【2-1/ハル、ルカ】カケラごと受け止めて①〜優しい共感〜
『ハルー魚人ー』
俺は、海が嫌いだ。
どこまでも広くて途方もなく深い
夏になれば海水浴だ海の家だと騒ぎ立て、あんな恐ろしい場所へ自ら飛び込んでくる奴らの気がしれない
しかし、どれだけ拒んでも、魚人の住処は海の底だ…
だから俺は、ここへきた。
とにかく、海と離れた陸地で過ごせれば、どこでもよかったんだ。
ここは、万怪異類文化継承学園。
長ったらしい名前なので、みんな「ノアズ・アーク」と呼んでいる。
『ー以上をもちまして、入寮式を終了いたします。』
入寮初日、無事式を終えた俺たちは、それぞれ割り振られた部屋を確認する。
会場全体をなんとなく見渡すと
整った顔立ちだがどこか冷めた顔で外を眺めている女や、パタパタと動き回る明らかに年下な子ども、ヤンキーみたいな見た目の男。
噂の通り、ここには“いろんな”やつらが集められているらしい。
『えー白狼さん、白狼みさおさんはいますか?』
『白狼みさおさーん』
さっきから、やたらと名前を呼ばれてるやつは、初日から早速遅刻なのか?なかなか肝がすわってんな…。
「君、僕と一緒部屋だよね!?よろしくだねー!」
俺のすぐ隣には、やたらテンションの高い黒髪の『ルカ』という男子。
「お、おう…」
相槌を打つ隙も与えず、ルカは喋り続ける。
「緑の髪かっこいいね!僕吸血鬼なんだけど君は!?」
「てかなんかめっちゃ呼ばれてる子いる!みさお!?どんな子だろ!?あ、朝ごはん食べた?ガーリックトースト持ってきたんだけどいる!?大好物なんだよねー♪」
初対面にも関わらず、ケラケラと笑いながら遠慮なく距離を詰めてくる。笑えるくらいお気楽な奴だ。
俺も普段はまぁまぁ元気な方だとは思うが、、多分こいつには敵わない。
*
式の後、部屋順に2人ずつ学園長に呼ばれて学園の名称や校歌についての講義が行われた。男子寮の中でも一番最後に呼ばれた俺とルカ。長ったらしい一通りの説明が終わり、ようやく荷物を持って移動し始めた頃には、すでに窓の外はじんわりと夕焼け色に染まっていた。
先ほどから急に降り出した雨で濡れないよう、俺は渡り廊下を小走りに進み、割り振られた男子寮の一番奥の部屋へと向かう。
同室のルカは、すぐ後ろからついてきていたが、なぜだろう、つい先ほどまでの元気が嘘みたいに、急に口数が減り伏し目がちで、心なしか顔色が悪いようだ。
「?」
少し引っかかるものを感じつつ、部屋の扉をあけた。
その途端ーーー
ゴロロロ…
ピシャーーーーン!!
近くに雷が落ちた。
ーーーーーーーーーー
『ルカー吸血鬼ー』
夜なんか、嫌いだ。
雷なんか、もっと嫌いだ。
ドラマでよく見る、雷鳴轟く夜の闇からのドラキュラの登場シーンとか、ほんとアホなんじゃないかと思う。
けど、吸血鬼のくせにそんなこと考えてるなんてみんなにバレたら…絶対カッコ悪すぎる!!
だから、決して悟られてはいけないんだ
そう固く決意してここへきた…はずなのに…
*
ゴロロロ…
ピシャーーーーン!!
「ぎゃあぁぁぁぁ!!まって無理無理無理むりだってーー!!!!(涙)」
…いきなり、やらかしてしまった。
寮の部屋に入った途端、大きな音と稲光。
その場で震えてしゃがみ込んだ僕のすぐそばで、午前中の部屋割りで同室になったハルが、ポカンとした顔でこっちを見てる。
「え…おい、大丈夫か?」
まずい
このままじゃまずい平静を装わねb.....
ピカっ!!!
ドカーーーーン!!!!
「うお!」
「んなぁあぁぁあぁ助けてえぇぇぇっ(꒦ິ⌑︎꒦ີ)!!!!!」
惨敗だった
2度目の落雷で、寮全体が停電。
部屋の電気がバツンッ!!と切れて、あたりは一瞬で闇に包まれた。
さいあくだ。もうおしまいだ。
暗い。怖い。動けない。
涙も震えも止まらない。初対面のルームメイトに、いきなりこんな醜態をさらすとは…
けど、、次の瞬間、目の前がぼんやりと明るくなった。
恐る恐る顔を上げると、いつのまにかハルがすぐ隣に座り、自分の腕時計のライトをつけて僕の前にそっと置いてくれていた。
「しばらくつかないかもな」
ハルはため息混じりにつぶやく。
何も答えられない僕に
「雷、嫌いなん?」
とハルが問いかける。
わずかに頷く僕を横目で見て、ふっと笑う。
「だよなぁ、俺も。」
その言葉を聞き、ハッと顔を上げた。
「暗いのもダメか。」
「…うん。」
けどハルは、僕の様子なんて全然気にしていないかのように、うーーん、と伸びをしている。
「あの…このこと、みんなには…」
みんなには、言わないで…
…ばれたら、吸血鬼のくせにって、笑われる……
恥ずかしさのあまり言葉に詰まる僕を、ハルは不思議そうに見つめてくる。
「当たり前じゃん。苦手なもんくらいだれにでもあるし、わざわざ言いふらすことじゃないだろ」
心の奥で、なにかあたたかいものがじんわりと湧き上がってくる。
「…吸血鬼のくせに、、恥ずかしいって…
言われると思ってた……」
ぼくがポツリと呟くと、ハルは僕を見て、ふっと笑って言った。
「俺、魚人のくせに、海嫌いだよ。泳げないし。」
「!!」
「な、みんなそんなもんだよ。」
ルカの口から飛び出す言葉はどれも優しくて、あんなに恥ずかしくてみっともないと思っていたことでさえ、本当になんでもないように思えた。
ハルには、僕をちゃんと、素直に見せても大丈夫なんだって、少しだけ思えた。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は不定期です。
活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。
感想や評価など、いただけると嬉しいです。
ーーーーーーーーー
《登場人物おさらい》
⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)
明るいお調子者の吸血鬼だが、夜と雷は大嫌い。
ガーリックトーストが大好物。
⭐︎海原ハル(魚人)
海が嫌いな魚人。
面倒見が良く気がきく。
明るい方ではあるが、ルカには敵わない。
ーーーーーーーーーー
こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。
(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.




