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【4-2/ハヤテ、ルカ】不完全な翼で〈後編〉〜落雷の限界突破〜

『ハヤテー天狗ー』


どのくらい時間が経ったろう。

気づけばあたりはますます暗くなって、僕とルカは2人でくっついたまま、震えながら助けが来るのを待っていた。

しかも、運が悪いことに、、ぽつん、ぽつんと、雨が降ってきた。


「今日雨降るなんて言ってなかったよ…(泣)」

「雨宿りできるとこ、どこかないかな…」

僕は、ちょっと探してみよう、と言って、ルカの手を繋いだままそろりそろりと場所を移動する。



2人でちょうど隠れられるくらいの洞窟を見つけた頃には、雨もじゃぶじゃぶと本降りになり、ゴロゴロと雷の音が近づいてきていた。


「さっきのハヤテ、まだ帰ってこないね…」

ルカが震えながら呟く。


「多分まだ出口探してるのかも、、先生のところにたどり着けたら、戻ってくるはずだから…」

「そんな、、じゃあもしかしたらまだずっとここn……」

ゴロゴロゴロ

ドカーーーーーン!!!!!


「「うぎぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」」


2人揃ってすごい悲鳴をあげてしまった。

まずい、まずいよこれ、、


「ごめん、ごめ…僕動けな…い……」

ルカはすっかり腰が抜けてしまったように、僕にしがみついてブルブルと震えている。

僕もさっきから涙が止まらないけど、もうルカに向けてなのか自分に向けてなのかわからないけど、ただひたすら「大丈夫、大丈夫」と繰り返し呟いていた。




それからしばらくして、“僕”が、洞窟からすこし離れた木の上からバサッ!と降りてきた。

「!!」


手には長い長い蔓を握りしめ、髪には葉っぱがたくさん絡まり、身体中擦り傷だらけだった。

「…ごめん、大変だったね……」

僕がそう声をかけると、“僕”はにっこり笑って僕に近づきコソコソ、と耳打ちしてから“上”を指差し、そして、煙のように消えた。


ああ、、そういうことか………


「…どうしたの…?」

不安そうに聞くルカに、僕は浮かない顔をして答える。


「……上に…のぼれって。」

「…上?」

「…木の、いちばん上…。

一番高いところまで登って、この林の中から顔を出さなきゃいけないって。」


「どういうこと…?」

ここの木たちは、横にはいくらでも移動ができるけど、上には伸びられないみたい。だから、助けてもらうには、上に上に登って行って、林の“外”から引っ張り出してもらわないといけない。

林の中に一歩でも先生が入れば、僕らと同じ穴の狢というわけだ。


話を聞いたルカは、絶望的な表情をしている。


僕らの不安をさらに煽るかのように、雷鳴は近づき、雨脚も強まっていく。

涙が溢れそうになるたびに枝葉はざわめき、空からは容赦ない雨粒が叩きつけられた。


僕も雷は怖いし、何より高いところはもっと怖い…けどーーー

ルカもきっとこの雷雨が苦手なんだ。

羽も怪我してしまったみたいで、まともに飛ぶことも難しい。


そもそも雷に打たれるかもしれないこの状況で、高いところに登るなんて命取りなことは普通はできない。



そう、できないんだ。


“天狗の僕”以外にはーーーーー。




ーーーーーーーーーー

『ルカー吸血鬼ー』


雷鳴、暗闇

僕はこの2つが一番嫌いだ。


さっきまで楽しく授業を受けていたはずなのに、気づけば涙でぐしゃぐしゃになりながら、大雨と雷が降り注ぐ林の中の洞窟で、ハヤテと小さくなってブルブル震えている。


しかも、ハヤテは木に登らなきゃ助からないっていう。

…冗談だよね…?

こんな天気で高い木なんかに登ったら、雷に打たれてあっという間に黒焦げだよ………


絶望に打ちひしがれる僕。

すると、ギュッと手を握ったままだったハヤテが、ふとその手を離して僕の顔をのぞいて言った。

「ルカ、ちょっとだけ待っててくれる?」

「…え…?」


ハヤテは、そういうなり洞窟から飛び出して、雨の中何かを拾ってもどってきた。

手に持っていたのは、さっき戻ってきた“ハヤテ”が持っていた長い蔓だった。


「僕、ちょっと木の上まで行ってくるからーー」

「…!!!?」


僕は心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらい驚いて、ハヤテの腕を掴んだ。


「…大丈夫だよ、ちょっと先に、これ結ばせて…」

僕の動揺をよそに、ハヤテは僕の身体にぐるぐると蔓を巻きつけキツく縛った。

そして、もう一方の端を自分の身体に。

長い長い蔓で、僕とハヤテがつながった。


「えっこれ、何…」

「僕が木の上に登って、先生に見つけてもらったら、きっと引っ張り上げてくれるから。

ルカはほどけないようにその蔓、しっかり持って、洞窟のとこに隠れてて。」

「待っ…待ってよ!そんなことしたら危ないだろ!雷…落ちるかもしれない……」


「大丈夫だよ、僕には“落ちない”から。」


「……へ?」

…なにを、言ってるんだ、ハヤテは………

意味がわからないというような顔をしてたんだと思う。そんな僕を見てハヤテは慌てて言った。

「あっでも、怖いことには変わりないよ!?」


いや、そういう問題じゃなくて……っ!!


ハヤテはよほど焦っていたんだと思う。

「とりあえず後で説明するから!」と、洞窟から一番近い木にしがみつくと、よじ登り始めた。


「えっ、、やだよちょっと、待ってハヤテ…」

僕の声に振り向きもせず、ハヤテはどんどん上へと登っていく。あっという間に中腹の枝まで辿り着き、下を覗き込んで僕に手を振る。


僕は何もできず、ただ洞窟の出口に立ち尽くしていた。


その時、鋭い稲光と共に、バリバリ!!と大きな音がして、すぐそばに雷が落ちた。


「!!!!!」

僕は弾き飛ばされたように後退した。


その瞬間ーーー

ー『早く逃げろ!!!!!』ー


誰かの声が、頭の中で鳴り響く。


「…え………?」



大雨の中の稲光、落雷

泣き叫ぶ声

そして洞窟が…


「…!!…崩れる…!!!」

僕は咄嗟に洞窟から飛び出して、頭を庇ってうずくまった。

心臓が飛び跳ねて、呼吸がうまくできない。

早く、遠くへ逃げなきゃ、閉じ込められちゃうーーー


が、、洞窟は、崩れてはこなかった。

崩れてくるどころかさっきと変わらず僕の前に佇んでいる。



僕は、荒く息を吐きながら、目を泳がせる。

汗と涙が、とめどなく流れていく。


「あれ、、崩れてない…?」


じゃあ僕、なんで崩れるなんて…………?


どうして急にそんなふうに思ったのか、、思い出そうとしてもモヤがかかったように霞んで、手繰り寄せようとした手の隙間からこぼれ落ちてしまう。ただ、胸がぎゅうっと締め付けられる感覚だけが、やたらとリアルにはっきりと残っていた。


すこし離れたところでバリバリ!ともう一度稲光が走り、僕はハッと我に返る。


洞窟のすぐ外で、先ほどまともに雷を受けた木が、ズズ…ン……と、音をたてて倒れた。


!!

ハヤテは…っ!?


蔓は木の上に伸びているが、いくら見上げても、姿がない。

まさか、さっきの雷で…


目の前が真っ暗になりかけた時

たわんでいた蔓がググッと張りつめ、

ツン、ツン…と2回、引かれる感覚がした。


「!!」

僕は急いで、蔓を同じように2回引き返す。


すこしの間の後、さらに強くグッ!!っと引っ張られたかと思うと、僕の体が宙に浮いた。


「あっ…」離れないように蔓に必死にしがみつく。

そして、身体が林を抜けた瞬間…視界が、一気にひらけた。


つい今し方までの嵐が嘘みたいにやみ、

目の前には、雲ひとつない青空と、青い海。


「え…あれ……雷…は……」


「ルカ!!」

声がする方を見上げると、ハヤテが蔓を伝ってシュルシュルと降りてきていた。


そのはるか上空には、箒に乗り蔦を引っ張り上げている先生の姿。


ハヤテは僕のところまで辿り着くと、ぎゅううっと僕に抱きついた。

「ハヤテ…!?無事だった!?よかった雷に打たれちゃったかと…!!」

半泣きで話しかける僕。ハヤテの顔が見たかったのだけど、なぜか力一杯抱きついたまま僕から離れず顔も上げないハヤテ。


あれ?

「ハヤテ…?」


「…ご、めん、僕…ちょっと……

こう、高いところすごく…苦手で……」


ついキョトンとしてしまったけれど、僕の体にしがみついてブルブルと震えているハヤテを見て、思わず吹き出してしまった。


「ぶふっ……かわいいなぁ♪」


ハヤテが急に顔を上げると、また真っ赤になって僕を見る。

「…あぁ!またそれ…!!あわわ…っ」

「はは、ごめん、冗談。」

急に動いてバランスを崩しそうになったハヤテを、ギュッと両手で支える。


「怖いのに、木の上まで登ってくれたの、ありがとね。

あの時のハヤテ、僕よりおっきく見えた。」


ハヤテはまた真っ赤になって、目を伏せた。

けれど、

「僕ら協力プレイ、完璧だったね♪」

「…うん!」

僕が笑って言うと、ハヤテもそろりと顔を上げ、嬉しそうに答えた。



崖の上へと無事に戻ることができた僕らは、スタンプも見事発見したので、2人とも課題は一発合格!

るんるん気分で部屋に戻る道すがら、あの林は閉じ込めた者が怖がっているものを具現化するということを聞いた。

「僕ら2人とも、暗いとことか雷、苦手だったから…」

なんだ、だからずっと暗くて、いきなり雷雨がきたんだ!


それから、ハヤテは、さっきの林の中での「僕には雷落ちない」発言についても説明してくれた。


「ほんとなら、雨とか風とか雷は天狗が“操れる”ものなんだ。(僕は、それはまだできないけど…)

でも、“あっち”は僕らをちゃんとわかってるから…だから、昔から天狗の僕には、雷は“落ちない”んだよ」

「なにそれ!!えっ、じゃあ雷の方が逃げてくってこと!?無敵じゃん!!」

僕が興奮気味に返すと、ハヤテは「でも怖いものは怖いよ…」と苦笑いした。


けど、僕はただただ純粋に、2人に増えるし雷にも負けないし、天狗って、すげえ!と思った。


「ルカ、羽大丈夫?」

「ん?ああ、大丈夫だよ、美味しいもの食べて寝て起きたらすぐ治る!」

「ルカの作るご飯はいつも美味しいから、毎日無敵だね。」


そんな他愛もない話をしながら、部屋に戻る。授業は好成績だったし、多少は役にもたてたことで、僕はすごく良い気分だった。


ほんの少しだけ…


ー『早く逃げろ!!!!!』ー

雷鳴と、崩れる洞窟…


雷の中、頭に響いた誰かのあの言葉と情景が、ほんの少しだけ僕の心の奥底で引っかかっていた。


…何か…大事なことを、忘れているような。




けれど…

隣で笑うハヤテを見て、

僕はわざと、今は気づかないふりをした。


ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


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《登場人物おさらい》


⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)

明るいお調子者の吸血鬼

夜と雷は大嫌いで、ガーリックトーストが大好物。

料理が得意!

空を飛ぶのは大好きだけど、超音波操れないため方向が定まらない…

怖がりは、過去に何かトラウマになった出来事があったのかも、、。


⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)

怖がり泣き虫の天狗の子。

分身の術だけはバッチリ使える!

翼はあるけど空を飛ぶのは超苦手…(=とべない!?)

高いところも好きじゃない。

天狗の特性で、雷はハヤテには落ちない。

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こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


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※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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