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【2-2/ハヤテ、セツナ】きみのぬくもり②〜深い森の中で〜


『セツナーヨルムンガンドー』


数歩先も見えないくらいの闇の中を

俺はひたすら走り続けた。


ハヤテが何を考えてるのか、全くわからない。


怖がりのくせに

泣き虫のくせに


こんな真っ暗な森で、身動き取れなくなったらマジで死ぬかもしれないのに


そんなことを考えている間も、四方八方からひっきりなしに巨大な虫が襲ってくる


「っあぁもう、しつけぇなぁっ!!!!!」


頭に血が上り毒を吐きそうになるが、無事かどうかもわからないハヤテの顔が頭をよぎって、すんでのところで持ち堪えた。


今吐いたら、ハヤテも死ぬーーー



背後から飛びかかってくる巨大な(おそらく)クワガタムシをギリギリで避けると、俺は近くの木の枝へ飛びうつった。

そのまま枝から枝へとつたっていき、できるだけ高い位置からハヤテを探す。


だがやはり、どこを見ても同じ森、同じ暗闇。


夜行性の他の動物と違い、夜目が利かない俺にはこの暗闇は分が悪すぎる。


「…っくそ……」


落ち着け

今できることを、考えろ



荒くなった呼吸を無理やり鎮めて、俺は何度かゆっくり深く息を吐く。



諦めない

見えないなら、“他”を使う。


目をつぶって

ハヤテの気配だけを追いかける



ちっこい身体。

ビビりでヘタレなとこ。

やたらと速い逃げ足。

けどどんくさいから、さっきもこけて血を流してた。

あと、ギャーギャーさわいで暴れまくって、涙と鼻水でぐちゃぐちゃな泣き顔。


それから


俺に必死でしがみつく手から伝わってくる

あいつの“体温”。



「……ただのクソガキじゃん。」

こんな状況なのに、あいつの顔を想像したら、なぜか笑いが込み上げてくる。



ふうぅ…と1つ、大きく息を吐いて

鼻からゆっくり息を吸う。

目をつぶったまま、首をぐるりと大きく回す。


「……右斜め後ろ…あー、、ちがう。もうちょい奥か……?」


ーー俺の位置よりはるか後方の、暗闇の中。



微かに、だが確かに

あいつの小さな“熱”と“におい”の気配がする。



俺はゆっくりと目を開けた。



「………見つけた」





俺は勢いよく木から飛び降り

そのまままっすぐ、ハヤテの元へと飛ぶように走った。



ーーーーーーーーーー

『ハヤテー天狗ー』



暗い。

怖い。どうしよう…


なんであんな行動をとったのか…今更、死ぬほど後悔してる。


セツナがりんちゃんと森を出た後…

僕は先生の言葉も聞かずに、1人で森の中へと入っていった。


もうどうでもよかった。僕なんていない方がいいんだと思った。


けど、

森のさらに奥へと踏み込んだ途端、はじめよりも大きい虫たちが次々に、僕に向かって襲いかかってきた。


パニックになって、めちゃくちゃに逃げ回る。

僕は逃げ足だけは誰よりも速いから…

けれど気づけば、自分がどこから来たのかすらわからなくなってしまった。



倒木と岩の陰に身を潜めて、どのくらい時間がたったろう。


もう、少し先の地面も見えない、暗闇の中、僕は1人、小さくなって震えていた。



どうしよう、このままここにいても、森からは出られない…


岩の影からそろりと頭を出す。

あたりは静かで、何もいないみたいだ。


早く、学園に戻りたかった。

早くセツナに、会いたかった。

…でもセツナは、違うかもしれない……


無事に帰れても、、隣に居場所がなかったらどうしよう


会いたくなかったって言われたら、どうしよう…



最悪な再会シーンを想像して、、

頭をブンブンと振る。



でもやっぱり……

「…セツナのとこ、帰りたい……」


涙を拭いて、そろりと体を起こす。

少しずつなら、動けるかも…



一歩、また一歩と暗闇に踏み出した、その時ーーー


ドカッ!!

後ろから急に、蹴り倒されたような衝撃。


吹っ飛ばされて、前方の木に思い切り体を打ちつけた。


「っ!!!!いっっ……!!」

痛くて苦しくて、息ができない。


涙がボロボロとこぼれ落ちる。



やっとのことで顔を上げると、そこには僕の背丈よりはるかに大きい、とぐろを巻いた大蛇がいた。


ズズ…ズ…

何かを引きずるような音がする方へチラリと目をやる。

あ…今、あの尻尾のとこで、吹き飛ばされたんだ…



ーーー“死ぬ”かもしれない。



一気に現実味を帯びたその不安に押しつぶされる間もなく、蛇は空高くもたげた鎌首を、僕めがけて勢いよく振り下ろした。


咄嗟に頭を庇う。けどもう、だめだ…


「っ……!!

セツナぁっ……!!!」







うずくまる僕のすぐ近くに、バサっと何かが落ちてきた。




シュワァアアァァァ………という、なんとも形容し難い異様な音と、何かが焼けこげたような臭い


それから


どさり。

何かが、地面に倒れる音。







……あれ


……生きて、る?



ぎゅっと、固くつぶった目を

恐る恐る開ける。



その目に最初に飛び込んできたのは

首元を大きく噛みちぎられ、大量の血を流してぴくりとも動かない大蛇


その傍らには、ゼェゼェと荒く息を切らしたままそれを見下ろす、セツナの後ろ姿。


「…ぁ……」

セツナが、きてくれた…


僕のためにーー




と、次の瞬間

ギラリとした鋭い目が僕を捉える。

片手で襟首を掴まれて、そのまま乱暴に持ち上げられ


そしてーーー


「……っなにを…やってんだよ、お前はっ!!!バカやろう!!!!!」


これまで一度も聞いたことがない、大きくて怖いセツナの怒鳴り声に、僕は言葉を失った。


怒りで滲んだ琥珀色に光る鋭い目

僕を持ち上げてる、血管が浮くほど力強く握り締められた拳


口元からは赤黒い血が滴っている。

……あ、、あの蛇の、血だ。



もう一方の手が、振りかぶるように持ち上がる


「…っ!!」

僕は咄嗟に目をつぶる


けれどその手は、僕を叩かなかった


ドカッ!!

鈍い音をたてて、セツナの横の木の幹に拳がめり込む。


「……死ぬとこだったんだぞ…」


震えているのは、、声だけじゃない。


「今、俺の目の前で…

……死ぬとこだったんだぞわかってんのか!?」


僕を掴む手も、地面を踏みしめる足も、まっすぐ僕を射抜く瞳も…僕に向けられたその全てが、今にも崩れ落ちそうなくらい震えていた。


セツナが感じた恐怖や怒りや心の痛みが、叩かれるよりもずっと鋭く重い“痛み”となって、僕の身体中を駆け巡った。


「…ごっ……ごめ…なさ……」

僕のしゃくり上げる声と、セツナの荒い息遣いだけが、森の中にやけに大きく響く。


と、次の瞬間


「…っ……」

セツナが短く唸って、僕を掴んだ手から力が抜けた。

ぐらりと大きく身体が傾き、ゆっくりと木にもたれかかるように、力なく崩れ落ちていく。

全身が震え、額からは大量の汗。呼吸は荒く乱れ、苦しそうに眉間にぐっと力が入る。


僕は倒れて動かない大蛇を見て、それからまたセツナを見る。


僕のせいで、また“無理”したんだ……

「っ!セツナ!!」


「…平気。騒ぐな……反省してろ。」

真っ青な顔で、シシっと、ハエを払うように僕の前で手をひらひらさせて、俺に近づくなと言いだけなセツナ。

そのまま、僕からふいと顔を背ける。


まだ怒ってる。


バカみたいにやきもち焼いてムキになって、大事な人に迷惑をかけた


どうしようもなく苦しくなって恥ずかしくなって、僕は泣きながらセツナのシャツにぎゅっとしがみつく。


「…ごめんなさい…ごめんなさい……」

嫌いに、ならないで……




しばしの沈黙のあと


セツナが、ふう。とため息を吐き、ぐるりと首を回して天を仰ぐ。



「あぁ…

まじでだりぃ」

そして、ゆっくりこちらに向き直り、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの僕にゴツン、と軽く頭突きをした。




「………よかった。生きてて。」




その声は今まで通り、不機嫌で、めんどくさそうな“いつもの”セツナの響きで



僕は、また涙が止まらなくなってしまった。


ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


ーーーーーーーーー


《登場人物おさらい》


⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)

いつまでも子どもな見た目の、一人前になりきれない天狗。

ビビりでよく泣き、逃げ足だけは超はやい。

セツナが大好き。ヤキモチ妬いちゃう。



⭐︎毒島セツナ(ヨルムンガンド)

自らの毒で自分もダメージを被るヨルムンガンド。

口数少なく、目つきが悪い。

必要以上に近づくことを好まない感じ、、?

いろいろ気にかけてはいるけど、顔に出ないので伝わらないことが多い。

蛇なので夜目はきかないが、においと温度で‘獲物’をとらえることができる。


ーーーーーーーーーー


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


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※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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