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【1-5/みさお】みんな訳アリ。

悩みに悩んでようやく食堂に辿り着いた頃には、他の皆は食事がひと段落していたようで、扉の向こうからは、賑やかな話し声が聞こえていた。


よし

よし、いくぞ


胸の奥がドクンと跳ね、背中に汗がにじむ。


意を決して、扉を開いた。

ーーバタンッ!!


思いの外、大きな音が鳴ってしまった…

その音で食堂に集った面々の視線が一斉に集まる。


あぁ…やっちゃった……


またしても注目を浴びてしまった状況に、顔から火が出そうになった。


「あっ、みさおちゃん!」

ゆきが、ぱっと明るい声で私を呼んだ。


「あの……部屋の…色々、ありがとう…」


たどたどしくも、勇気を振り絞って発したその言葉が、あまりにも力無く、弱々しくて、また恥ずかしくなってしまう。


「みさおちゃん、元気になってよかった」 

「うんうん」

ふわっと笑うりんとゆきの笑顔をみて、スッと胸のつかえが取れた気がした。


セツナは、奥のソファ席でこちらに背を向けるようにしてスマホをいじっていたが、ふいと振り向き私の方をチラッと見ると、軽く手をあげ、また何事もなかったかのようにスマホの方に目を向けた。


「…はやく食事済ませたらどうですか?私は先に戻ります。」

あやめは相変わらずこちらをチラリとも見ない。

食堂をでるあやめの後を、りんがパタパタと追って一緒に出ていった。


「明後日!」

ハッとして顔を上げると、目の前に、お盆を持ったハルがいた。


「メモ見た?明後日授業ペアだから、ちゃんとこいよ」

「はっ…はい!」


「あと、敬語やめろ。喋りにくい」

「うっ…」


わかった、と小さく答えると、ハルはにぃっと笑い、私の頭をポンとたたいた。


「あっあの…」

おずおずと声をかけてきたのは、赤毛のとても小柄な少年。


「僕、、初めましてなので、あの、烏丸からすまハヤテです。」

クリクリとした可愛い目で、こちらを見上げてくる。


あ、この子がセツナと同室の…。


「あ、みさお、です。よろしく。」

そう返しながら、昨晩保健室に泣きながら入っていった小さな後ろ姿を思い出した。



おちついたところで、ふいとあたりを見回す。


きちんと謝らなければならない、ルカの姿が見当たらなかった。

「あれ、ルカ…は…」


瞬間、ピリッと空気に緊張が走る。

「あー、、えぇと、あそこに…」


ハヤテが指差した方はセツナが1人で座るソファ席。


「え…?セツナ…?」


「違う違う。その隣。」

「??」

ハルにそう言われて、ソファ席の近くまで行き、セツナの隣を覗き込むーー



そこには、ソファの座面に突っ伏すように小さくうずくまって震えている、ルカがいたのだが……


「…え…?」


なぜか、華奢な身体に不釣り合いないかつい蓄光反射ベストを身にまとい、明るい食堂にいるにもかかわらず、頭にはフルパワーで発光し続けるヘッドライトを装着している。

…まるで工事現場の作業員のようだ。


「……ルカ?」


私の呼びかけに、うずくまったままのルカはビクッと体を跳ねさせた。


「……なんだよ」


今朝のテンションの高さとは打って変わって、今にも消え入りそうな、くぐもった声。


訳がわからず、でもちゃんと伝えなきゃと思って

ルカの顔を覗き込むようにして言った。


「今朝は、あの…ごめんなさい。痛いことして…」


我ながら、すごくすごく勇気を振り絞って、言葉を選んでいたと思う。

なのに…


「あと!その、、ガーリックトースト、ありがーー」 

「あぁ…。今どーでもいいよそんなこと」

私の言葉が終わる前に、吐き捨てるように返された。


「…え…なに、、それ…」


「だから…っ……どうでもいいってば……!」

動揺する私のことなんてそっちのけで、ルカは震える声で繰り返す。

こちらを、見ようともしない…


「…は?」

…結局、まだ怒ってるってこと?


ざわりと逆立つ感覚


イラついたオーラを察知したゆきとハルが、思わず突っかかりそうになった私を素早く止めに入った。


「みさおちゃん!ちょっと、ストップ!!」

「まてまて、とりあえず落ち着け!!」


…また“投げる”と思われたのかもしれない。


肩で息をしながら、なんとか気持ちを落ち着かせる。


「とりあえず、その、こいつ、怒ってるわけじゃないから。」


そう言われても、頭の中にはハテナマークしか浮かばない。

「怒ってない!?なら…じゃあ、、なんで……」

小さなトゲがチクリと刺さったみたいに、胸の奥が痛む。


ハルは言いにくそうに言葉を濁す。

「あー、これはあれだ、、ちょっと、いまはパニック?というか…その…なんというか……」


「は!?」

はっきりしない説明に、また少しイラッとしてしまう。


ゆきが心配そうに、私とハル、ルカに視線を巡らす。



「…とりあえず先、戻ったら。」

スマホをいじっていたセツナが突然、私たち3人に向かって言う。


「俺まだいるし。落ち着くまで見てる。」


「僕も、一緒にいるよ」

ハヤテもソファの方へ移動し、ちょこんと座った。


セツナとハヤテの言葉に、ルカと同室のハルは申し訳なさそうに返す。

「あー…わりい。よろしく。」



まだ釈然としない私に向かって、セツナは

「察しろ、みさお。」

と一言投げかけると、また目線をスマホに落とした。


なんなの!?いったい。


正直今の状況に納得はしていなかった。

けれど、セツナのその目に押され、私はテーブルに残っていたおにぎりとクラッカーを手に取り、言われるがままに2人と一緒に食堂を後にした。



ゆきと部屋に向かう途中、ひとつ大きく深呼吸をすると、私は頭の中でグルグルと考えを巡らす。


とりあえず…ああやって大勢に注目されるのは嫌だったのかも、、

私も、散々恥ずかしい思いをした。


それから、ルカの様子…

ハルは、『パニック』だって言ってた。


確かに、雰囲気も、匂いも、今朝会った時とは全然違った。余裕がないというか、何か怖がってるみたいだったけど…


あの状況で、一体何がーー


ヘッドランプ

蓄光反射ベスト



「…あっ!」


もやもやしたものが急に一本につながる。


もしかして…“暗い”のが、怖い…?



“吸血鬼なのに”?

そんな疑問が一瞬頭をよぎり


思わず、先に部屋に入っていくゆきを見つめる。


「??」

ゆきは不思議そうにこちらを見返し、にこっと笑った。



ここへきてからというもの、これまでそれが当たり前で“普通”だと思い込んでいたことが、次々と覆されていく。


…みんな…“訳あり”……

その意味が、ようやく少しだけわかった気がした。


「私と、、同じだ……」


私は、ふぅ、と小さくため息をついて、部屋の扉を静かに閉めた。

ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


ーーーーーーーーー


登場人物おさらい、毎回更新時に活動報告に掲載していましたが、前エピソードまでの情報込みでこちらに載せたいと思います!


《登場人物おさらい》

⭐︎白狼みさお(狼女)

狼に変身できない。

カッとするとわりと手が出る、、?


⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)

明るいお調子者だが、夜は、、、。


⭐︎海原ハル(魚人)

割と距離近め。面倒見の良さ◎

敬語はあんまり好きではないらしい。


⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)

ヨルムンガンドのセツナと同室の、赤毛で小柄な男の子。目がクリクリでかわいい。

みさおと保健室で1回すれ違ったことがある。


⭐︎霜村ゆき(雪女)

寒がりな雪女。

今回も優しいフォロー役!


⭐︎毒島セツナ(ヨルムンガンド)

毒蛇の家系だが、毒に弱いようだ。

口数少ないが、周りをよく見ている。

甘いもの好きみたい。


⭐︎霞織あやめ(絡新婦ジョロウグモ)

りんと同室。

みさおと全然目が合わない、、。


⭐︎巳影りん(??)

あやめと同室の小柄な女の子。

泣くと涙がキャンディになるという可愛さ。


ーーーーーーーーーー


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


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※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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