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【4-1/ハヤテ、ルカ】不完全な翼で〈前編〉〜飛びすぎ注意報〜

『ハヤテー天狗ー』


「…ね…今日ちょっと、僕具合がーー」

「悪くない。」


「…あ、でもさっき熱ーー」

「なかったろ。早く行け。」

「いやだぁぁぁあぁぁぁぁ…!!(涙)」



セツナに部屋を追い出されて、ひとりトボトボと向かうのは、体育実技の授業。

事前に飛行の実技を含む訓練だとだけ聞いていたけど、今朝になって、その集合場所が、島のはずれにある切り立った崖の上だと知らされた…


もう、おしまいだ…

僕は高いところが大の苦手だから、崖にたどり着く前に命が尽きてしまうかもしれない。


仮に無事たどり着いたとしても、きっと崖から突き落とされて命がーーー


「あぁあぁぁぁもう、無理だよおおおおぉぉ…」


「あれっハヤテ!まだこんなとこいたの??」

「!!」

食堂の前で足が動かなくなり、しゃがみ込んでメソメソ泣いていたら、後ろから声をかけられた。


振り向くと、今日一緒に授業を受ける予定のルカが、ニコニコしながら僕を見下ろして立っていた。


「早くしないと、遅刻になっちゃうよ!ぼくもギリギリなんだけどー(笑)」

ケラケラとよく笑うルカは、昼間はいつも明るくて、ポジティブで、ご飯を作るのがすごく上手だ。


ちゃんと授業出ないと…またセツナに怒られる……

僕はしかたなく、ルカと一緒に集合場所の崖へと向かった。



「本日は協力型の実技演習をおこないますが、まず1つ。この崖の下は、別の授業を行うために用意された入江になっています。他の方の邪魔になりますので、間違っても、入江の中に落ちたりしないよう、気をつけてくださいね。」


「えー!だめなのかぁ、海綺麗だし飛び込んでみたかったのにー。

あっでもこの高さからじゃ、死んじゃうかっ⭐︎あはっ!」


ルカはさっきから、すごく楽しそうに先生の話を聞いてる。

真っ青な顔でブルブル震えている僕と正反対だ…


「今日の課題は、スタンプラリーです。

2人で協力してスタンプを集めてください。スタンプは全部で3箇所ありますが、そのうちどれかひとつでも見つけられれば、お二人とも課題はクリアとなります。


捜索範囲は、この崖の下から、向こうに伸びる林の手前までです。

スタンプは、今お渡しするカードに呼応して発光しますので、見逃さぬように。

飛行能力、観察力、危機回避能力、応用力…さまざまな力が求められますが、お2人の得意不得意をふまえて、自分にできることは何なのかをよく見つめ、課題に臨んでください。

最後にここへ戻ってきたら、授業は終了です。」


「…ぜんぶむりだよ……」

足を引っ張る想像しかできなくて、僕は1人重く塞ぎ込んでいた。


「ハーヤテ!」

「わっ!!」

ルカがヒョイっと僕を覗き込む。

「ハヤテ、飛べる?」


いきなり質問が飛んできて、僕が目をぱちぱちとさせていると、ルカが笑いながら言う。


「協力プレイって言ってたから!できることと、できないこと、分かった方がやりやすいかと思って。ちなみに僕は、飛ぶの得意♪」


あ、なるほど、と思ったけど、僕には特段得意なことなんてない…


「僕は…飛ぶのは、全然得意じゃない……」

俯いたまま答える僕を見て、ルカが笑う。


「そっか!じゃあ探し物得意?」


「え…ええと、、苦手ではないと…思うけど…」

「わかった!じゃ、とりあえず僕が飛べば大丈夫だね!」

「…へ?」


ルカはそう言うなり、僕の首にスタンプカードを下げてササッと僕の背後に回ると、そのまま僕の身体を後ろからぎゅっと抱え込んだ。

そしてーー


「行くよー!!」

「…ぇっ……」

僕が状況を把握する隙も与えずに、ルカは僕を抱えたまま、勢いよく崖の下へと、飛び降りたーーー。





一瞬、意識が飛んでたと思う。


気がついたら、僕の身体は宙に浮き、目線の遥か下には大きな海が広がっていた。


「…ええっ、えっちょっと待ってっ!!やだっ!わぁぁ!?」

「きもちーねー♪」


パニック状態の僕のことなんてそっちのけで、ルカはまたケラケラと笑ってる。


「たったすけて…おろしてぇぇ!(涙)」

「ごめん、むりだ♪協力プレイだから!」


泣きながらただただ運ばれる僕に、一体何ができるっていうんだ…!


恐怖のあまり泣き続ける僕にかまわず、ルカは続ける。

「さっきいうの忘れたんだけどさ、道案内、頼んでいい?」

「………っ…?」

「どっち飛んだらいいか、わかんないから。」


「………え?」

「吸血鬼なんだけどさ、

超音波使えないから、方向わかんなくて!一旦飛んじゃうとぶつかるまで止まれないんだー!」


「…はっ…ええぇええ!!!?」


そう言われてみれば…崖の近くで探さなきゃいけないのに、ルカはぐんぐん海の沖の方へと飛んでいる……


「あとさ、そろそろ腕、疲れてきたから落としちゃーーーー」

「旋回して!旋回!!!!回れ右ー!!」


怖がって泣いてたらーーー死ぬ!!!

僕は慌てて、飛ぶ方向の指示を出す。

目印…何か目印はーーー


「あっこっち?」

ぐーーんと、向きを変えるハル。

「もうちょっと左!あそこ、おっきい鳥の巣見える!?少し下の方で、、そうそのくらい!それでまっすぐ行って!」

「はいはーい♪」


ようやっと崖の下の岩の模様がうっすら感じられるくらいの距離までとんできた。


…あれ、まって、さっき“ぶつかるまで止まれない”って言ってた……?

「え、えっこれぶつかる?」

「かも!」


いやいやいやまずいって…!!さっき飛び立ったであろう崖が、もう間近にせまってきている。

とーー

「あ…ごめん離すね」

突然、僕の身体がパッと解放された。

「!!?」

ドサッ!と、僕の身体は柔らかい鳥の巣の中へと放り出される。と同時に

ドカッ!!


鈍い音を立てて、ルカが壁に激突した。

「!ルカ!?」

「…いって……あぶなかったぁぁセーフ!!」

そのままドサリと巣の中へ落ちてくる。


…まって、それ全然“セーフ”じゃないよ…!?


直前まで僕を抱えていたから、まともに受け身、取れなかったんじゃ…

「ルカっ!ごめん、大丈夫!?」

「ははっ、へーきだよ。いつもこんな感じだから(笑)あと、ごめんね、投げちゃって。痛くなかった?」


自分の方がずっと痛い思いをしているのに、ルカは僕のことを気にかけてくれてる。

申し訳なさすぎて、また涙が出た。


「あれっやっぱ痛くした?ごめんごめん!

けどほら、、」

そう言いながら、ルカは握りしめた拳を僕の前に差し出す。


その手の中には、スタンプが握られていた。

「わぁ!あったの!?」

「ちょうどその、上の木のとこで光ってて。」


「あぁあありがとうっ!!」


僕は泣きながらお礼を言い、首にかかったスタンプカードを差し出した。


目にいっぱい涙をためてぴょんぴょん喜ぶ僕を見て、ルカはにぃっと笑って

「ハヤテは、かわいいなぁ♪」

と頭を撫でてきた。

「なっ!!ちょっと、僕、子供じゃないんだから…!」

僕は顔を真っ赤にして言い返す。

見た目はたしかに…いつまで経っても、子どもだけど……


「わかったわかった!よし!じゃ戻ろ(^^)」

強がってみても1人では飛べない僕は、おとなしくまたルカに後ろから抱えられて


「いくよー!」

と、飛び立ったーーーーーはずだった。



真上へと飛び上がったはずのルカの身体。

ふわっと浮いた後、なぜかジグザグに乱暴に飛びまわり、、、

「あれっ…ごめんちょっとまってーー」

「わぁあああ!?」


僕たちはそのまま、崖の先にある深い林の中へと、飛び込んでしまった…。


ーーーーーーーーーー

『ルカー吸血鬼ー』


風を切って飛ぶのは、気持ちが良かった。

大きく広げた、コウモリのような羽。別に羽出てなくても少しは浮けるし、そもそも見た目が可愛くないし邪魔なだけなので、いつもは見えないように畳んでしまっているけど、いっぱい飛べる今日は特別だ。


ハヤテがわーわー騒いでたけど、僕はすごく楽しくて、スタンプを見つけた時も、飛び上がるくらい嬉しかった。


これって授業、いつもより早めに終わるじゃん!

そんなことを考えながら、さっきと同じようにハヤテを抱えて、崖の上目指して飛び上がった、、つもりだった。


急に、ぐんっ!!と方向が変わって、焦る僕らに構わずあちこちめちゃくちゃに身体がむいてしまう。


「あれっちょっとまってーー」

僕は必死で立て直そうとしたけど、その努力も虚しく、僕とハヤテはそのまま、崖を少し回ったところの入り組んだ林の中へととびこんでいった。



「…たた……ごめん、失敗〜……」

地面に激突する瞬間身体を捻り、僕の上にハヤテが乗っかる形で着地したが、ぶんぶん振り回されたハヤテは、すっかり目を回して気を失っていた。


やっちゃったなぁ、、これでまた、飛ぶの嫌になっちゃったら僕のせいだ。

「!!」

鈍い痛みを感じて、自分の背中を仰ぎ見ると、左側の羽が傷ついていた。今怪我したのか、それかさっき激突した時かもしれない。スタンプ見つけて嬉しかったから気づかなかったけど、、そうだとしたらまっすぐ飛べなかったのも納得がいく。


乱れた呼吸を整えながら、ふい、と周りを確認する。

林は海のすぐそばのはずなのに、そこは巧みに入り組んだ木々の葉に遮られて日の光がほとんど入ってこず、林の外がほとんど見えない。

まるで、僕らのいる場所だけが外の明るい世界からバッサリ切り離されてしまったようだ。


呼吸が徐々に落ち着いてくると、課題のことなんて吹っ飛んでしまうくらい、“あたりが暗い”という事実だけで頭がいっぱいになってしまった。


「…あ……

…ここ、イヤかも………」

地面で伸びているハヤテの手をぎゅうっと握りしめて、僕はまたそろりと辺りを見回す。


林に飛び込んできた方を振り返ると

ザザザザーー!!!

地鳴りがするような音と共に、木が……動いた………?


あっという間に、入ってきたであろう方向にも果てしなく続く同じ景色。

「…なんで……うそ………」



汗がどっと噴き出て、心臓がバクバクと暴れだす。

「…ど、、どうしよ……」


怖い…たすけてハル……



「…ルカ?」

ハッとして振り向くと、ハヤテが目を覚ましてこっちを見ていた。

やばい!怖がってるとこなんて見せたら笑われる…!!


「ハヤテっ…!ごめん大丈夫だった!?もーまいっちゃうよ変なとこに落っこちちゃってさ!」

…カラ元気すぎる…。

自覚はあったけど、今はとりあえず声を張り上げてないと涙が溢れそうだった。


「なんか、あっちからきたはずなんだけど、出口見えなくなっちゃったんだよねー!こ、この林の中魔法でも…かかってるのかなぁ…なんて……はは………」


……全然、ごまかしきれなかった。

口をついて出る言葉が、僕自身の不安をどんどん煽って、堪えていた涙がポロポロとこぼれる。

「…はは…だからさぁ…どうしよ、ここからで、出られそうになく…て…てか……く、暗くて…僕……っ…」


顔があげられない。

今日は飛行訓練って聞いてたから、嵩張る心の支えの明るいグッズは何も持ってこれなかった。

先ほどの元気とは真逆な、涙目で狼狽える僕を前にして、ハヤテはきっと幻滅したにちがいない。

吸血鬼なのに、恥ずかしいやつって、思われたに違いない。


でも、、怖くて仕方ないんだーー。


と、次の瞬間

「わ…じゃあ、僕と一緒だ…。」


え、、と、顔を上げると…ハヤテも、僕の手をぎゅうと握りしめたまま、涙目でこちらを見ていた。

「僕がいるから大丈夫だよって、言えたらよかったんだけど…ごめん、僕も暗いの、苦手で。」


「…ハヤテ……」


ハヤテは、涙を拭いながら、でも、なんとかなるから、、とつぶやく。そしてーー


「……大丈夫。先生に知らせてもらおう。」

そう言うと、ハヤテはすうぅ…と大きく息を吸いこみ、そのまま勢いよくはき出した。

ふうぅ〜〜!!と、深く長くはき出される呼気が、白い雲のような煙を巻き起こす。


何が起きてるかわからなかった。

白い煙が散っていった次の瞬間ーー


その場所になんと、もう1人“ハヤテ”が現れた。


「えええっ!?!?」


「あっええと、僕、分身だけは作れるんだ。他の術は、からっきしなんだけど…」


驚いて目を白黒させる僕に急いで説明をしたあと、ハヤテは“ハヤテ”に話しかける。

「崖の上の先生のとこに、助けてって伝えに行ってくれないかな。」


“ハヤテ”はこくこくと頷いて、そのまま風を切るように駆け出した。


するとーー

ザザザァ…!

彼の動きに合わせて、木々がやたらとせわしく“動きだす”。

“ハヤテ”は素早く方向を変えるが、林が外に出すまいと邪魔をしているようだ。


「うぅええええっ!?なにあれ!?!?」

「…さっきも、、あれで出口、わかんなくなった…」


やっぱりこの林は、生きてるんだ…


“ハヤテ”はそれでも諦めずにジグザグに駆け回り跳ね回り、そして、林の奥へと姿を消した。


ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


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《登場人物おさらい》


⭐︎夜霧ルカ(吸血鬼)

明るいお調子者の吸血鬼

夜と雷は大嫌いで、ガーリックトーストが大好物。

料理が得意!

空を飛ぶのは大好きだけど、超音波操れないため方向が定まらない…



⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)

怖がり泣き虫の天狗の子。

分身の術だけはバッチリ使える!

翼はあるけど空を飛ぶのは超苦手…(=とべない!?)

高いところも好きじゃない。


ーーーーーーーーーー


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


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※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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