの前に置く。
「はやっ!」
笑いながらハルは、美味い、と食べてくれた。
ハルの言葉は、昨日からずっと僕の心をポカポカとあたたかくしてくれる。
その優しさに、思わず笑みがこぼれた。
なんかもう、この朝だけで三日分くらい幸せチャージできた気がする!
窓から入る朝日がまぶしくて、コーンスープの湯気がふわっと鼻をくすぐる。
あー……この感じ、好きだなぁ。
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『ハルー魚人ー』
ルカの作った朝食は、本当に美味かった。
朝日がテーブルの端に伸びてきて、湯気の中をゆらゆら揺れる。
早起きするのも悪くない(5時は早すぎだけど)。そんな風に思ってすっかりきれいに食べ終えたあと
女子が2人食堂にやってきた。
昨日式で見かけた水色の髪の子と、もう1人は、、、
「……白狼、みさおです。……どうも。」
ああ、式に来なかったやつだ。
みさおの名前を聞いた途端、ルカがドヤ顔で俺に言う。
「ほらぁ!やっぱ女の子だったじゃん!」
「いや、名前だけじゃわかんねーだろ」
そうこうしているうちに、今度は遅れて食堂に駆け込んできた女子が、俺たちの目の前で派手に転んだ。
なぜかパチパチと音を立てて落ちる涙。
髪の長い女がすっと動き、泣いている女子に声をかけると何事もなかったかのように席に戻る。
きっとあの2人は同室だ。と、その場の空気感で察しがつく。
「あの!あらためまして、みんなもう一度、名前とか……」
水色の髪の子が口を開くと、ルカがそれに乗っかった。
「あー自己紹介!だよね!みさおちゃん昨日いなかったし、誰が誰だかわかんないよね!
よし!はい、じゃーハルちゃんからどーぞ!」
「…ちゃん付けやめろ!ったく……」
しかたなく、その場で立ち上がり
「あー……俺は海原ハル。魚人の類だが……まあ……その……海は……」
海はあまり好きじゃない、くらいは、話しておいた方が良いか…?と一瞬言い淀んだ隙に、今度はルカが自分の紹介をかぶせてくる。
「…お前なぁ…」
なんだそのマイペースさは、と突っ込みたかったが
それ以外の同級生の名前も一通り確認ができたので、まぁいいか。という気になっていた。
そこまでは、よかった…。
「そいや、みさおちゃんて……なんかどーぶつっぽいよね!?」
ルカが唐突に尋ねる。
やばい、スイッチ入ったか…?
あいつは、テンションが上がると、場の空気を読めなくなる。
昨日会ったばかりで全て把握しているわけではないが、それはこれまでの俺とのやりとりを見れば明白だった。
現に今、ものすごく嫌そうな顔をしているみさおに、おかまいなしにガンガン絡んでいっている。
「僕、鼻はけっこういい方なんだけど……んー、森の匂い?山犬……いや、きつね……」
最後まで言い終わらないうちに、
みさおの手にグッと力が入る。
そして目つきが、変わったーーー
あー…ルカ、それ以上は……
「……あっ!オオカミとか。」
止めようかと、思った時にはすでに遅し
ルカはその一瞬の間に、みさおに思い切り投げとばされていた。
――ドスンッ!
「どわっ!?いでっ……!」
みさおは一瞬焦ったように視線を逸らし、そのまま食堂を飛び出して行ってしまった。
シラーっとした顔でコーヒーを啜るあやめ。
その隣で怯えるりん。
「……バカか、お前は。」
俺は、床に伸びたままのルカを見おろす。
「へ、、なんで……?」
「見りゃわかるだろうよ…」
いまだに状況が飲み込めていない涙目のルカの身体をひょいと担ぎ上げると、
「後で話す。」
ため息混じりにそうつぶやいて、そのまま部屋へと連れ戻った。
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《登場人物おさらい》
⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)
明るいお調子者の吸血鬼
夜と雷は大嫌いで、ガーリックトーストが大好物。
料理が得意!
⭐︎海原ハル(魚人)
海が嫌いな魚人。
明るい方ではあるが、ルカには敵わない。
朝が弱い。(ルカが早すぎる説)
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