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ラークスの旅  作者: サーモン丼
第一章
5/12

候補

最初に動いたのはエデンだった。

相手の左側へ周り込むように疾走する。

続けてノランも走り出す。エデンとは反対の右側へ。


「アイス・フロスト」


一方ラークスはすぐさまそれを援護する。

2人を詰めやすくするために。

先端が尖った、大きな石くらいの大きさをしている6個の氷が空を飛び、モンスターを襲う。


モンスターは魔法に気が付き、両腕を前に出し、防御の姿勢をとっていたが、それだけで全て防げるほどラークスの攻撃は甘くない。

いくつかの氷は腕をすり抜け、体に直撃する。

しかしそれは大したダメージにはならない。硬い皮膚に対して威力がお粗末だから。

無論ラークスもそんなことは分かっている。

だがそれでいいのだ。

前にいる2人へ攻撃をできなくすることがラークスの狙いだから。


エデンはその隙を見逃さず、右脚の1本を狙い剣を切り込む。


「はぁぁぁぁっ!!」


エデンの高速の一振り。

見事、脚の半分を斬り倒す。


「キィィィィィ!!」


その攻撃にモンスターは、悲鳴を上げながらガクッと右に傾く。


脚に重症を負えば、その痛みから体を支えることができなくなり、態勢が低くなる。

高い位置にある腕や弱点を狙いやすくするため、エデンは脚を狙ったのだ。


「ラークス!右腕だ!」


その時ノランがラークスに向かって叫んだ。

たったそれだけの言葉だが、ラークスはノランとこの一年半、毎日のように命を懸けて戦ってきた仲である。

(腕を落とすのか!)

とノランの動きから直ぐに狙いを察し


「アイス・スティンガー」


静止している右腕の、ついさっき傷をつけた箇所をピンポイントで狙う。


通常、魔法で小さな的を狙うことは、精密な魔力コントロールが必要なため難しい。

だが


キンッ!


ラークスはその卓越した魔力操作で、見事ドンピシャに直撃させる。


「上出来だぜラークス」


走っていたノランはそのまま勢いをつけて飛び跳ね、弾かれてしまったが、さらに傷が入った右腕の部分を狙い


「はあっ!!」


渾身の一撃を食らわせる。

ノランのその刃は簡単に腕を通り抜け、切断。


モンスターはさらに呻き声を上げ、完全に弱り始める。

(今なら狙える)


「エデン!頭だ!」


そしてラークスは今の奴の状態なら、弱点の頭が狙えると踏み、そう叫ぶが


「分かってる」


そう一言。

エデンは状況を理解し、すでに動いていた。

彼女は馬鹿ではあるが、戦闘においての状況を見極める力が低い訳ではない。

高く飛び跳ね、モンスターの頭上へと移動する。

しかし


「エデン!!」


突如モンスターが左腕を上げながら、空中にいるエデンを見た。

エデンを狙う構えだ。

(まずい!狙うにはまだ早かったか!

エデンは空中にいるから攻撃は躱せない。

俺の魔法も今からじゃ間に合わない)

とラークスは察する。


そしてモンスターは無情にも、左腕を振り下げた。

エデンはその迫りくる刃に、咄嗟に防御の姿勢を取るが


「させるかよ」


それはエデンの命を奪うことは無かった。


カンッ!!


ノランが振り下げた左腕を外側から刀で叩き、ギリギリで軌道をずらしたのだ。


「いってぇぇ」


助けはしたが、ノランは両腕に電気が走ったような痛みに襲われる。

モンスターの攻撃はそのままエデンの頬を掠め、もう攻撃する手段は残っていない。

エデンは剣を両手で持ち、切先を下に向け、振り上げる。

そして


「はぁぁぁっ!」


重力に身を任せ、頭目掛けて落下し、その勢いのまま剣を振り下げ、頭部に突き刺した。

グサッという音が響き、モンスターは目を大きく開けるが、すぐに白目になり、


ドォォン


その場に力なく倒れるのだった。



ーーーーーーーーーー



「ハアハア。結構やるじゃんあんた」


モンスターの頭にいたエデンは、息を切らせながら、今も手を痛そうに押さえているノランの方を見て言った。


おいおい。

助けてもらったんだから普通お礼を言うもんじゃないのか?相変わらず上から目線だし。

感覚がおかしくないそうだ。


「それはどうも」


ノランは適当に流す様に答える。

そんな中に


「お疲れノラン。最後の助かったよ。

俺の魔法じゃ間に合いそうもなかったから」


俺は後ろから近づきお礼を言う。

ノランがああしていなかったらエデンは恐らく死んでいたし、やつも倒せていたか分からなかったからだ。


今回一番活躍したのはノランで決定だな。


「ああ。でも最初のラークスの魔法も滅茶苦茶助かったぜ」


「それはどうも。

ま、どっちも良かったてことだね。

ところで見える範囲には他のモンスターはいなさそうだけど。どう大丈夫そう?」


俺は周りを見ながら言う。

少し離れたとこにいたら目視だけじゃ分からない。


「ああ大丈夫だ。音は特に聞こえない」


「なるほど。じゃあ少しゆっくりしててもいい感じかな」


「いやいやそれよりもだラークス。ロックファンゴの件もそうだけど、何であいつがこんな場所にいたんだ?一度も遭遇したことはないし、本にも森の奥にいるって書いてあったんだろう?」


「うーん。それなんだけど・・・全然さっぱりだね。原因は全く分からないや」


俺は首を横に振る。

いや本当に何が何だが分からないから。

答えようがない。


「そうか・・ラークスでも分からないのか。

でも今森で何か起きているっていうのは確実だろ?」


「うん。それはノランの言う通りだね。まあ念のためギルドには報告しておこう」


「ああ、確かにそれがいいな。

お前は他に何か知ってたりしないのか?異変があったとか」


ノランはエデンが何か別のことを知っているのではないかと思ったのか、彼女の方に振り返る。


「あれ?」


しかしそこに彼女の姿はない。


「あいつどこいったんだ?」


それもそのはず。


「彼女なら素材を剥ぎ取って、ついさっき嬉しそうに帰っていったよ」


お礼はなし。

俺達には気を止めずさっさと立ち去っていった。

勿論、俺は気づいていたから止めようとした。

でも面倒くさそうだったから。

まあいいかなって。


「え?マジかよ。普通何も言わずに帰るか? あんなに頑張ったのによぉ」


ノランは不満を漏らしたが


「でもしょうがないか。

なあラークス?だって」


俺はノランが何を言うつもりなのかすぐに分かった。

いや誰だって分かるだろう。

助けてもらったら常識的に考えてはお礼を伝えるが、それをしなかったのだ。

答えは簡単


「「馬鹿だから」」


俺とノランは同時に少し笑いながらそう言った。


でも俺は少し前に、ふと思ってしまったんだ。

あれ?仲間に欲しかった条件。彼女と一致しない?

と。

だから


「でもさノラン。彼女頭は良くないけど、戦闘においての実力は確かにあったよね?」


仲間にすることにした。


「そうだな。戦闘はな」


ノランは最後の言葉を強調して言う。


「しかも1人」


「ちょっと待てラークス。本気か?」


どうやらノランは俺が何を言いたいのか悟ったらしい。


「本気だよノラン。俺はエデンを仲間にしたい」


俺は頷き、冗談ではないことを伝える。

あの強さを持ち、1人で依頼をこなしている奴は他にいなはずだ。

この機会を逃すわけにはいかない。


「・・・そうか。まあラークスがそうしたいって言うならいいけどさ。実力は確かだから。

だけど、だけどだ。あの頭の悪さはどうするんだ!ラークス!?」


どうやらノランは、脳みそが足りていない彼女を仲間にした後のことを心配している様子だった。

勿論俺にもその気持ちはある。正直不安でいっぱいだ。

でも


「そこについては多分大丈夫だよ。見た感じエデンは俺達と同じくらいの歳だと思うから、まだ成長の余地はあるはずだよ」


と考えていた。

多分。本当に多分。


「成長に期待・・か。大丈夫かなぁ?

それ超強いモンスターを倒すよりもムズイんじゃないのか?」


「はっ確かにそうかもね。

まあもしもエデンが成長できそうもなかったら俺が何とかするよ。

悪人ってわけでもなさそうだしね」


「そうか。じゃあ遠慮なく、それは全部お前に頼むからな。マジで悪いけど、俺はちょっと手伝いたくない。絶対に面倒だ」


「うん。じゃあ決定ってことで。

一旦この話はこれくらいにして、依頼の報酬を貰いに行こう」


やっと見つかった有力候補。

俺は舞い上がるような気分で歩き始め、ギルドへ戻るのだった。



ーーーーーーーーーー



俺達はそのままギルドへ戻ると、まずロックファンゴの尻尾3つをいつもいる受付人の女性に渡し、依頼の報酬を貰った。

またグロスの森で起きた異常な出来事の詳細も伝える。

明日には騎士団が森の調査へ行ってくれるだろう。

そして


「すみません。一つ聞きたいことがあるんですけど」


俺はもう一つ受付人と話したいこと、いや聞きたいことがあったためそう言った。


「はい、どういった用件でしょうか?」


「実はエデン・リーベルトという人を探していまして」


エデンのことについてだ。

俺達はエデンを仲間にすると決めたものの居場所を知らない。

そのためエデンが依頼を受けるために、このギルドへいつ頃来ているのか知る必要があるのだ。


「エデン・リーベルトですか?・・・何か特徴はありませんか?」


「えぇーっと。髪の色が白色の女性で、年齢が多分ですけど俺達と同じくらい?だと思います」


受付人の質問に横にいるノランが答える。


「・・あー、思い出しました。

確か毎日1人でここに来ている方ですね」


1人でギルドへ来る人間は限られている。大体は皆パーティーを組んでいるから。

多分当たりだな。


「はい多分その人です。何時頃ここに来ているか分かりませんかね?」


「うーん確か・・朝ギルドが開いた時間から30分後くらいでしょうか?」


30分後・・

なるほど。通りで一度も見たことがなかったのか。

いい情報を貰ったな。

何時間も待つのは面倒だと思っていたからありがたい。


「分かりました。質問は以上です。ありがとうございます」


後はエデンと会い、仲間になると頷けされるだけだ。


「いえ。こちらこそ情報の提供、感謝致します」


「行こうノラン」


「おう」


俺達は


「またのお越しをお待ちしております」


という言葉を聞きながら、ギルドから去るのだった。

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