【2-3/ハヤテ、セツナ】きみのぬくもり③〜言えなかったこと〜
『セツナーヨルムンガンドー』
「命を軽んじるやつは、二度と森に足を踏み入れるな!」
部屋中に響き渡るほどの怒鳴り声が、俺たちの背後の大きな窓をビリビリと震わせ、鬼のような鋭い視線が俺たちの背筋を凍らせる。
あの日
命懸けでハヤテを見つけたあと俺は、あいつの無事を確認した後また、意識を失った。
うっすらと、霞む意識の中、帰り道の森の中でも運び込まれた保健室でも大目玉をくらい(特に俺)、そして今ーーー
2人揃って部屋のカーペットの上に正座させられ、学園長から直々に説教を受けている。
「どれだけの人に迷惑をかけたのか、きちんと考えて反省しなさい!!!
「……はあ。」
「なんだその気の抜けた返事は!!!
ことの重大さを、わかっているのか!!!?」
怒りの矛先が、俺を向く。
悪いことをしたとは微塵も思っていないが確かに危険は侵したし、できるだけ神妙に真面目に話を聞いていたつもりだった。
が、ついついやる気のなさが言葉に滲み出てしまったようだ。
度重なる大人たちからの怒声によってビビリメーターが振り切れてしまったハヤテは、俺の隣で涙と鼻水にまみれてガクガクと震えながら、壊れたレコードみたいに延々と“ごめんなさい”を繰り返していた。
*
長く厳しい叱責を経て、俺たちは『3日間の謹慎処分』となった。
最悪退学でもしゃあないかと思っていたので
「…なんだ、そんなもんなのか」
そんな感想がうっかり口から出そうになったが…拳に力を入れてなんとか耐え抜き、「その程度で済ませてもらえたことに感謝してます」みたいな“雰囲気”を、なんとか顔に貼りつけておいた。
何はともあれ
この騒動のそもそもの原因を作ったハヤテも同じく謹慎処分のみで許されたことに、俺はただただ安堵した。
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『ハヤテー天狗ー』
僕はもう、一生分くらい泣いたかもしれない…
ようやく先生たちの怒りの眼差しから解放されて、僕はしぼんだ風船のようにしおしおになっていた。ベッドに座って、腫れぼったい目で呆然と遠くを眺める。
セツナは、あんなにいっぱい怒られたのに、いつもと全然変わらなく見える。部屋のソファに座って、1人でスマホをいじっていた。
「…セツナ?」
「なに。」
セツナはスマホを見つめたまま返事をする。
「……怒ってる…?」
「……。」
返事がない。
僕はまた少し悲しくなった。
こっちを見てもくれない。
きっと、まだすごく怒ってるんだ…
そりゃそうだよね、もとはといえば僕のせいで、こんなことになったからーーー
「おい。」
急にすぐ近くで声がして、びっくりして顔を上げる。
ベッドに腰掛けたままの僕を、セツナが見下ろしてる。
「ひぁ!?はい!?」
驚きすぎて変な声が出た。
「そういうとこ、腹立つ。」
「…え……」
セツナから、予想外の言葉が飛んできた。
え、なに?腹立つ?僕、また怒られてる??
目を白黒させる僕を見て、セツナは眉間に皺をよせる。
「っあぁ…だから!」
セツナがドスンッと隣に腰掛け、スマホを脇へ放る。
「言いたいこと、あるだろ。」
セツナにじっと見つめられて、僕は、胸がぎゅっと苦しくなる。
「今言え。怒るぞ、まじで。」
「ひっ……ごめんなさ……」
「すぐ謝んな!タイミング考えろ。」
セツナは、僕から目を逸らさない。
顔が真っ赤になる音がする…
「なんで、あんなことした?」
なんで、って…。
「…なんでって、、だって……」
どうしよう。
あの時はあんなに、僕の話聞いて欲しかったのに。
セツナはまたため息をつく。
「はっきりしろ。めんどくせぇ。」
言ったら、怒られるかもしれない。
拳をぎゅうと握る。
「だって……りんちゃんが……」
「…は?」
これ以上言ったら、、嫌われるかもしれない…
でもーーー
「だって…!!
…だって、セツナが、りんちゃんばっかり……」
「……………。」
予想外の答えだったのか、ポカンと口を開けたまま僕を見つめていたセツナだったけど、、
しばらくすると、頭をぐしゃぐしゃとかいてそっぽを向く。
「…なんだよ、やきもちかよ。」
「!!なっ…!!」
いきなり図星をつかれ、僕は飛び上がってしまった。
「…そんなんじゃ……」
「図星だろ。」
セツナは僕に鋭い目を向ける。
「あの時態度、最悪だったな。」
「集中しねえ、話も聞かねえ。
で、1人で消える。」
「散々迷惑かけて。このバカ。」
「…だっt.....」
「今、“ごめんなさい”だろ。」
「ふぇっ…ごめんなさい…!!(涙)」
さっき一生分泣き切ったと思ったのに、また涙が溢れてしまった。
どうしたら僕は、ゆるしてもらえるんだろう。
グスグスと、涙をすする音だけが響く。
…少しの沈黙の後
「…俺も。言うことあった。」
セツナからの突然の言葉に、僕はびっくりして顔を上げる。
「でかい蜘蛛出た時。りんのこと守ったろ」
「え…」
そういえば、そうだあの時、危ないって思って、夢中で……
「あれ、えらかったな。」
体が、ぶわっと熱くなった。
涙目で真っ赤な顔のまま見上げる僕を、セツナはまだじっと見つめている。
先程までの鋭さと違う、なんだか柔らかい、優しい視線。
セツナに…褒められた…!!
心臓がぴょんぴょん飛び跳ねる。
セツナは、立ち上がり、ベッドの端に放り投げていたスマホを拾うと、それで僕の頭をポンと叩く。
「あ、、ありがとう、ありがとう!僕…」
僕はそう言って、立ち上がったセツナの手を取ろうとした……その時。
ひゅっ。
風を切る音がするくらい早く
セツナの手が、僕を避け
持っていたスマホが、ソファの向こうまで飛んでいった。
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《登場人物おさらい》
⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)
いつまでも子どもな見た目の、一人前になりきれない天狗。
ビビりでよく泣き、逃げ足だけは超はやい。
セツナが大好き。ヤキモチ妬いちゃう。
⭐︎毒島セツナ(ヨルムンガンド)
自らの毒で自分もダメージを被るヨルムンガンド。
口数少なく、目つきが悪い。
必要以上に近づくことを好まない感じ、、?
いろいろ気にかけてはいるけど、顔に出ないので伝わらないことが多い。
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