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過去作品葬短編シリーズ 第2弾『再又消(さいゆうき)』

作者: とり飼ジン

こちらの作品は高校時代に友人と共に漫画として募集する予定だった作品です。

話もキャラ設定もできているのにこの世に出ずに終わるなら短編にしてだそうかなと思い作りました。

楽しんで読まれたら幸いです。


 この世界は昔々で始まる物語ではない、ましてや近未来でもない。現代より少し先の時代だが多少の発展が遅れた日本の話。


 『獣力(けものりょく)』と呼ばれる病によって心を支配された者たちを鎮めるためにこの世界に落とされた三蔵法師(さんぞうほうし)と共に旅をする者たちの痛みと安楽をする為の話。


 いま、三蔵の仲間の一人の少女、 小倉李桜(おぐら りお)が数人の者に襲われていた。

李桜は笑みを浮かべ、次々と相手にしていった。

長く赤い棒を取り出しては巧みに使いこなし、振り回す。

少女は猿顔という事でも耳がデカくも、尻尾が生えているわけでもなない。

強いて言えば李桜は『()()()』を持つのだ。



 ●●●



 ある小さな村。その村では最近、鬼が出るという噂が広まっている。

実際、近くで見たという話がでるぐらいであった。

怯えた村に人たちは腕に自信のある傭兵を雇い村を守ってもらう事にした。


傭兵は鬼にやられてしまった。


その村で一番、腕の立つ男の梅須田富貴(うめすだ ふうき )は他人を頼るのは反対のため自ら動くことにした。友人の児島昌(こじま あきら)と数人を連れて鬼が出る場所に向かう。


「この辺にいるって話だが」

富貴(ふうき)、お前、鬼に勝てるのか? あのガタイが良かった傭兵たちも勝てなかった奴だぞ」

「大丈夫さ、俺は銃の腕は村一番だし格闘技ならだれにも負けない」

「それはわかっているが」


とそこに猿の様なオーラを纏った小倉李桜(おぐら りお)がそこに立っていた。


それを見た児島昌が大きな声で李桜に指を差して叫んだ。

「鬼だああぁぁぁ!!!」



 ●●●




 小倉李桜梅須田達に捕まり、牢獄に囚われていた。

口を膨らませ、ぶさくさと言いながら頭に付けているカチューシャにカチカチと指の爪で鳴らす。


 鉄格子の前に立つ、梅須田と児島。

「まさか無抵抗で捕まってくれるとはな。だが昌よ、本当にこいつは鬼なのか?」

「ああ、確かだ。コイツがオーラを纏っていたのが見えただろう?あれは鬼になる前兆の奴だ」

「なんかで聞いたな~」

「『獣力(けものりょく)』という奴で、心の病んだ奴が悪魔の囁きに負けて心も体も乗っ取り合い、闇の自身となった者が鬼だ」

「じゃ~コイツも病んで鬼になったってことだな」

「そうなるな」

「そうか、こんな可愛らしいお嬢ちゃんがねぇ~」


 李桜は口を膨らませながら梅須田を見る。

「何か言ったらどうだ、鬼よ」


 李桜は目を細めながら、若干バカにした感じを出して無言で見つめる。

「コイツ、バカにしてるのか!?」


 梅須田は剣を抜いて牢屋の鉄格子の少し剣先を入れて李桜はの顔に少し向ける。

それでも動揺しない李桜は鼻で笑う。


梅須田は怒りを見せるも一旦落ち着きを見せて、児島と一緒にそこから出て行った。

李桜は腕を枕にして仰向けで寝転ぶ。

「さて、どうしようかな?」


とそこに、別の人物が周りを気にしながら現れた。

「やっぱり、貴方でしたか」

「ああ、無事だったんだ」


 李桜の鉄格子の前に立つ少女は児島裕子(こじま ゆうこ)という人物。

児島裕子が獣力を使うものに襲われている所を李桜が助けて逃がしたのだ。


「私の兄とその友人にちゃんと説明するので少し待っててください」

「いや、いいよしなくって」

「え? なんで?」

「こっちにもいろいろと事情があってね…それより気になる事があって」

「なんですか?」


 李桜は裕子にいくつか質問して裕子はその場を去った。

少し時間がたった時に、牢屋の鉄格子の小窓から紺色のポニーテルの髪の仲間の三蔵法師(さんぞう ほうし)が顔を出す。


「おい!」

「ああ、三蔵だ!ひゃほう」

 李桜は暢気に手を振り、三蔵はそれを哀れな目で見る。


「何がひゃほうだ、何してんだ」

「それが話が長くなって」

「手短に」

「襲われた、暴れた、鬼と勘違いされた、捕まった。ハッハッハ」


 李桜は笑った。三蔵は哀れな目で見る。

「あのなぁ~、お前ならこんな牢屋ぶっ壊せるだろうが」

「そうなんだけどね」


 李桜は八重歯がチラッと見える笑みを浮かべながら三蔵を見る。三蔵は何かを察して面倒ごとだなと思う。

三蔵は頭を掻きながらため息を出す。


「訳アリ…だな。また面倒なことを」

「えへへへ」


「とりあえず、時間がないから手短に」

「オッス!」


李桜は敬礼したあと、話をはじめた。

三蔵は面倒くさそうな顔で考えた後、三蔵の後ろにいるらしい仲間と会話した後に李桜に言った。

「だいたいわかった。明日、お前の処刑が決まったら」

「マジで、やだなぁ~」

「そこで助けてやる」

「わかった」

「じゃーまた明日」

「うん」


そう言って三蔵がと遠ざかっていくのを感じた李桜は口を尖らせて硬い地面にうつ伏せになって寝る。



 ●●●



 処刑日、当日。街の中央


みんなが見守る中、両腕を後ろに回し縛られ、膝を付き、アホずらをぶら下げて李桜はそこにいた。

「では、いまから鬼の頭を切り落とします」

と処刑人が大きな斧を頭の上まで持っていき振り下ろす構えまで状態になった。


梅須田は李桜に問う。

「最後に言いたい事はあるか?」

「うん、あるよ」


李桜は児島を見てあざとい感じで言った。

「貴方、鬼ですよねぇ~」


見に来ていた住民たちは児島昌を見る。

「何の証拠があって?」

「またまたそんなこと言って」


児島昌は真顔で回答を待つ。

「鬼にはある特徴があって、頭や額に角が生えている事」

「だが、俺にはそれはない」

「そう、鬼ではなく鬼の様な獣力を持っているのかな?って思って」

「だから、証拠は!?」


李桜はニヤニヤとしながらクネクネと動きふざける。

「ど~しようかなぁ~、教えてあげようかな~」

「むかつく」


変な動きを辞めて李桜は児島に言う。

「獣力を使う奴は耳が青白くなるって知ってた?」


児島昌は真顔から焦った顔で耳を触った。

「嘘だけどね。フフフ」


児島昌は真顔で舌打ちをする。


「昌…違うよな…だってお前は…」

梅須田は近づこうと動く前に児島は獣力のオーラを身に纏う。

大きく細い角が生えた『プロングホーン』のオーラが児島を包み込む。


「まったくなんでバレちゃうかな~」

「妹さんだよ。裕子さんが言っていたよ」

「裕子?」

「児島さんの様子が変わったところはあるかと。そしたら裕子さんは『ルーティンにしていた朝のコーヒーを辞めた』ってね。闇に心を持っていかれた者は性格も生活リズムが変わるんだ。あなたは心を支配して記憶を持った珍しい例だね」


児島は蔑んだ目で李桜を見て言う。

「お前もそうだろう、同族だ。お前も俺と同じ」

「そうだね、同じだよ」

「なら、偉そうに上から言ってんじゃあーねぇーぞ!!」


児島は処刑人が持っていた斧を奪い、処刑人を吹き飛ばして、その武器で李桜に近づき振り降ろそうとした時、斧に紐の様なエネルギー体が巻き付いていた。

「なんだ!!」

「三蔵!!」


と住人の塊から腕を組みながら面倒そうな表情した三蔵が出て来た。

紐は三蔵の近くから伸びていた。


「三蔵だと!!」

「同じじゃない」

「ああ!!」

「お前と李桜は同じじゃ~ねぇって言ったんだよ」

「噂は本当だったんだなあ、バケモンを連れている三蔵を名のる人物が俺達を消しているというのは」


梅須田は三蔵に駆け寄り前に出る。

「ま、待ってください」

「どけよ」

「アイツは俺の…俺のたった一人の友達なんだ」

「もうアイツはお前の知っている奴じゃない」

「昌はかわっていない!!」

「じゃ~聞くけど、なんか変だと思ったことは? 異変などが気になったりしなかったか?」

「そんなの一緒にいればわかる事だろう」

「アイツが変わったことには気づかなかったのにか?」


 梅須田はドキッとしてしまった。止めていた手を下ろして俯く。

その光景を見ていた児島が言う。


「こいつが心を闇に纏ってしまったのはお前のせいだぞ、富貴」


梅須田は振り向き児島をみる。

「お前が妹をフッてからだ」

「えっなんでお前が!!」

「お前が妹を裕子と付き合っていればコイツは幸せでいられた」


児島の脳内で裕子と梅須田がすれ違ったりするたびに苦しんでいる妹の顔を思い出す。

「お前は親友で妹も大切、本当にこいつ(児島昌)は優しい奴だったよ。俺が支配しようとした時、お前たちだけは手を出すなと言って来たんだ」

「昌が…」

「だがもういい、俺はお前を殺してこの街を焼け野原にする」


児島は力を完全開放し始めた時、李桜が叫ぶ。

「三蔵!!」


周りの住人たちが逃げ惑う。

三蔵はダルそうに立ち、袖からエネルギー型の紐を伸ばして李桜を捕まえて足元に引っ張り転がした。


「ありがとう、三ずっぶごぉ」

三蔵は頭を掻きながら「うるっさ」と呟きリ李桜の顔面に回し蹴りを繰り出して遠くに吹き飛ばす。

転がし座り込んでいた李桜の所に斧が投げられてきた。


梅須田は悲しく膝を付き、そこに裕子が駆け寄る。

「お、おれは俺は…」

「貴方の所為ではございません」

「俺は…」


三蔵は梅須田と裕子を気にしながら児島を見る。

「どうした? 止めて観ろよ三蔵!!」

「悪いが俺は手を出せない。殺生はできないんだ」


そう言って三蔵は李桜に近寄り手首の縛られた物を取る。

「だから、コイツを連れているんだ」

「やっと、自由になれる」


児島はどこからか取り出した武器・サーベル型の金棒を取り出す。

三蔵を飛び越えて李桜が赤く長い棒を児島に向ける。


「私が相手だ!」


舌をペロッと出して挑発する李桜に児島は動き出す。


サーベル型の金棒を李桜に向けて攻撃を繰り出すも長い棒で受け止めてから李桜はジャンプして回し蹴り繰り出し児島は直撃する。

細い足で蹴られた児島は見た目に反して重く強い攻撃に意識が飛びかけた。

「(こいつ、強い!)」

「まだやる?」


児島は次の手を考えている時、三蔵が問う。

「なぜ、人を襲った?」


戦いで膝を付いていた児島は三蔵を見る。

「昨日、そこのガキが戦った奴らは獣力に支配された者達だ。アンタは知ってると思うが俺たちは死に方を選べない。死ぬことができない。怪我をしてもすぐに再生してしまう。だがたった一つだけあるそれは、同族に食われるかこと」


三蔵は黙って聞く。

「街を裕子を守るためにはアイツらを食べなければいけなかった…」

「同族を食べた物は強くなり鬼へとなる事も知っていたか?」

「ああ、知ってたよ。最近はこいつ(児島昌)の気持ちなんてどうでもよくなってきている」

「だろうな」

「三蔵と言ったな、俺を殺してくれないか? もう戻れないな…っくう!! 今も俺の心がなくなりそうなんだ。こいつ(児島昌)の気持ちを大切にして死なせてくれ!!俺が俺でなくなる前に!!」


三蔵は児島の前に立ち言った。

「それが本気なら願え!!」


三蔵は手と手を合わせてお祈りの様な形を作り手に紐の様な物が現れた。


「お前が心を改め、人の為に誰かの為に生きるというならその力を完全に打ち消し、人のまま再起させてやる。だがそうでないのならは消える。願え、再起するか?消えるか?」


児島は胸を押さえながら梅須田たちを見たあと、三蔵を見て言う。

「頼む、消してくれ」


三蔵は左手に結んだ紐を児島の前に出す。


が児島のオーラが先ほどより強くなりどんよりとなって叫び始めたと思ったら赤黒い色となったオーラは児島の体に入り額から角が生え始めた。


サーベル型の金棒を三蔵に攻撃を繰り出そうと動く。

だがぎりぎりで李桜が先に動き長い棒で児島を何度も突き最後に右手にエネルギーを溜めた拳で児島をぶん殴って近くの壁に向かってふき飛ばした。


壁に叩きつけられた児島は動けずビクビクしている。そこに三蔵が近寄り言う。

「では、消えろ」


三蔵は光る紐のエネルギーを児島に巻き付けたあと、両手を合わせて念仏を唱える。


すると児島は青く光りだして口から黒い塊が出てきてそれがガラスの様に割れて消える。

児島は白目を向いて完全に倒れて肉体は残らずそのまま煙の様に消えて死んだ。


三蔵は念仏を辞めて、片合掌をして梅須田と裕子に言う。

「あとは好きに生きな。アンタ達のこれからは再起である事を願っている」


そう言って街から出て行く三蔵と李桜。



 ●●●



これは過去。李桜の過去。

血に染まった教室。女子生徒の複数人の死体がバラバラの転がっている。

たった一人、机に座りぼーっとしている李桜。


そこで住む者たちによって牢獄にぶち込まれ、飢餓死もできないでただ何も考えずにいた時に紺色の髪の男が現れた。

「だ…れ…へぇ…?」


紺色の髪の男は困っていた時、近くにあったゴミ置き場の積まれている絵本が一つ落ち風で本がめくれた。

「俺はさんぞ…三蔵。三蔵ほう…し?…だ」

「あい…そ…へぇ……」


李桜と三蔵の初めての出会い



 ●●●



街から少し離れた場所で、仲間の長門紘人(ながと ひろと)谷山達也(たにやま たつや)が木が生えた下で待っているのが見えた李桜は駆け寄る。

「ごめんごめん、待った?」

「「待ったじゃーねぇ!!!」」

「ほらなぁ、怒られただろう」


つなぎの袖をウェストで結びなおして、首に巻いてあるチョーカを触りながら紘人は李桜をどなる。

「この猿女、お前が迷子になったせいでこっちは大変だったんだからな」


綺麗なスーツを着て腰にはトンファンがぶら下げ両手の腕輪がある、達也が間に入り喧嘩を止める。

「まあー、まあー、俺も悪いし紘人と李桜も悪いってことでどっちも謝ろうか」

「「なんでだよ!!」」


紘人が達也に絡む

「そもそも、達也がちゃんと見てばなあ!!」

「えぇぇ俺が悪いの?」

「お前が悪いだよ、()野郎!!」

「そっちだって、爬虫類の癖に!!」

「はあ!!お前は獣差別するのか!!」

「そっちから」

「まだ、私が喋っている途中でしょうが!!」


と3人が喧嘩していると三蔵が手を一回、叩いて言った。

「もういいだろう、行こうぜ」

「でも!!!」


李桜が言った瞬間、イラっとした三蔵は片合掌で念仏を唱えると李桜の付けているカチューシャが絞めだす。

「イッタタタタタタタああぁぁぁぁ!!!!」


と二人は瞬時に頭を下げた。


三蔵は大きなため息をした後、先の道へと歩き出す。李桜以外の2人も歩き出す。

李桜は三蔵の背中を見て立ち上がり遅れて後を追う。



三蔵法師、小倉李桜、長門紘人、谷山達也は旅を再開する。


自分たちが死ぬ為の旅を。


読んでくださってありがとうございます。

この作品が短編としてですが読まれてよかったです。

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