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ラークスの旅  作者: サーモン丼
第一章
8/12

調査開始

翌日の早朝。

俺とノランはあらかじめ別の場所で集合し、エデンの家に向かって歩いていた。


今日は依頼を受けるつもりはないから、ギルドへは行かないのだが、今まで毎日足を運んでいたので、少し違和感がある。

不思議な感じだ。


「そう言えばラークス。昨日聞こうと思ってたんだけどさぁ」


「ん?」


何だなんだ。

まずい部分でもあったか?


「騎士団が組織を放置してるのって本当に指名手配犯を追ってるからなのか?

俺はどうしても、騎士団が組織と繋がっているからじゃないかって思っちまうんだけど」


「あぁー」


そういことか。

まあノランの言うことは一理ある。

騎士団は今もそうだが、組織に対して何もしてないのだ。疑ってしまうのも無理はないだろう。

でも、俺はその可能性は限りなくゼロに近いと思っている。


「まあ確かにね。疑う気持ちは正直凄く分かるよ。

でも実際に騎士団は指名手配犯を何人も捕まえているし、それにもし組織と繋がっているなら、嘘でも組織の対策はやってるいると報告しているはずだよ」


実際に俺が騎士団員だったらそうしている。

疑われるのは嫌だってな。


「だから本当に騎士団は指名手配犯を追うので精一杯で、繋がってはないと思うよ。恐らくだけど」


あとはそうだなぁ。組織が勢力拡大してないっていうのも、繋がっていない証拠だと個人的には思う。


「・・なるほど。確かによく考えてみるとその通りだな。

おっけい納得したぜラークス」


「うん、解消できて良かったよ」


ま、でも100%って確証はないから、確かめる策は考えてきているんだけど。

念のために。

今回の聞き取りで使うことはないと思うが。


「それにしても指名手配犯か。今まで特に気にしたことなかったけど、一体どうゆう奴がいるのやら。

顔とか見てみたいな」


指名手配犯は重罪を犯した凶悪犯だ。

それを見てみたいとはなかなかだな。


「じゃあ指名手配書を見てみればいいんじゃない?」


「え?指名手配書?何だそりゃ?」


ノランは驚いた表情をする。


いやこっちの方が驚いたんだけど。

まさか指名手配書の存在を知らないとは。

ノランは指名手配犯という意味を理解していないのかもしれないな。


「指名手配犯の情報と似顔絵が書かれている紙のことだよ。

例えばこの人とかね」


俺はポケットから折り畳んである1枚の紙を取り出し、それをノランに広げるように見せる。

実物を見て貰った方が手っ取り早くていいだろう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

大陸指名手配犯(アルトリア大陸)

名前 二ーク・ガルナール

性別 男

年齢 30歳

特徴 黒髪 約180cm 筋肉質

剣術 上級

懸賞金 白金6枚(情報提供のみの場合は3枚)

要請 クマーク王国

これに似た男を目撃した場合、騎士団に報告を

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

*右側に犯人の似顔絵が描いてあることとします。


ちなみに指名手配には国内指名手配、大陸指名手配、世界指名手配の3つに分類されており、罪が重い人間ほど指名手配の範囲が広くなる傾向がある。


「へぇー、こういうのがあるんだな。全然知らなかったぜ」

っていうか何で持ってんだよ」


「もし見つけた時、あった方が便利でしょ?お金貰えるかもだし」


「おお確かに。ま、見つけられればだけどな」


騎士団が血眼になって探している奴を俺達風情がそう簡単に見つけられるはずはない。

ノランはそう言いたいのだろう。

ま、役に立つことを祈ってる。


「遅い!」


そしてそんなことを話していると、いつの間にかエデンの家の前まで到着しており、そこで待っていたエデンが走りながら迫って来ていた。


出発した時間から約束した集合時間には十分間に合う予定だったけど、どうやらゆっくり歩きすぎたらしい。

ちっ、エデンの機嫌を損ねてしまったかもしれない。

面倒にならなければいいけど。


「私を待たせるなんて、いい度胸してるじゃん」


不機嫌なままだとやっぱり面倒そうだ。特にエデンの場合は。

ここは素直に謝って


「ごめんエデン」


ついでに褒めておこう。


「前にも言おうとしてたけど、その服凄く似合ってるね。カッコいいよ」


馬鹿だからこれくらいで機嫌を直してくれるだろう。

多分。


「へぇーーー

良く分かってるじゃん。

まあしょうがないからそれに免じて遅刻は許してあげる」


「う、うん。ありがとう」


まさかとは思ったけど、こんな簡単に許してくれるとは。

服を適当に褒めただけだぞ。驚きだ。

それに機嫌が明らかに良くなってる。

表情が機嫌のいい時のそれだ。

いつか変な奴に引っかかるんじゃないのか。

流石に心配だ。


「じゃあさっさと行こうぜ。時間が惜しい」


「そ、そうだね」


しかしノランは特に気にしている様子はない。


俺がおかしいのか?

俺はそんな疑問を残しながら、そのまま貧困地区に足を踏み入れるのだった。


ーーーーーーーーーー


「お、あそこに人いるじゃん」


貧民地区に入り少し歩くと、エデンが足を止め、この通りの横にあるさらに薄暗い裏路地を指さした。


「ん?・・2人か」


俺はすぐに人数を確認する。

最初は薄暗く見えにくかったが、よく見ると2人いるのが分かる。

こんな早朝に外にいるんだ。恐らく野宿した人達だろう。

まったく運がいいな。

まさかこんなに早く見つかるとは思わなかった。


「ああ。じゃあちゃっちゃと聞きに行くか」


だけど、貧困地区には入るべきじゃないな。

不気味な雰囲気が漂っていて、マジで嫌な感じがする。

それに、あそこはさらに気味が悪そうだし。

太陽の光が少ないせいかぁ?

俺が考えた計画だけど、正直あんま行きたくないなぁ。


「ちょっと待って」


そんな時、エデンが歩き始めようとしていたノランを止めた。

まさか俺が行きたくないと思っていたのが分かったのか?


「どうした?」


「今気づいたんだけど、交渉材料のお金って誰が払うの?まさか私じゃないでしょうね?」


内心ヒヤッとしてしまった自分が恥ずかしい。

全然違う話じゃないかまったく。

いや、普通に考えてみろ。

人の心を読める人間がこの世にいるはずがないだろう。

俺は一体何を怯えていたのだろうか。


だが、それにしてもこいつ。

自分から頼んでおいて、払う気は全くないっていう雰囲気を漂らせていやがる。

まあいいけどさ。

最初から俺が出す気だったから。


「大丈夫だよエデン。俺が払うから」


「そうなのぉ?ありがとうぉラークスぅぅ」


何ちゅう臭い演技だ。

本当に感謝しているのかこいつは。


「はあー。まあいいや。

行こうか」


「はーい」


エデンは機嫌良さそうに返事をすると、裏路地に向かって歩き出す。


「ラークス。一体いくら出す気か知らないけど、俺も半分出すぞ」


するとノランが俺の傍まで来て、耳元でそう呟く。

エデンとは違ってノランは優しいな。

俺の懐事情を気にしてくれているらしい。


「大丈夫だよノラン。こうゆう時のためにお金は貯めておいたからね。気持ちだけ受け取っておくよ」


でも今回は、俺がエデンを仲間にしたいと言い出したことで始まってしまったことだ。

ノランの手を煩わせるわけにはいかない。


「そうか。じゃあ交渉は頼むぜ」


交渉か。

正直不安だ。

一応、色々と考えてきたけど、そんなこと今までに一度だってやった経験はない。

ま、頑張るしかないか。


「うん」


俺達はエデンを追って裏路地に入るのだった。


そしてまず俺達は1番手前にいる地面に座り込んでいる男に話かける。


「すみません。少し聞きたいことがあるんですけど」


相手が急に襲い掛かってくるかもしれない。警戒しておこう。


「ああん?何だてめぇら?

酒か薬もってこい」


話しかける前は顔を伏せていたせいで良く分からなかったけど、男は薬の影響なのか、焦点が合っていない様子だった。


この人は真面に会話ができそうもないな。

まあでも、金だけ見せたら少しは元の状態に戻るかもしれないし、一応言っておこう。

服はボロボロで靴は履いていない。どう見ても金があるようには見えないからな。


「質問に答えてくれたら、このお金をあなたにあげますよ」


俺は金貨1枚を男性に見せる。

さあどうだ?


「か、金っ!寄越せ!」


しかし金を見た男は急に大きな声をあげ、それを奪おうとしてきた。


「おっと」


俺はそれを避け


「質問に答えてくれたらですよ」


と言う。

タダで貰えるお金はこの世にはない。


「ヒック、かねぇぇぇぇ」


男は情けない声を出しながら、バタンとそのまま地面に倒れ込む。

力尽きたのか?

これはもう期待はできないかな?


「こいつ酒もやってんな」


「酒草くさぁ」


どうやら酒も相当飲んでいたらしい。

もう無理だな。


「次にいこう」


俺は潔く諦め、2人目、少し奥にいる下を向いている女性に近寄り話しかけた。


「すみません。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


「・・・・」


しかし女性はずっと下を向いており、何の返事もない。

もしかして死んでる?


「ん?」


そしてそれを不思議に思ったのか、ノランは女性の目の前まで行き、しゃがみ込み


「・・寝てるぜこの人」


数秒間見つめるとそう言った。


「え?本当?」


俺は思わずそう聞いてしまう。


「当たり前だろ。こんな時に嘘つくかよ」


「た、確かに」


言われてみれば、今嘘をついても何のメリットもない。

だけど、だけどだ。普通有り得ないだろ。

貧困地区は危険な場所だ。

そこにこんな早朝から、さらにこんな怪しそうな裏路地に人が来たにもかかわらず、呑気に寝れるはずがない。

何をされるか分からないんだぞ。


「はあー」


呆れて溜息が出る。


俺は自分自身で真偽を確かめたくなったため、女性の目の前で耳を澄ませる。

すると


「スー、スー」


ほんの少しだけ寝息が聞こえてくる。


「本当に寝てるね・・」


「だろ?」


マジかよ。

神経を疑う。


「おーい起きてくださぁい」


会話ができる状態にしなければと思ったのか、エデンが女性の肩を揺らし、起こそうとする。

だが


「うぅん」


と小さな声を漏らすだけで、目を覚ます気配はない。


「爆睡中じゃん。どうすんのこれ?」


「うーん。その人は当分の間は起きなそうだから、・・そうだねぇ別の場所に行こうか」


俺は辺りを見回し、もう人がいないことを確認する。

ここに居てももう意味はない。

別の場所を探すしかないな。


「そうだな」


「はーい」


2人はそう返事をし、自分達が来た方向へと歩き出す。


まったく、俺もまだまだ詰めが甘いな。

今回質問する相手は、薬物をやっている可能性が高く、真面な人間ではないと事前に理解していた。それにもかかわらず、話が通じると勝手に思い込んでいたからだ。


そしてすぐに俺も女性から視線を外し、続けて歩き出そうとした、

その瞬間。


「お前ら、一体何が聞きてぇんだ?」


さらに奥の方から、突然男の声が耳に入った。

俺はすぐさま振り返り、声が聞こえてきた方向、暗闇の中を凝視する。

姿は見えない。

だがこのタイミングと今の発言から、この男は最初から俺達の会話を盗み聞きしていたに違いない。


「誰だ?あんた?」


俺は警戒を強め、そう聞き返す。

いやそうするしかなかったと言っていいだろう。

今のこの状況では、俺達から踏み込むことはできない。

相手からの反応を待つしかないが。


「おいおい、そんな警戒しないでくれよぉ。俺はただ、お前さんたちが困ってそうにしてたから声を掛けただけだぜぇ」


男はいとも簡単に、ゆっくりと姿を現す。

口元は髭で覆われ、顔全体ははっきりと見えないが、年をとっていることは分かる。

手には空の酒の瓶。

寸前まで酒を飲んでいたことが伺える。

そして男はヘラヘラとしながら続けた。


「さあ、どんなことでも聞いてくれよ」


と。

ちっ、この男怪しさ満点だけど、どうやら俺達を助けたいらしい。

本当かどうかは知らないが。

まあでも、今までの2人よりは真面に話せそうだし、期待はしないが聞くだけ聞いておくか。


「・・・じゃあ一応聞くが、まず薬物を売りさばいている組織がこの地区にあるのは知っているな?」


「ああ勿論だ。俺はやってないけどな」


「そうか、知っているんだな。じゃあここからが本題だ。

組織のボスについて何か知っていることはないか?」


「うーん。なるほどなるほど。そういう感じの質問だったか。

なあアンタ。もし答えられれば、勿論金ははずむんだろぅ?」


やっぱり目的は金か。

まあそれ以外ないか。


「有益なものだったらな」


「ははそうか。じゃあ教えてやるよ特別にな。

俺の知り合いに1人だけ、ボスについて何か知ってるかもしれない奴がいるぜぇ」


男は笑いながら言う。


「!!」


その言葉にいつの間にか俺の横に来ていた2人は驚いたのか、息が漏れる音が聞こえる。

まさか、こいつがそんなことを知っているとは思わなかったのだろう。


「本当か?」


しかし他人の言葉を信用するほど俺は馬鹿じゃない。特にこの区の人間の言葉は。


「本当さぁ。金貰えるんだからよぉ」


「そうか・・」


だから俺はこの時ある作戦を実行しようと決めていた。

2人にはすでに話してある、この男に嘘を付かせないための作戦を。


「だが、もしお前が嘘をついたと分かったら真っ先に殺しに行く。

地の果てまでもな」


俺はわざと声を低くし、目を大きく見開き、脅すように言う。

まるで狂人のように演技をする。

こうすることで相手は怯えて、嘘を言いずらくなるのではないかと俺は考えたのだ。

そしてさらに追い打ちをかける。


「まあ俺の目的は組織のボスを殺し、俺がその席を奪うことだが、もしお前の情報が役に立ったなら、幹部にしてやってもいい」


と。

これで真実を伝えた時のメリットが増え、さらに嘘が言いにくくなるだろう。

まったく。事前にこの展開を予測し、この臭い演技を準備していたけど、意外に大変だし、普通に恥ずかしい。

正直もう辞めたい気分だ。


「ほ、本気で言ってるのか?」


すると男は笑うのを辞め、額に汗をかきながら返答する。


お?これ俺の作戦がかなり効いているんじゃないか?

仕方ない、だったら続けよう。


「ああ勿論だ。俺は嘘が大っ嫌いだからな」


「・・・わ、分かった。

だが今の話は本当だ。だから約束通り金はくれよ」


「ああ。もう一度釘を刺しておくが、嘘はつくなよ?」


「う、嘘なんて付くかよ。お前みたいなヤバそうな奴に」


やっぱりこいつ俺にビビってるな。

効果は抜群だったようだ。

まあこいつも演技の可能性はあるが。

そうしたら仕方ない。どうしようもできない。


「そうか。それは安心だな。

じゃあさっさと教えて貰おうか。ボスについて何か知っているかもしれない奴について」


「あ、ああ。

まずそいつの名前だが、ルイ・カルビン。1年半くらい前まで組織から大量に薬を買っていたやつだ。まあ所謂太客みたいなもんだ」


組織の人間じゃないのか。

これは想定外な展開だ。

なんで知っているのかは・・聞かなくていいか。


「なるほど。それで?」


「太客って言えば、商売している奴からしたらありがたい存在で、特別待遇するだろ?

だから俺は、カルビンの野郎がボスについて何か知ってるんじゃねぇかと思ってお前に言ったんだ」


うーん。

根拠はないのか。

でもまあ確かにそいつは何か知っているかもな。

行く価値はある。


「・・今そいつが何処にいるか分かるか?あと実力もだ」


「ああ。実力についてはほぼないに等しいと思ってくれて構わない。

住んでいる場所だが、この裏路地を出てすぐにある青いアパートの2階の1番左隅だ。確かそうだった気がする」


あぁーあそこか。

確か裏路地に入る前に見たな。

凄い目立っていたから。


「分かった。じゃあ質問はもういい。

ほら金だ」


俺は金貨1枚を男に渡す。

居場所が分かれば十分だ。

あとは俺達のやり方次第。


「じゃあな」


情報は聞き出せた。

俺は裏路地の出口へと歩き出す。

が、


「あ、そう言えば少し気になったんだが、そいつ何で薬を買わなくなったんだ?」


俺はすぐに振り返りそう聞く。

ふと思ったんだ。何か役立つかもしれないと。


「く、詳しくは知らねぇが、組織を恨んでるからだと思うぜ」


「恨んでいるだと?」


「そうだ。1年半前くらいに組織に家族全員を殺されたらしいぜ。

絶対に許さないとか言ってたしな」


なるほど。辞めた理由はそういう感じか。納得はいくな。

でも酷い話だ。

自業自得とも言えるが。

ま、だけど


「最後にいい情報を貰った」


聞いておいて良かった。

どうやって攻略しようかかなり考えてたけど、組織へ恨みをもっているなら、攻略は簡単にできる。

金じゃ無理そうだったしな。


「今度こそさようならだ」


俺は歩みを再開する。


「約束しっかり守ってくれよぉ」


「ああ」


そうして俺達は裏路地から去るのだった。

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