【2-1/ハヤテ、セツナ】きみのぬくもり①〜おいてけぼりの午後〜
『ハヤテー天狗ー』
「わあ!かわいい!」
僕の目の前で、りんちゃんが、セツナの周りに集まってきた動物たちを見て、嬉しそうな声をあげている。
今日は、セツナとぼくと、りんちゃんの3人で、『動物の生態観察と、危険かいひの……ええと……
……“大事な授業”を受けるため、学園の外の森へやってきたのだけど…
「…なんか、いつも勝手に寄ってくる。」
「えー!すごい!動物に好かれるタイプなの!?」
「…ちっこいのには、好かれるぽい。」
隣で楽しそうに話し続けるりんちゃんと、まんざらでもなさそうなセツナの様子を見て、、
僕はさっきから、なぜかモヤモヤとしてしまっている。
盛り上がってる2人を見てると、その間に入りづらい。なんだか僕だけ置いてけぼりをくってるみたいで…。
僕はこういう空気がすごく苦手だ。
2人よりも少し後ろを歩きながら、僕は小さくため息をついた。
……セツナと2人なら、よかったのに。
そんな気持ちが心の奥底から湧いてきて、ハッとして慌ててブンブンと首をふる。
いまは、授業の時間だから!
勉強に集中しないとーーー
そんなことをもやもや考えていたら、足元の木の根っこに引っかかって、派手に転んでしまった。
「いだっ…!!」
その声に、前を歩く2人が振り返る
「ハヤテくん大丈夫!?」
「…よく周り見ろよ。」
恥ずかしい…!!
涙が溢れてきそうになるのを必死で堪える。
ふとみると、ぶつけた膝から、血が出ていた。
いつもなら、きっと、泣いて騒いでたかもしれない。
「大丈夫?」
りんちゃんはしゃがみこんで僕の顔を覗き込み、心配そうに言った。
「痛そうだよ、立てる?」
その声はあたたかくて、泣きそうになる心を優しくなでる。
でも、
その優しさが、余計に悔しかった。
だって、セツナは…大丈夫か?って言ってくれないから。
本当は膝がずきずきして、涙が出そうなのに。
「…全然、なんてことないよこんなの!」
僕はわざと声を張り上げて、りんちゃんの手を振り切るようにして立ち上がった。
セツナは、いつもと全然かわらない。
けど、、転んだ僕よりも、やっぱりりんちゃんのこと、すごく気にかけてる感じがする。
はぁ、なんかモヤモヤがおさまらない
はやく終わればいいのにこんな授業…
もう……
「…ハヤテ!」
急に名前を呼ばれてハッと顔を上げると、セツナが間近で僕を見下ろしていた。
「今先生の話、聞いてた?」
「えっ!?…えぇと……」
まずい、全然聞いてなかった。
セツナはじっと僕の顔を見る。
気まずくて情けなくなって、つい目を逸らしてしまった。
「…人の話ちゃんと聞け。死ぬぞ。」
セツナはため息をついてそう言うと、またりんとならんで僕の前を歩いて行った。
なんだよ、僕にはそんな怖い顔ばっかり…
森の少し奥までくると、日差しが鬱蒼と茂る木々に遮られ、足元がふっ、と暗くなった。
その途端ーーー
ガサガサガサっ!!!
すぐ近くで物音がして、僕のすぐ後ろの草むらから、巨大な蜘蛛が飛び出してきた。
「!!きゃぁぁぁあぁぁ!」
僕が悲鳴をあげる間もなく、りんちゃんが大きな叫び声を上げる。
僕は反射的に飛び退き、りんちゃんを引っ張って大きな岩の影に隠れる。
セツナはすぐに僕たちの逃げ込んだ岩を隠すように立ち、蜘蛛を睨みつけた。
…と、次の瞬間、、
ふぅぅ…と、りんちゃんから力が抜けて…そのままパタリと倒れた。
「りんちゃん!?」
僕の声にセツナが振り向く。
一緒にいた先生が、あっという間に蜘蛛を撃退してくれた。
「…気絶してるだけだ。」
セツナがりんちゃんの前に膝をついて自分のシャツを脱ぐと、りんちゃんをそれにくるんだ。
「保健室つれてくわ。」
「え、、えっ!?」
僕だけ…置いてかれる…!!!?
とっさにセツナのズボンをつかんだが、セツナはめんどくさそうに僕を見下ろし、
「お前は授業、まだ受けられるだろ」
そう言い放って、りんちゃんだけをつれて森を出ていった。
そんな…
僕だけ、、先生とこんな森で置き去りなんて…
セツナの後ろ姿が遠くなっていくのを見つめていたら、悔しくて、悲しくて、なんだか無性に腹が立って涙があふれた。
そうやって、りんちゃんばっかり…
「…もういい……」
どうせ僕のことなんか、もうどうでもいいんだ
ヤケクソになり、僕は泣きながら1人で森の奥深くへと走って行った。
先生が後ろから何か叫んでいたけれど
もう僕の耳には何ひとつ届いていなかった。
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『セツナーヨルムンガンドー』
今日はなんだかハヤテがおかしい。
授業に関してはいつも真面目なやつなのに、さっきから人の話を全然聞いちゃいない。
「すごい!動物に好かれるタイプなんだ!」
「…ちっこいのには、好かれるぽい。」
楽しそうに話し続けるりんの話に適当に相槌をうちながら、少し後ろをトボトボと歩いている“ちっこいやつ”に、ちょいちょい視線は送っていた。
注意力も散漫。足元の木の根にすら気づかず、派手に転んでいた。
「ここから先は危険区域です。突然襲ってくる虫がいますので、みなさんしっかり周りを見て歩いてください。数匹、各々撃退方法を考え実践して、本日の授業は終了となります。」
先生が俺たちに呼びかけた。
「…はいっ!!」と、少し震えながら返事をするりん。
ハヤテは…ほら、また聞いてない。
「…ハヤテ!」
俺が声をかけると、ハヤテはビクッと俺の顔を見上げる。
…何やってんだよ、まじで…。
「…人の話ちゃんと聞け。死ぬぞ。」
その後もやたら塞ぎ込んでるっぽかったが、もうそんなこと構ってる余裕もなかった。
ここから先の危険区域のヤバさは、俺はすでによく知っている。
ビビり散らかすハヤテと、泣き出すであろうりんを守り、自分も倒れず動ける方法…
俺が囮になるのが最善か?
作戦を練りながら暗いエリアに一歩踏み込む。
その途端、草陰から蜘蛛が現れた。
「やっぱでけぇな…」
りんとハヤテをとりあえず隠さないと…
と、思った瞬間、
ハヤテが素早く、りんを引っ張って岩陰に隠れたのを見た。
本能で体が動いたのだろうか。
俺に泣きつくよりも先にりんを守ったハヤテを、俺は少し見直した。
「やるなぁ、お前。」
ふっ、と笑って呟くと、俺は2人が隠れた岩の前に立つ。
部屋に戻ったら、褒めてやろう。
きっとめちゃくちゃ喜ぶんだろうな…
そんなことを考えていたら、ハヤテの叫ぶ声が聞こえた。
驚いて振り返ると、岩陰でりんが倒れていた。
…俺も注意力散漫だ……
一瞬蜘蛛に隙をつかれたかと思ったが、ただ恐怖で気を失っただけらしい。
しかたなく、着ていたシャツでりんをくるみ、一旦保健室に置いてこようと立ち上がると、
ハヤテが俺のズボンをつかみ、泣きそうな顔でこっちを見上げる。
1人で待たせるにはここは危険だが、今は先生も一緒にいる。
早めにりんを届けてすぐ戻れば、さっきりんを守れたこいつなら、なんとか回避できるだろう。
だから
「お前は授業、まだ受けられるだろ」
ハヤテにはそう言い残し、俺はりんを抱えて森を出た。
*
そんなに時間は経っていないはずだった。
しかし、急いで戻った俺は、先ほどハヤテたちと別れた場所に残された書き置きを見て、一気に血の気がひいた。
ー烏丸ハヤテ単独行動のため後を追います。じきに日が暮れ非常に危険ですので、くれぐれも1人で勝手な行動をとらぬよう。他の先生に、応援要請を。ー
「…なにを、やってんだ…あいつは……っ!!!」
もう日が落ちる。
俺は書き置きの指示を一切無視し、四方から襲いかかる虫どもを蹴散らして、森のさらに奥へと1人突き進んでいった。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は不定期です。
活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。
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《登場人物おさらい》
⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)
いつまでも子どもな見た目の、一人前になりきれない天狗。
ビビりでよく泣く。
逃げ足だけは超はやい。
セツナが大好き。ヤキモチ妬いちゃう。
⭐︎毒島セツナ(ヨルムンガンド)
自らの毒で自分もダメージを被るヨルムンガンド。
口数少なく、目つきが悪い。
必要以上に近づくことを好まない感じ、、?
いろいろ気にかけてはいるけど、顔に出ないので伝わらないことが多い。
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こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。
(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)
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