【4-1/ハル、ルカ】この手つないで《前編》〜無謀なダイブ〜
『ルカー吸血鬼ー』
「むずいな、今回の課題。」
「どの種族でも対応可能な薬膳料理の研究って、、将来的に使うのか?こんなん…」
「採集したものだったら何使ってもいいんだよね!?じゃー楽勝じゃん!」
今日は僕とハル、セツナ、それからみさおの4人で、グループワークDAY!
ハルが言ってた通り、今日は料理をするんだけど、材料探しから自分たちでやらなきゃならないらしい。
昼間の活動だし、料理だし、みんなで校外におでかけできるしで、僕はスタートから楽しみすぎてずっとウキウキしていた。
「ルカがいてたすかったかも。私、料理は苦手だから。」
みさおが呟き、僕の方を見る。
今日のみさおは心なしか顔色がいい。すこし前に見た時は、とてもしんどそうだったけど…よかった、元気になったみたいだ!
「何使ってもいいったって…どうする?」
「薬膳なら、きのことか芋とか。あと、魚とか。」
魚、と言うワードが出た途端、ハルの表情が一瞬曇ったのがわかった。
ここは、僕の出番だ!
「ハイハイッ!じゃあ、山チームと海チームに分かれて材料集めて、砂浜でバーベキューみたいにしようよ!僕みさおと海チームで魚あつめたーいっ!」
「!!…おい、大丈夫か…?」
ちょっとだけ、ハルが慌てた声を出す。
「…まぁ、私はどっちでも良いけど。」
「じゃ、とりあえず動くか。」
よしよし、セツナとみさおは、乗り気みたいだ。
僕の提案で、ハルとセツナが山チーム、そして僕とみさおが海チームに分かれて動くことになった。
ちょっと無理矢理感はあったけど、海は苦手だと言ってたハルにとっては、山チームで動けるのは願ったり叶ったりだろうって思ってた。
けどーーー
「…そういう、余計な気遣いやめろよ……。
俺は、お前のが心配だわ……勝手に無茶して1人で突っ走るなよ。」
二手に分かれる直前、ハルが小さい声で僕に囁いた。
なんだよ、せっかくハルのためにと思って考えたのに…そんな言い方しなくても…。
ハルは、この学園へきたばかりの時見た僕の恥ずかしい姿を、今でも笑ったり人に話したりせずに内緒にしてくれている。まぁ僕自身、あれ以来色んな場面で隠しきれずに自分からボロを出してるんだけど…
ハルは、前にあやめと海での実習があった時も、すごく辛そうな顔をしてたから、、
だから僕も、一緒にいる時くらいは、ハルが困らないようになんとかしてあげたいと思ってたんだ。なのに……。
そんな気も知らないで、ハルはこうやってすぐに、僕を子供扱いする…。
僕はちょっとだけ、むうっとしてハルを見た。
ハルは僕の不服そうな顔をチラッと見たけど、それ以上は何も言わなかった。
バーベキューは、結局海から少しだけ離れた砂浜でやることになった。
山の方からも海の方からも、よく見える位置。準備しながらそれぞれのチームを待つのに、うってつけだ!
ハルがセツナと山に入ったのを確認してから、みさおと2人で海辺に向かう。
深さがあるところがいいだろうと、防波堤の外側の、少しだけ高い岩場に登ってみた。
下を覗くと、太陽を浴びてキラキラと光る水面のその奥で、魚たちが気持ちよさそうに泳いでいる。
「きれーだねー!海の底までよく見える!」
俺が嬉しそうな声をあげると、ほんとだ。と、みさおも微笑む。
魚たち、気持ちよさそう。僕も一緒に泳いでみたい…!!
「でもこれ、、獲れるかな…?」
「もぐったら、捕まえられそうじゃない!?」
ここぞとばかりに僕は答える。
「えっ…けど待ってここはーーー」
「僕行ってみる!」
輝く海に飛び込んでみたくてうずうずしていた僕は、そう言うが早いか岩場からひらりと水面めがけてジャンプした。
「えっちょっと…ルカ!?」
ドボーーーーン!!!
大きな水飛沫があがり、海水の冷たさが全身に沁み渡る。あー、気持ちいい!
「ルカ!!ここ結構深くて危ないよ!?」
みさおが岩場の上から慌てて呼びかけてくる。
「大丈夫大丈夫!きもちーよー!」
僕は海面から顔を出して、みさおに手を振った。
「飛んで戻ってこれないの!?」
「羽濡れちゃったから、乾くまではむりかも!」
そんな…とみさおは焦った顔をしている。
「あっじゃあ、あっち!そのまま右の方に泳いできて!防波堤より内側に…!」
そんなに心配しなくても、僕は全然平気なのになぁ。
しかたない、みさおに心配かけるわけにもいかないので、言われた通りに泳いでいく。
みさおは岩場から飛び降りて、少し行った先の防波堤の上から手を伸ばしている。
「もどってきたよー」
そう言って、みさおの手を取ろうとしたときーーー
「大丈夫?!ダメだよ無茶しちゃ…ハルが心配するよ。」
ー『…勝手に無茶して、1人で突っ走るなよ…』ー
みさおの言葉に、さっきのハルの言葉が重なる。
また…子ども扱いだ。
僕はみさおの手を払った。
「え…ルカ…?」
「このくらいへーきだって言ってるじゃん!なんだよ、みんなしてそうやって!」
僕だって、守られてばっかじゃなくて、役に立ちたいのに!!
みさおが、とても困った顔をしていたけど、僕は知らんぷりして目を伏せた。
その時、水中の僕の体の遥か下に、フ…と魚の影が横切った。
「あ、あれ結構大きいかも」
「…え、ちょっと待っーーー」
おっきい魚捕まえて戻れば、みさおも、ハルも、僕のこと見直すかもしれない。
僕はみさおの言葉を無視して、そのまま海の中へと潜った。
海の中はとても澄んでいて、思ったよりも明るかった。
さっきこっちの方に、泳いで行ったように見えたんだけど、、
影が横切った方へぐんぐん泳いでいくと、突然ザザザァっと、目の前にそれが現れた。
水面から差し込む光を受けて、ぎらぎらと銀色に輝く鱗の、大きな、、
いや、とんでもなく大きすぎる、、、魚が………。
「ーーー!!!!?」
その目が、僕を捉えたようにみえた。
僕は慌てて水面目指して泳いでいく。
まずい、まずいまずい!食べられる!!!
慌てたせいで、ごぼぼっと口から空気が溢れ出る。苦しい……けど、大丈夫あと、少し……!
大きな魚の鋭い歯が、僕の足をかすめた。
その瞬間、、
水面から伸びてきた手に腕を掴まれて、ものすごい力で海から引っ張り上げられた。
魚がつられて、水面から飛び出す。
ドカ!!!と、鈍い音がして、そのまま魚は砂浜に叩きつけられた。
引き上げられた僕も、砂浜に投げ出される。
目の前の景色がぐるぐると回っている。
心臓がばくばくいって、止まりかけた呼吸が落ち着くまでに、かなり時間がかかってしまった。
「ルカっ!ルカ大丈夫!?」
青ざめた顔のみさおが僕に駆け寄り、顔や身体を触って怪我がないか確認する。
まだ息は整い切っていなかったけど、
「へへ、ごめん、ちょっと慌てちゃって…」
そう言って笑った、そのときーーー
「笑い事じゃないだろ、バカ!!」
ビクッとして振り向くと、そこには、鬼のような形相で立っているハルがいた。
あ、、しまった。みられてたのか…
ハルの右腕が、びしょびしょに濡れている。
さっき僕を引き上げてくれたのは、ハルだったみたいだ。
わかってた、今のは僕が悪かったって。
みさおが心配していたのに、それを無視して“無茶”をしたって。
けど、つい謝罪よりも先に、言い訳が口をついて出てしまった。
「…だって、おっきい魚獲れれば喜んでもらえるかなってーー」
「そう言う問題じゃないだろ!散々心配かけといて最初に言うことがそれか?」
「…でもーー」
「でもじゃねぇよ、さっき言ったろ!無茶して1人で突っ走るなって……そんな簡単なことも守れないのかよ!」
何も考えてない、お前は子どもだと、また言われた。悔しい。僕だって、さっきはハルのこと考えて動いたのに。今だって、みんなのこと考えて、動いたつもりだったのに。
なんで、なんで僕ばっかり……!!!
「……なんだよ…そうやって、すぐ子ども扱いして怒って……」
「……は?」
「僕だって、できることしようと思って、頑張ったのに!なんだよ!!」
僕のことなんて全然わかってくれない。
イライラと、悲しいと悔しいが、全部ぐちゃぐちゃに混ざって、どんどん膨らんでいく。
突然の僕の爆発に、ハルもセツナも驚いているみたいだったけど、もうそんなのどうでもよかった。
「…ルカ!ちょっと…」
みさおが止めに入ったけど、口から次々飛び出す僕の言葉は止まらない。
「せっかく山チームにしてあげたのに…ハルが、ハルが嫌がるから僕が海チームになったのに…!!」
「!!おい…っ…」
「ハルが、、ハルなんて……海怖くて、、泳げないくせに!!!!!!!!」
「……っ………!!」
言ってはいけないことを、口にした。
けど、もう、止められなかった。
僕はそのまま、また海の方へと駆け出した。
ーーーーーーーーーー
『ハルー魚人ー』
破天荒で無鉄砲なルカが、ただただ心配なだけだった。
俺のやり方で縛るつもりも、押さえつけるつもりもなかったんだ。
だけどーー
「僕だって、できることしようと思って、頑張ったのに!なんだよ!!」
「ハルが、、ハルなんて……海怖くて、、泳げないくせに!!!!!!!!」
ルカは、勢いそのままに俺の秘密を暴露して、また海へと向かって走っていく。
俺はただ焦ってルカを追いかける。
ルカはそのまま、浜辺からザブザブと海の中に入っていった。
「…ルカ!!」
腰のあたりまで海水に浸かるあたりで振り向いたルカは、怒りと悲しみが、涙でいっぱいのその瞳に滲んでいるようだった。
「…どうしよう、ルカが…!」
みさおが咄嗟にルカを追おうとするのを、セツナが止める。
「ハルが話さなきゃ、だめだ。
もしやばかったら、手ェ出す。」
波打ち際まで追いかけて、俺の足は、止まってしまった。
先ほど防波堤から夢中でルカを引っ張り上げたときとは比べものにならない震えが、恐怖と共に全身を駆け巡る。
目の前は海だ。
だめだ、おちつけ、冷静でいなきゃだめだ。
海面が、わずかにゆらりと揺れたように見えた。海は……俺に気づいてる。
「ルカ…戻ってこいって。」
「…いやだ…!」
「わがまま言ってんな。ほら…」
頼むから、早く海から離れてくれ…
そんな願いも虚しく、ルカはまた一歩、沖の方へと後ずさる。
「…ルカ……」
「…そんなに戻って欲しいなら…ハルが捕まえにくればいいじゃん…」
「は…?」
「悔しかったらきてみなよ!ほら!
怖いから、無理なんだろ!?」
海面がまたぐらりと揺れる。
「ルカ…やめろ…。」
挑発に、乗るな…冷静にーーー
「魚人のくせに、海、怖いとか!
ハルの…よわむし!!!」
何かが爆ぜた音がした。
「……やめろって……言ってんだろっ!!!!!」
俺の叫びと同時に
ズズ……ン…
風もないのに海が大きく渦巻き、波が一際高く跳ね上がる。
次の瞬間ーー
「…!!?」
ゴボボッ…と大きく盛り上がった海面が、海に浸かったままのルカをとらえ、そのまま高く高く持ち上げた。
「ルカ!!!」
セツナが津波のように盛り上がる海水に向かっていくが、沖から押し寄せる高波に阻まれ、近づくことができない。
ルカの、胸から下は、海の中。
「わ……えっ…うそ……!?」
「お前こそ、そうやって困らせればなんとかなると思ってんだろ。いつだって突っ走れば俺がフォローして……
能天気に笑って人の触れてほしくないとこまでそうやって刺激して…なに?わざとやってんの?」
「ハル…っ!?だめ!やめて!」
みさおが俺を止めに入るが、その声は俺には全く届かない。
「…お前…海がどれだけ怖い場所か、まだわかってないだろ。」
ルカは焦って泣きながらジタバタともがくが、首元までじわじわと上がってくる海水を避ける術はない。
少しずつ海に“沈んでいく”ルカを、俺は氷のように冷たい目で睨みつけたまま。
「ーーいっぺん、溺れてみろよ。」
言葉が終わるより先に
海水が、ルカの全てを包み込んだ。
ーーーーー
「ハルっ!!!!!」
耳をつんざくほどのみさおの怒鳴り声が俺に向かって飛んできた。
と同時に
景色がぐるりと回転して、身体に、強烈な痛みが走る。
みさおが、俺の身体を投げ飛ばし、俺は受け身も取れないままもろに地面に叩きつけられたのだった。
「って…何しやがる!お前ふざけっーーー」
バチィィン!!!
体勢を立て直す間もなく、俺の頬にみさおの強烈な平手が飛んできた。
目の前が、一瞬真っ白になる。
「ふざけるなはお前だよ!バカ!!!」
馬乗りになったみさおは俺の胸ぐらを乱暴につかみ、また殴りかからんばかりの勢いで吠えたてる。
「今あんたがルカに何したか、ちゃんと見ろ!!!」
俺が、ルカにーー
視線を、みさおから海へとうつす
荒れ狂う波と、重力に反し高くせり上がっていた海水は崩れ落ちるように引いていった後だった。海は、まるで何事もなかったかのように、元の静けさを取り戻している。
その波打ち際で
ぐったりと倒れこみ動かない、ルカの姿。
身体中から、一気に血の気が引いた。
「……ぁ…」
セツナが大きなタオルでルカをくるみ、そのまま保健室へと運んでいく後ろ姿と、俺にしがみついたまま涙をこぼすみさおをただただ見つめる。
俺は、その光景を目の当たりにしてようやく、
自分がしでかした事の重大さに、気づいた。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は不定期です。
活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。
感想や評価など、いただけると嬉しいです。
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《登場人物おさらい》
⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)
明るいお調子者の吸血鬼
夜と雷は大嫌いで、ガーリックトーストが大好物。
料理が得意!
子供扱いばっかりされるのは、イヤだ!
⭐︎海原ハル(魚人)
海が嫌いな魚人。
実は海を、操れるが、、、
明るい方ではあるが、ルカには敵わない。
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こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。
(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)
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