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【4-2/ハル、ルカ】この手つないで《後編》〜そのままのきみで〜

『ルカー吸血鬼ー』


目が覚めたら、保健室のベッドの上だった。


「…あれ……」

僕なんで、こんなとこ…


さっきまでみさおと海にいて

でっかい魚に追いかけられて、、、



ガララ、と、保健室の扉が開く音がした。

僕は咄嗟に振り返る

「ハル…っ!?」


「…ハルじゃねえ。わりい。」

中に入ってきたのは、セツナだった。


「気分どう?」

「あ、うん、大丈夫…」


「…だいぶ海水飲んでたけど。」

「……。」


僕は、少しずつさっきの出来事を思い出す。


魚に追いかけられ、ハルに叱られ、そして、海にーーー

胸が苦しくなって、言葉が出なくなってしまった。


セツナは僕の寝ているベッドに腰掛ける。


「……ハルが気になる?」

「…っ……!」


「まぁ、沈んではいる。みさおにボコられてたし。」

「えっ…!?」

驚く僕をちらりと見て、セツナはふっと笑う。


「半分冗談。

けどあれだけ暴走したしな。今は沈んでるくらいがちょうどいい。」

ハル…元気ないのか……


しょんぼりする僕を見て、セツナは「なあ」と声をかける。


「怖かったろ?さっき。」

「!」

一瞬言葉に詰まる僕を、セツナはじっと見つめる。


「…べつに…怖いとかじゃ…」

「怖くていいんだよ。」

セツナの言葉に、僕はハッと顔を上げる。


「それ否定したら、お前、ハルを否定したことになる。」

「…え……」


「いつもの優しいのも、さっきのも。全部ハルだ。まぁ、許すかどうかは、別だけど。」

怒りたきゃ怒れ、とセツナは言って、僕は、小さく頷いた。


「ああ、あと、お前もちゃんと謝れ。まぁまぁな地雷踏んでたぞ。」

「あ……」


そして、よ。っと、ベッドから立ち上がると

「お前も、お前のままでいい。」


持っていたスマホでポポン、と僕の頭を軽く叩くと、セツナはそのまま保健室を出て行った。



ーーーーーーーーーー

『ハルー魚人ー』



「………で?」

セツナが、睨みをきかせながらトゲトゲしい声で聞く。


「なんで、こいつがここにいんの。」



「ええと、それは…」

ハヤテが、オロオロと目を泳がせながら言葉を探している。


「…お、、おじゃまして…ます……」

俺は、ハヤテとセツナの部屋の隅で、小さく体育座りをして縮こまっていた。


はぁぁ〜…と、あからさまにめんどくさそうに大きくため息をつくセツナ。


「…戻れよ、部屋。」

「……けど、、ちょっと…

…顔合わせづらくて………」


事情を知らないハヤテは、俺の沈み具合を心配して、右往左往している。


「あっ、でも、ちょっと落ち着くまではここにいても…」

ハヤテがセツナの顔色を伺いながら、俺に話しかける。


「ハヤテ!かまうな。」

ビクッ!と縮こまるハヤテ。


セツナは俺の方を見もせずに

「ハル。うぜぇ。出てけ。」

と言い捨てた。


「………っ…」

俺は何も言い返せず、ズーーン…と背中に影を背負ったまま、部屋の扉に手をかける。




「…お前が逃げんな。」

ふいに後ろから、セツナの声が飛んできた。


振り返っても、セツナは俺を見ないまま。けれど、言葉は俺に真っ直ぐぶつかってくる。

「傷つける力がある奴は、絶対逃げんな。」


「…っ……。」

「許されなくても、向き合え。」


セツナが、ふい、と俺の方に目を向ける。

「俺と同じだ。お前は。」


向けられる言葉ひとつひとつが、俺の心を、じわじわと溶かしていく。

「あ、そうだ」

「…?」


「さっき様子見てきたけどあいつ、お前のことで頭いっぱいだった。」


泣きそうになる気持ちをグッと堪える。

「さっきも、今も…迷惑かけて、ごめん……。」

ぺこりと頭を下げると、俺はセツナたちの部屋を後にした。




俺とルカの部屋の前。

どうしても扉が開けられず、どうキッカケを作ろうか1人悶々としていると


いきなりガチャリと、勢いよく扉が開いた。


「あーやっと戻ってきた!どこ行ってたの!?もう!」

「え…あ……」

中から顔をだしたのは、“いつも通り”のルカ。

俺は、動揺を隠せず、当然部屋の中にも入れない。


「ご飯、部屋の方が良いかなって思って用意して待ってたから!早く早く!」

ルカはそう言いながら、いつものように俺の手を握った。


けれどーー

いつもと違い、俺を掴んだその手は、かすかに、だが確かに、震えていた。


…怖がられてる……?

俺は少しだけ、掴まれた手をひっぱる。

「!!!」

ビクッ!!と、こわばるルカの身体。


「あ……」

しまった、と言うような顔で、ルカがそろりと俺を見上げた。


俺は目を伏せ、手を離した。

「…いいよ、無理しなくて。さっきはほんと、悪かった。」


「……。」

ルカは何も言わない。

言葉の代わりに、また俺の手を取る。


「…!」

無理させている。

そんなことわかりきっていた。

俺はまた手を振り解くが、そんな俺の手を、ルカは涙目で乱暴に握り返してきた。

俺はたまらず、声を荒げる。


「…だから、無理しなくていいって!俺が怖いんだろ!?

無理やり普通にされたって、俺は嬉しくなーーー」

「怖いよ!!!!」

ルカの大声に、俺は言葉を失った。


「こわいよ、、けど…!!」

ルカは、震えてるのに手を離そうとしない。


なんでだよ、、、


「でも…ハルが……

ハルがもう帰って来ないんじゃないかって、思う方が、、怖かったんだよ!!!」

   

その言葉に俺は、心臓を貫かれた気がした。


ー『許されなくても、向き合え』ー

セツナの言葉が、頭の中でぐるぐると鳴り響く。


座卓の上には、2人分の食事が並んでいる。

部屋の中いっぱいに、ふわりと、いい香りが漂う。


「…ひ、酷いこといっぱい、言ったから。僕も。

美味しいご飯作って、あ、謝ろうと思って…ごめんなさい…。」


美味しいもの作って、謝る。

それは、出会って間もない時、俺がルカに言ったことだ。


「…お前なぁ…」

離さないルカの手を、俺はぎゅっと握り返す。


「俺が提案した作戦、、俺に使うのかよ…」


はは、、と力なく笑う俺に、ルカはほっとしたのか、涙をポロポロとこぼしながらぎゅうっと抱きついてきた。


「悪かった。謝らなきゃなのは、俺の方だよ。」

2度と、傷つけるようなことはしない。

そうルカに伝えると、ルカは泣きながらうんうんと頷いた。



と、次の瞬間ーー


「…ちがう……」

「…え?」


「…悪かったじゃなくて……“ごめんなさい”は!?」

ルカが突然、大きな声で俺に突っかかる。


「……へ…?」

突然の空気の変わりように、俺はついていけず、素っ頓狂な声をあげてしまった。


「セツナが……許すかどうかはお前が決めろって、、そんな感じのこと言ってた!

だから僕は、、まだ怒ってる!!」


ポカンとする俺に向かって、ルカは続けて言った。

「今日は僕が…ハルのこと子供扱いしてやるんだ!ち、ちゃんと、ごめんなさいしなきゃ、、ご飯あげないんだから!!」


ほら!悪いことしたらなんて言うの!?

ふんぞり返って無理して背伸びして自分を大きく見せようとしてるルカを見て、俺は、思わず吹き出してしまった。

「…っ!?なんだよ!笑い事じゃないんだからっ!!」


俺は、はは、と笑いながら頭をかく。

「食事抜きは、やだなぁ。」


ふぅ、と一呼吸おいて、ルカの目を見つめる。

ルカはまだ少し不安なのか、ふらふらと目が泳いでいる。


自分から仕掛けてきたくせに、何ビビってんだよ…

俺はまた、フッと笑いそうになりながらも


ルカの前に改めてちょこんと正座をして、そして、ぺこり、と頭を下げた。


「ごめんなさい。もう、傷つけるようなことはしません。」


ルカは、先ほどまでのオロオロから解放され、パァッと笑顔になった。そして、、

「いいよ!」

と、あっというまに俺を許してくれた。


なんだ、この茶番は、と思う気もちと、ちゃんと許されたかもしれないと言う安堵が一気に押し寄せ、俺は力が抜けてそのまま立ち上がれなくなった。


「早く!早く一緒にご飯食べよう!」

ルカに手を引かれ、やっとのことで食卓に移動する。



繋いだその手は、もう少しも震えてはいなかった。


ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


ーーーーーーーーー


《登場人物おさらい》


⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)

明るいお調子者の吸血鬼

夜と雷は大嫌いで、ガーリックトーストが大好物。

料理が得意!

子供扱いばっかりされるのは、イヤだ!

ハルが、だいすき。


⭐︎海原ハル(魚人)

海が嫌いな魚人。

明るい方だがルカには敵わない。

海を操れる。力が強く、ハル自身はそれをしたくないとずっと思っている。



ーーーーーーーーーー


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


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※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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