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【3-2/ハヤテ、セツナ】鬼面仏心〈後編〉〜気持ちの伝え方〜

『セツナーヨルムンガンドー』



「めんどくせぇな…」

ハヤテを残して部屋を出たあと、適当にぶらぶらと歩き回りながら、あの泣き顔を思い出していた。


初対面からそうだったが、あいつは俺と目を合わせるたびビクついて涙目になる。

俺のことが怖いんだろうが、ああやっていちいち反応されるのも正直めんどくさい。

そのうち考えるのすら面倒になり、とりあえず1人になりたくて、俺はそのまま校舎の外へ出た。


この島にはまだ知らない場所がたくさんある。

少し遠くまで行ってみようか…

ぐるりとあたりを見回し、たまたま目についた大きな森を目指すことにした。



鬱蒼とした森の中は、日がほとんど当たらず昼すぎでも薄暗かった。

もともとジメジメした森深くで育った俺にとって、ここは案外落ち着く場所だ。


ただ、先ほどのスズメバチと同様に、出会う虫はみんなことごとくサイズが…

「…でけえな……」

高い木の上から下を眺めて、ため息をつく。


「動物は、普通サイズなのにな…」

隣の木からこちらへ飛び移り、足元にすり寄ってきたリスを見て、思わずそうつぶやいた。


「お前、怖くないんか。」

リスはちょろちょろと俺の頭に駆け上り、またすりすりと体をすり寄せた後、木に飛び移ってどこかへかけて行った。


日が落ちて、あたりがもっと暗くなる。

ハヤテは落ち着いた頃だろうか。


そんなことを考えながら、校舎の方へ戻ろうとしたときーーーーー


「やだっ!やだやだやだ!!」

少し離れたところで、悲鳴が上がった。

ふいと、声のした方に目を向ける。


「なんだあいつ?」

薄暗い森の向こうから、何やらでかい荷物を引き摺りながら走ってきた人影が、俺のいる木のちょうど下あたりで、また一つ小さく悲鳴を上げてへたり込んだ。目線の先をよく見ると、どでかい蛇がそいつめがけて鎌首をもたげていた。


「おいおいマジかよ…」

蛇なら…まぁ“使わなくても”なんとかなるか…?

仕方なく、俺は木から飛び降りた。


女を背にして蛇を睨みつけるが、巨大な蛇は少しも怯まない。


…あぁもう、めんどくせぇな……

蛇を睨む目にぐっと力が入り、体から黒い煙のようなものが立ちのぼる。


「……おまえ、何様?」

低く唸るように囁くと、これ以上は危険だということがようやく伝わったのか、蛇はたじろぎ、そのまま姿を消した。


「…ありがと……」

襲われかけてたのは、今朝の入寮式で名前を連呼されていた、みさおとかいうやつだった。


さぼりかと聞いたら、否定された。

「じゃなんで。学校、あっちだけど。」

「う、うぁ……えーと……散歩……?」


嘘つくの下手くそすぎだろ…

「ふうん。」

半ば呆れて視線をそらす。


とりあえず急げば。と伝え、俺もそろそろ戻ろうかと踵を返した途端ーーー

ふ…と血の気が引いて、、その場で倒れ込んでしまった。


…あーやべえ、あの程度でもだめか……


体の末端から、じりじりと痺れが広がっていく


みさおが、駆け寄ってくる。

「なに!? どうしたの!?」


「……きもちわりぃ……」

その一言を最後に、俺は意識を失った。




ーーーーーーーーーー

『ハヤテー天狗ー』


雷と夕立が窓を叩く音が余計に不安を掻き立てる夜。

部屋でセツナの帰りをソワソワと待っていた僕の元へ、保健室の先生から連絡が入った。


「セツナくん、外でまた倒れたみたいで、さっき運ばれてきたわ。今保健室で手当をしたところよ。」


僕は弾けるように部屋をでて、全速力で保健室へと飛び込んだ。入り口で誰かとぶつかりそうになったけど、そんなこと今はどうでもよかった。



保健室のベッドで、セツナは眠っていた。

「そばにいてあげてくれる?」

先生にそう言われ、僕は、ベッド脇の椅子に腰掛けた。

涙目でセツナの顔を覗き込む。

少し熱もあるのか頭には氷嚢を乗せられ、肌のあちこちに擦り傷ができていた。


一体何があったんだろう…

1日に2回も倒れて、原因もわからない。しかもさっきより熱も高くて、顔色も…


まさか、このまま…死……!?

そんなのやだ、、ありがとうも、まだ伝えてないのに…!!

ありえないほど最悪の状況ばかりが頭の中をぐるぐる駆け巡る。


「セツナぁぁ…起きてよおぉぉぉ……」

眠ったままのセツナの胸に突っ伏して、僕は、わんわんと泣き続けた。




ーーーーー

『セツナーヨルムンガンドー』



あんなコモノな蛇になめられて、頭に血が上ったのがいけなかった。


しかも今日は2回目だ。身体が整わないまま同じことを繰り返したので、その分ダメージが大きかった。

それに今回はなんだか、胸も苦しい。身体が重く、呼吸もしづらい。



ぼんやりと戻ってきた意識の中、最初に目に飛び込んできたのは、ハヤテのぐしゃぐしゃな泣き顔だった。

俺の上に乗っかって顔を覗き込み、服や布団がびしょ濡れになるくらいわんわんと泣いている。あー、胸が苦しかった原因は、こいつか…。


「せっ…セツナァァァ!!!!」

ハヤテが、首を絞める勢いでしがみついてくる。


つい最近、同じことがおきたような…

「…デジャヴ……?」


思わずつぶやいた俺の言葉に、はっと我に返ったハヤテは、大慌てで俺の上から飛び降りる。

「あぁぁ!ごめんなさ…じゃなくて、ごめっ…あーちがう!ええと!あの!」と、、

さっき、泣くな、謝るなと言われたのを思い出したのだろうか。半ばパニック状態で、一体何が言いたいのかさっぱり伝わらない。


「…っふ。」


俺は思わず、小さく吹き出した。


束の間の沈黙。。。


はっとしてハヤテをみると、

ぱちくりと目を瞬かせ、俺の顔をじーっと見つめている。

あ…今の、聞こえたのかもしれない。


なんでか急に気恥ずかしくなって、顔にぐっと力をいれると、また睨みつけられたと思ったのか、ハヤテは小さく悲鳴を上げてまたしょんぼりしてしまった。


コロコロと忙しく感情が変化するちっこいハヤテが、さっき森で怖がることなく俺に近づいてきたリスと重なった。


これまで、他人が何を言おうが何をしようが、気にすることなく生きてきたのに

こいつを見てると、なぜか俺の感情まで一緒に振り回される感じがする。


「…おもろいなぁ、お前。」


「…え?」

ハヤテはまた目を大きく見開いている。


つい口をついて出た言葉に、ハヤテも、何より俺自身も、驚きを隠せないでいた。



ーーーーーーーー

『ハヤテー天狗ー』




…いまセツナ、笑った?



気のせいかもしれない、けど、一瞬

僕をみて、ふっ。って笑った気がした。


驚いてじっと見つめたら、睨み返されてしまった…やっぱり怖い。


けれどその直後

「…おもろいなぁ、お前」


セツナの口から、また、びっくりする一言が飛び出した。


言った本人もびっくりしているのか、少し気まずそうに視線を逸らされる。


そっけなさは変わらないのに、あれ、なんだか、、そんなに怖くない…?

僕の中で、ふとそんな思いが湧き出した。



「…こっち、来たら。」

ベッドに座り直したセツナが、さっき飛び退いたまま離れたところに突っ立っていた僕に、声をかける。


僕はおずおずと、セツナの隣に腰掛けた。


しばらくの沈黙のあと、ふいにセツナが口を開いた。

「また、倒れるかもしれない。」


「え?」

驚いて顔を見上げる僕のほうを見ずに、セツナはぽつんぽつんと話し続ける。


「きついんだ、俺の毒。」


何も言えずただセツナを見つめる僕に、ふと目を合わせる。

「家のこと、聞いた?」


「や、何も…」



「毒蛇の家系。強力なやつ。」


僕はぎゅっと膝の上で手を握りしめる。




「ただ、毒、使うと…

…しばらく、キツい。」


点と点が、ぴたっと結ばれた感じがした。


ハチのとき倒れたのは、追い払うのにきっと毒を使ったせいだ。

そして今もーーー。


なんだか、セツナがまだ苦しそうに見えて

僕は、隣に座るセツナの手に触れた。

いきなりで驚いたのか、セツナは咄嗟にその手を振り解き、僕に鋭い視線をむける。


急に警戒するようにかまえる姿を見て、あ、またやっちゃった…?と思ったが、セツナはそれ以上離れていったりしなかった。


顔を見ながら、今度は袖の先だけ、ちょっと引っ張ってみる。

セツナの身体がわずかにビクッと跳ねた。けれど今度は、振り解かれなかった。


「さっき、助けてくれたの、ありがとう。」

僕はまっすぐ目を見て伝えた。


セツナは少し困った顔をして、ふいっと目を逸らす。


「セツナ」

まだビクビクしてしまうけど、気持ちは、今までよりもずっと暖かくて…



「一緒に部屋、もどろ。」


僕はこれからもセツナのそばにいたいと、素直に思えた。


ご覧いただきありがとうございました。


更新は不定期です。

活動報告等でもお知らせいたしますので、よろしければまたお立ち寄りください。

感想や評価など、いただけると嬉しいです。


ーーーーーーーーー


《登場人物おさらい》


⭐︎烏丸ハヤテ(天狗)

いつまでも子どもな見た目の、一人前になりきれない天狗。

ビビりでよく泣く。

逃げ足だけは超はやい。

天狗の術の中で唯一「分身の術」が使える。


⭐︎毒島セツナ(ヨルムンガンド)

自らの毒で自分もダメージを被るヨルムンガンド。

口数少なく、目つきが悪い。

必要以上に近づくことを好まない感じ、、?


ーーーーーーーーーー


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


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※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


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